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再会〜『蓮斗』〜

試験終了!

ってなわけで更新再開です。


更新出来なかった間にも、ずっと見に来てくれていた方々に、感謝と同時に申し訳なさを感じました……。

景に手を引かれる形で、蓮斗は螺旋階段を降りていく。

やけにスッキリとした様子の景を見て、蓮斗は先程の事を聞こうとしたが、それは止めた。

気軽に聞けるものではないだろうし、記憶が戻ればその必要もなくなるだろう、と考えたからだ。(もっとも、ここで聞いていても蓮斗には混乱しか起きなかっただろうが)


保健室に戻ろう。


その1言に頷き、蓮斗は景と並んで歩きだす。そこでふと、つないだままの手が視界に入った。


「…………えと」

「?」


景が振り向く。

それに対して、いや、何でも。と返す。

なぜだか、振りほどく気にはなれなかった。

とても、居心地が良かったから。


しかし。


それも、長くは続かなかった。


「…………?」


違和感を感じ、蓮斗は足を止める。

よどみなく続いていた足音が、途絶える。

それで、違和感の正体が明らかになった。


「静か、だね」

「ああ……」


静かどころか、物音ひとつしない。

今は昼休みだ。

普通なら、学校のどこにいようと生徒たちの喧騒が耳に届いてくるのに、今は自分の足音がリズミカルに聞き取れた程静まり返っている。

一抹の不安を覚えはじめたその時、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り響いた。

いつもなら焦って走りだすところだが、2人は黙ったまま、不気味とも思えるチャイムのソロパートを聞く。

そして、最後の一音が鳴り響き、残すは余韻だけとなった、その時、


「きゃあぁあぁぁぁ!」


静寂を引き裂く甲高い声が、2人の耳をつんざいた。


「何だ!?」

「わかんない。けど、下から聞こえたよ!」

「……っ!」


タイミングを合わせた訳ではないが、蓮斗と景は同時に駆け出していた。

先程のチャイムが、まるで何かの始まりを告げていたような気がして、不安を更に掻き立てた。


「景、無理はしなくていい!」

「うん、でも!」


元々膝を怪我している景は、踏み出す度に口を歪めていた。

あまり無理はさせられない。そう思った蓮斗は。


「俺が先に行く!」


跳んだ。

差し掛かろうとしていた階段の意味を無視して、最上段から最下段まで一気に移動。着地と同時に足首と膝で衝撃を受け止め、その反動で飛ぶようにまた駆け出す。

あっという間に、景の視界から蓮斗は消えた。










生徒玄関。


異常がなければそのまま駆け抜けようとしていた蓮斗だったが、案の定、というべきか。そこには平穏とは掛け離れた景色が広がっていた。

正しく言えばそれは生徒玄関に、ではなく、生徒玄関から出た校庭に、だが。


「…………」


言葉を失ってしまう蓮斗。

玄関先は、大量のバイクと、その持ち主達であふれかえっていた。

呆然とする蓮斗が次に見たのは、先程の叫び声をあげたであろう女子生徒。そして、


「…恋!?」


その名を呼んで、そしてその元へと急ぐために上履きのまま外に飛び出す。

しかし、それもすぐに止まってしまっていた。


「……な……」


恋が、群がる男達を次々と倒していく。

それは、記憶喪失の蓮斗には充分衝撃的だった。

目の前の男の顔面に容赦ない前蹴り。その足を振り子のようにして後ろに振り出せば、恋を後ろから羽交い締めにしようとしていた男の股間へとこれまた容赦なく突き刺さった。

恋の回し蹴りをかわし、そのままタックルを試みた男には、もれなくカウンターの膝が顔面へと贈られた。


「…………」


蓮斗が驚きながらも駆け付けた時には、倒された男達がおかしなオブジェにも見える程になっていた。

蓮斗にはまだ気付いていないのか、恋は肩で息をしながら周りの男達を睨みつけている。

その姿を見た瞬間、蓮斗を例の頭痛が襲った。


「がっ…………」


今までとは比べものにならない程、強烈かつ爆発的な痛み。

それを必死に堪え、蓮斗は口を開く。


「恋……」

「っ!」


ハッとして振り向く恋。

一瞬その右足が地を蹴って自分の首元に刈り下ろされるのを想像した蓮斗だが、実際には右足は軽く浮いただけだった。

ため息をついて足を下ろす恋。

そしてその口が開かれて、


――何か文句を言おうとしたのだろうか。


鈍い音がして、


――すぐに苦痛と遺憾の表情へと変わっていた。


恋は蓮斗へと倒れ込んだ。


「……なっ……」


一瞬、状況が理解出来なかった。

しかし、目というのは便利なもので。

たとえ頭が働かなくても、目の前の映像だけで大量の情報を与えてくれる。


恋の後ろには男がいて。


その手には無骨さを真っ正面から主張するような鉄の長い棒があって。


男の目は蓮斗を嘲笑していて。


ポスン、と自分の胸に恋の頭が当たる頃には、全てを理解してしまっていた。


蓮斗は、男達の攻撃の隙間を縫ってその場に入り込んだつもりだった。

だが、それは違った。

蓮斗は、恋の隙を作り出す為の道具として、男達に利用されたのだ。


つまるところ、自分のせいだ、と。


もはや電流を通り越して落雷のような頭痛に反して、冷めた頭で蓮斗は理解した。


そして、蓮斗から、頭痛が消えた。










「てめぇら、覚悟しろよ」





















『蓮斗』と『蓮』が、再会を果たした。

終わりが近づいてきています。(なんか前にも同じこと書いたような……)



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