勝負〜激突〜
「ぐっ…………」
目の前で、苦しそうな顔で膝をつく彼を見下ろす。
先程までのやり取りは何だったのか。そんな疑問すら覚えてしまう程、呆気ないものだった。
「ふん…………」
頭を足で踏み付け、地面にほお擦りを強要させる。
最初からこうしておけばよかった、と今更ながら後悔した。
無駄なことなどせずに、直接やれば時間をかけることもなかったか。
踏み付けている足に振動が伝わってきた。
見れば、その目は自分に対して全力で憎悪をぶつけてきていた。あぁ、思っていたことが口に出てたのか。気をつけなきゃ。
ぐりぐり。ぐりぐり。ぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐり。
不思議と、言葉にすればそこまで酷い行為じゃないなぁと思えた。実際は、まぁ、言うまでもなく、その逆なんだけど。
あ、骨の鳴る音。ちょっと強くぐりぐりしすぎたかもしれない。
視線を上げて、入口の方を見てみた。
3人程、逆光を浴びながら立ち尽くしていた。
…………え〜っと、誰、だっけ?
頭がうまく働いてないみたいだな。
3人共知ってるんだけど、頭がぼやけてうまく思い出せない。
思い出せないけど、どう思ってるかはわかるな。
『なんでこんなことに』
大方、こんなところだろう。
まぁ、それが、自分か、コイツか、どっちに向けられているかはわからないけど。
ゴッ
痛っ。
殴られた?
気が付けば、尻餅をついている。自分を殴ったのは……男。
あ、南貴だ。思い出した。
酷いな。裏切られた気分だ。
そりゃあ、酷いことしたこともあるけどさ。
あっ、あ〜……。
立ち上がっちゃったよ、アイツ。
……さて、これからどうしようかな。
助かった。
立ち上がりながら、蓮斗は素直にそう思っていた。
南貴がああしてくれていなかったら、あのまま首をへし折られていたかもしれない。
「助かったぜ、南貴」
「……っ、油断、すんなよ?」
「わかってる。もう大丈夫だ」
息絶え絶えな南貴を威吹に引き戻させ、尻餅をついている南貴兄を見据える。
(油断してた……。考えてみれば、南貴と恋があそこまでやられてるんだ。もう少し慎重に行くべきだった)
脇腹を抑えながら思う。
一撃の元で終わらせるつもりが、逆に南貴兄の蹴りが傷痕に見事にカウンターで入ってしまった。その結果、ああなってしまったのである。
南貴兄が立ち上がるのを見届けて、蓮斗は身を屈める。
再度、2人が激突を始めた。
少し特殊な感じにしてみました。
わかりづらかったらスイマセン…。