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その1 再生成


 残月の白む明朝が、然もアインに誂えたもののように訪れた。

 白樺の生い茂る森林に囲まれて目覚めるのは、恐らく気持ちがよいものなのだろう、あーうまい空気も小鳥の囀りもあるしな、そうだなウンウン、と誰かに訴えるみたいに呟き、上体を起こし、アインは眉間に皺を寄せてばつの悪い顔をする。


「人の気配は南南西か」


 褐色の外套に身を包み、太腿にナイフのホルスターだけが残っているのに気づく。衣服に乱れはないが、冒険者にしては妙に間抜けな奴に『生成』されたなと独り言ちる。

 七度目の儀式を終いにし、何もない木立から城郭都市に至る獣道を歩き、アインは赤髪を掻きながら日の出を心から呪った。


「……あの破滅から、この世はどうなったんだ」


 城門の高い石垣が見えてくると、すべき事を沢山思いつくからかアインは億劫になり、いつだって寝覚めは最悪だと言わんばかりの表情で、跳ね橋を管理している兵士へと一直線に歩み寄る。


「お前さん門番か? ここはどこか知っているよな」


 暗鬱の顔色をした赤髪の冒険者を見下ろし、治安維持に務める兵が震えて口を開く。


「あ、ここはゴエーティア国領の自治区、ガープだが……なあオマエ、今悪魔の森から出てきた、のか?」


「ゴエーティアだア? ここが? 見ないうちに随分キレイな土地になったもんだ」


 アインは森の中で、明け方の空を鏡の如く映し出していた湖の、その美しい漣を回想した。


「は、はぁ」


「ああ、すまない。人と話すの久しぶりでさ。で、まだ教えて欲しい事があるんだけど」


 何も入っていないホルスターを指でなぞりながら、適当に『生成』されたのを腹の底で憤怒したが、こみ上げる感情を押し殺し、無辜の門番に問う。


「あんた……原理神、ってわかるかい?」



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