第10話 脱獄
「やっぱり...シュウジに似てるわよね...」
サチエが俺の方を見ながら呟く。
「そうか?」
「えぇ...少し元にした部分もあるかもしれないけど...すごい似てるわ...」
「それは...褒め言葉?」
「好きに捉えていいわよ!」
俺たちは階段を登る。そして、看守棟に向かう。
「よぉ!シュウジ!」
俺は道行く看守に話しかけられる。
「よぉ!」
「今いいか?話聞いてくれよ?」
「すまない...少し急用が出来て...」
「そっか!すまないな!」
「いや、また今度話は聞いてやるよ!」
俺たちは看守棟へと急ぐ。
***
「向こうは大丈夫かな?」
{あぁ...あいつらなら...やってくれると思うぜ...}
響は口が動かないので、脳内会話で喋る。
「あぁ...そうだな...お前がそう言うなら...」
{まぁ、出来なくても...策はある!}
{「時間逆行」で戻ってきたっぽいけど、策はあるの?}
{あぁ...圧倒的に無謀な策だけどよ...}
{そっか...}
{できれば、何事もなく脱出できればいいけどな...}
{そう...だね...}
***
「脱獄の手助けをしてあげないとな...」
シュウジは静かに呟く。
「はぁ...こんな気持ちだったのか...」
***
「ここが...看守棟か...」
「ちゃんと堂々としてよね!」
「{鍵置き場}に行くぞー!」
「2階に行くぞ?」
「わかってるわよ!」
俺たちは2階に向かう。そして、「鍵置き場」に入る。
「あ、シュウジさんと...」
「こいつは派遣だ!ここの案内を今している!」
「あ、そう!」
中にいた看守と軽く会話をする。俺は、「門扉開閉設定室」・「電気供給室1」の扉を取って、外に出た。
「えぇと...ここね?」
「あぁ...ここが「門扉開閉設定室」だな...」
”ガチャ”
俺たちは「門扉開閉設定室」に入る。千里眼で見た部屋と一緒だ。
「えぇと...このボタンを押してから?えぇと...このレバーを上げて...こっちの黄色のボタンを押して...」
《「門扉開閉室」で門を開場することができます。》
「門扉開閉設定室」に声が響いた。俺は少しびっくりしてしまった。
「そんじゃ、「電気供給室1」に行くぞ?」
「はぁい!」
俺たちは「電気供給室1」に向かう。少し怖いくらい順調だ。
{「門扉開閉設定室」で設定を変更してきたぞ!}
{ナイス!}
{それじゃ、お前らは「門扉開閉室」に移動してくれ!}
{あぁ!わかった!}
俺は隼人と響に連絡を入れる。
***
「さて、行くぞ!」
{あぁ...わかった...}
隼人は響を背負って、「門扉開閉室」に向かう。看守と鉢合わせしないよう慎重に。
「よし...誰もいないな?」
隼人は「水流管理室」を通り過ぎる。そして、階段に差し掛かった。
「誰もいないな...よしよし...」
***
「そろそろ電気が消える頃合い...かな?」
シュウジは呟く。
***
「次は...電気を消すぞ?」
「えぇ...わかったわ!」
俺たちは「電気供給室1」に入る。
「えぇと...あ、ここか!」
{看守棟電力供給設定}
と書かれているボタンを押す。すると、電気が消えてしまった。サチエの視界では暗闇が広がっている。
「だが、千里眼では違う!全然暗くない!」
「え...真っ暗じゃないの!」
「それじゃ、行くぞ!」
「え、あ...うん!」
俺はサチエの手を引っ張って外に出る。
「えっと...鍵を閉めて...」
”ガチャ”
「これでよしっ!」
俺は鍵を閉まって走って看守棟を出る。「門扉開閉室」に行く途中で、鍵を投げ捨てた。
「おい!なんで電気が消えたんだ?」
「何も見えないぞ!明かりをつけろぉ!」
「鍵が!鍵がありません!」
「探せ!探すんだ!」
看守たちは騒いでいる。そんな中、看守の服のまま、「門扉開閉室」に修一とサチエの2人は向かっている。
