第2話 綺麗な美少女
「千里眼...か?」
「あぁ!千里眼...らしい...」
「少し使ってみろよ?」
「使い方なんて知らんし...」
「えぇ...」
俺たちは沈黙してしまう。
「わかったよ!試行錯誤してみるから!」
俺は目を瞑る。千里眼を使っている人のイメージとなると、目を瞑って他のところに意識を...ってそれでできるのかよ。俺の脳内には俺が召喚された部屋があった。そこには、「王」の座っていた椅子だけがあり、使用人が掃除している。
「できた...結構簡単だな...」
俺は目を開く。心臓の鼓動が速くなるのを感じる。
「おい...修一?目が...」
「目が...どうした?」
「充血...してるぞ...」
「え?」
俺の目は充血していた。正確には「らしい」がつく。鏡が部屋にないからわからないのだ。
「あんまり使いすぎるのは良くなさそうだな...」
「そう...だな...」
充血しているかは自分で気付けないのだが、使いすぎないようにしよう。決して。風呂覗きなんかに使わないようにしよう。多分。メイビー。段々自身が無くなってくる。
「それで、響の能力は?」
「俺か?俺は...時間の巻き戻しだ!」
「時間の...巻き戻し?」
「あぁ!好きな時間の飛ばすことができる!記憶を保持したままの状態でな!」
「うわ!すごい有能じゃん!最高!」
「使うと...数日は寝込むんだけどな...ワンチャン死ぬ!」
「致命的すぎる...テストのカンニング目的で使えないじゃん...」
「使用例もっとマシなのはなかったのかよ...本当に27歳か?」
「ははは...」
「そういや、黒髪って珍しいな!」
「そう?日本では割と...だぞ?」
「この世界での話だ!ここに来たら俺も金髪に変わったんだよ!」
「へぇ...そうなんだぁ...」
「興味ないよな?」
「うん。ない...」
「こいつ...」
「でも、シュウジ看守は黒髪じゃない?」
「あぁ...そうだな!黒髪だな...」
「なんか、そんな珍しくなくない?」
「いや、シュウジ以外は黒髪じゃないぞ!」
「本当に?」
「本当だ!」
響は声を少し荒げる。
「おいおい...27歳が騒ぐなよ...」
俺は響を荒げる。
「27歳がテストのカンニングを具体例にあげるな...中学生並の発送だぞ...」
「中並感?」
「小並感の新単語作るな!」
「へぇへぇ...」
俺達は寝る。二段ベッドの下で寝ようとしたらどやされたので、上で寝ることにした。
次の日。
「おーい!起きろ!お前らー!朝だぞー!」
扉の外で声がする。シュウジの声だ。俺はベッドから降りる。響は杖を持って歩いていた。左足が機能しないとか昨日言っていたな。あ、ダジャレじゃないよ!ウケ狙いじゃないから!
”ギィィ”
扉が開く。扉の前にはシュウジが立っていた。その後ろに、一人の美少女が立っている。
「うお!異世界特有の美女だ!」
「この人も召喚者だから、地球から来た人間だぞ...それに、見た目に騙されるな...」
「うるせぇ響...夢壊すな!」
「始めまして!寺島サチエです!よろしくお願いします!」
寺島サチエを名乗った女性はとても綺麗だった。言葉では言い表せない「綺麗」と言うものだ。ただ単に俺の語彙力が足りないだけなのかもしれないが。
「よろしく!俺は平部修一!27歳!」
「27歳ですか!若いですね!」
「え?サチエさんは何歳なんですか?」
「え、あ、18歳です!見た目に比べて若いですねって意味です!すいません!」
響は何も喋らない。静かにサチエを睨んでいた。
「どうしたんだよ?響?そんな睨んで?」
「いや...修一の頭が空っぽだってことに気づいただけだ?」
「は?どういう意味だよ!」
「バカなのか!なんで召喚させたかも覚えてないのかよ!」
「俺は...結婚相手か審査で...それで粗チンってバカにされて...」
「行き過ぎだよ!結婚相手の審査でなんで女性が召喚させるんだよ!」
「え...801?」
「違う!あいつは男だ!」
「え?」
「もう!なんで言うんですかぁ!」
寺島サチエは美少女の姿からシワクチャのお爺さんに変わってしまった。
「せっかく...騙してたのにのぉ...」
「うええ...俺のトキメキが...俺の一目惚れが...」
俺の気分は悪くなる。人間不信になりそうだ。
「ほら!お前ら!遊んでないで朝食を食べに行くぞ!」
「「はーい!」」
俺たちは食堂に向かう。サチエさん(おじいちゃん)は銀髪だった。白髪なのかもしれないが、夢を持つために”銀髪”にしておこう。
「修一には説明していなかったな!毎日朝は食堂で朝ごはんを食べる!ご飯は一日2食で、朝と夜だ!」
「わかりました!」
俺はシュウジに教えてもらう。
「それじゃ、着いたぞ!」
俺らは食堂に着く。地下2階からは移動しなかった。
「好きなものを注文して食べろ!」
「はい!わかりました!」
「それじゃ、俺は巡回してくるからな!」
「「はい!」」
シュウジは食堂の扉を閉めてどこかに行ってしまう。
「修一!ご飯はここで食え!」
「わかった!」
俺は置いてあったパンを手に取って食べる。コッペパンだ。マーガリン辺りが欲しいのだが。
***
「頑張れよ...俺!俺に懸かってるんだからな!」
シュウジは歩きながら呟いていた。




