懺悔〜逃げてきた赤い道〜
更新が遅れてすいません……(何度目の謝罪だろう)
期末試験中なもので。
楽しみにしてくれていたかたにはすいません。(え?いない?そうですか……)
なるべく更新しますので、よろしくです。
展望台――。
見慣れた街の景色が一望出来るこの場所で、少女は1人佇んでいた。
「……痛い」
膝を摩りながら、確かめるように呟いた。
少女の名は、景。
こんなにいい景色なのに。
自分の名前も景なのに。
どうしてこんなに違うのだろう、と心の中で呟いた。
ピリピリとした痛み。
見れば、擦りむいた程度だろうと思っていた膝からはいくつかの赤い筋が流れていた。
景は、元々ずば抜けて運動が出来る訳ではない。体力も人並みだ。
この傷は、その事を知っていて、なお自分の体力すら無視して走り続けた結果だった。もしかしたら、廊下に血の1滴でも落ちているかもしれない、と転んだ辺りの廊下を思い出す。
このままじゃソックスが汚れちゃうな、と人ごとのように呟きながら。
制服のポケットからハンカチを取り出して、傷口に触れないように血を拭き取る。
血が伸びて、むしろ痛々しさを増した。
「…………」
思わず泣き出したくなったが、歯をくいしばって何とか堪える。
鼻をすすり、誰もいないのにごまかしてみる。それで、目から零れそうな水は引っ込んでくれた。
「あーあ……」
何をしてるんだろう、と景はため息をつく。
そもそも、なぜ自分はあの場所から逃げ出したのだろう。
いいや、その前に。
恋がこの教室に来て、威吹を連れていった時。
どうして自分は隠れていたのだろう。
「……ふふっ」
自嘲。
わかっているくせに、と自分を笑う。
蓮斗の様子が違う事に、景は朝の時点で気付いていた。どこかしら吹っ切れたような表情をしていた蓮斗を見て、景はどことなく安心していたのだ。
しかし、その一方で、景は気付き始めていた。
蓮斗の隣にいる恋を見て、それは確信に変わっていた。
いつかは来ると思っていた。
それもそうだろう。失くしたものを取り戻したいと思うのは当たり前だ。
それが、少し遅れただけのこと。
他の皆にはもう話したのだろう、後は自分だけだ、と思い、景は立ち上がった。
そして、
――持っていたハンカチをガラスに投げつけた。
なんて最低な、私。
歯をくいしばっていたから声は出なかった。
そのかわり、知らず知らず溜まっていた息が音を立てて肺から出ていった。
何で逃げ出したのかなんて、最初からわかりきっていたのに。
それを認めることからすら逃げ出して、ここにいる。
「……最低……」
今度は声に出た。
自分を嘲笑うことは、今回は出来なかった。
「ごめん、蓮斗。私、貴方から逃げちゃった。……貴方にひどいことしたくせに、私だけ逃げるなんて最低だよね……」
蓮斗の記憶が消えたからといって、私の罪が消える事はない。
そう、景は続けた。
誰にも聞かれることはないこの言葉は、だからこそ景本人にふりかかる。
「蓮斗の記憶が戻れば、あの事も思い出しちゃう。私は……それが怖い…」
それはまるで懺悔のように、展望台に反響する。
「でも、違うんだよね。誰かが覚えてても、たとえ誰もかも忘れていたとしても。……私がやったことは、消えやしないんだから……」
だよね?と誰かに聞くように景は言った。
「……うん、大丈夫。私の自己中はこれでオシマイ。だから、絶対に思い出して。あなたの大事な、思い出達を」
クルリと振り向く。
そこには、景が語りかけていた人物がいた。
いこう、蓮斗。
そう言って、景は彼の腕を引く。
膝の血は、もう止まっていた。