***
「誰にも気づかれずにここに着いた...」
「とりあえず関門は突破だな...後は...」
隼人と響は、門扉開閉室で2人を待っている。
***
「囚人が逃げた可能性がある!「門扉開閉設定室」がいじられているからな!」
「なんだと?」
「全員門に急げ!囚人に逃げられるぞ!」
看守たちは門の前に急いで移動していった。
***
「そろそろ...門に着くぞ!」
俺とサチエは「門扉開閉室」の中に入る。中には、隼人と響がいた。
「げっ...シュウジだ!」
「2人共!準備は出来てるか?」
「え...修一?」
「あぁ!修一だよ!」
「なんだよ...びっくりしたぁ...」
「それじゃ...門を開くぞ?」
「あぁ...」
俺は開閉ボタンを押す。
”ギィィィ”
外で門が開く音がする。ゆっくり。ゆっくり開いていく。
「みんな!外に出ろ!」
「おい!門が空いているぞ!囚人が逃げてしまう!」
「大変だ!どうして...看守棟までこれた!」
「内通者か!」
「まずい!もうすぐ看守が来る!」
「急げ!早くドアよ!開け!」
ドアはゆっくりと開いている。
「この部屋にいても捕まるだけだ!門が開くのを待つぞ!」
「あぁ!」
俺たちは外に出た。大量の看守が門の方に向かっていた。
「まずい!まずいよ!」
「おい!お前ら!止まれ!」
こちらに向かう看守と、俺たちの間に誰か人が来る。
「この門は俺が開けた!」
───そこにいたのは、シュウジだった。
「なっ...シュウジさん?」
「少し、外に急用があって開けたんだ!だから、落ち着け!」
「なんだ...シュウジさんかよ...」
「でも...なんで電気は消えたんだよ!」
「もしかして...シュウジが内通者か?」
「内通者?何の話...だ?」
”ギィィ”
門は人一人が十分通れる大きさにまで開いた。
「ありがとうございました!シュウジさぁぁぁん!」
俺はシュウジに最大の感謝を述べてから外に出る。格好は看守の格好だった。
「シュウジさんが...2人?」
「あいつらを逃すなぁ!」
「うおおおお!!」
看守たちがシュウジを押し倒して、こちらに向かってくる。俺とサチエはもう刑務所から出ていた。
「まっ...ずい!響が引っかかった!」
{俺を置いて...逃げろ...}
「そんなの無理だ!」
”バンッ”
「なっ..」
”ドサァ”
隼人の背中から響が落ちる。響の脳天には、銃弾が貫いていた。
「なっ...響!響!」
{最期の...力を...修一...頼んだ...ぞ...}
時間は逆行する───
記憶を持つのは、響ではなく修一であった───
***
「なっ...ここは?」
俺は気づくと、刑務所の中にいた。千里眼で見ると、周りには看守どころか、サチエや隼人・そして、響もいない。そして、門は完全に開いていた。
「どうして...だよ...」
「おい!そんなところで何してるんだ?」
俺は誰かに話しかけられる。俺は看守の格好をしたまんまだった。
「俺のことは...わからないのか?」
「あぁ...黒髪なんて始めて見たぜ?」
シュウジのことも知らないと言うことだ。俺のことを心配してくれた看守はこちらを珍しそうに見ている。
「おんぎゃぁぁ!おんぎゃぁぁ!」
門の外から赤ちゃんが入ってくる。赤ちゃんは看守に抱えられて泣いている。
「あの、赤ちゃんは?」
「転移者だとよ...名前は、梶隼人って名付けられたらしい...」
隼人がここに転生してきたのは16年前だったはずだ。俺は、「時間逆行」したのか。でも、16年前はこの世界にはいるはずない。歴史が変わったのか?なら...
「そんで、看守さんの名前は?」
俺は心配してくれた看守に名前を聞かれる。
「俺の名前は...修i...いや、シュウジだ!」
花浅葱です!
ご愛読ありがとうございました!
ループエンドですね。
シュウジが修一だったとするのなら、全てが繋がると思います。




