表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
83/95

和解〜繋がり始めたその絆〜

更新が遅くなっていることをお詫びします……。続きを楽しみにしてくれている方には、すいませんの一言です。(果たしていてくれているのかが逆に心配ですが)

頑張りますので、指摘があれば遠慮なくお願いします!

保健室。

注がれたコーヒーの香りが鼻をくすぐる。

そんな中向かい合う、合計5人の人間。


「…………」


蓮斗は正直、いいようのない息苦しさを感じていた。この雰囲気は、明らかに和やかなお茶会のモノではない。

蓮斗は周りに気付かれないように、慎重に視線だけを動かした。

まず目に入ったのは栗実。彼女も蓮斗と同じなのか、とてもじゃないが居心地が良さそうには見えなかった。

次に見たのは威吹。

……静止していた。

あごを軽く上げ、目はつぶったまま動かない。おとなしくしているというよりは、開き直ってふんぞりかえっている、といった方が正しいような気がする。

そして、最後に1人……というよりは、2人。真正面から睨み合い、この雰囲気を作り出している張本人達を見る。


「…………」


いつもと変わりないように見えるが、実際にはとんでもない圧力を放っている恋と、正に『泣く子も黙る』眼光で恋を睨みつけている秋奈。その意識が自分に向けられていない事が分かっていても、自然と心拍数が上がってしまう蓮斗は、ため息すらつけずにただ時間が過ぎていくのを感じていた。


「……何だ、用があるなら早く言え」


脅すような低い声。コーヒーの湯気に混じり、煙草の煙が吐き出された。それだけで、蓮斗と栗実はその場から逃げ出したくなる。

しかし恋はそれにも臆さず、力強い声で言った。


「レン君の記憶を、取り戻します。これは、レン君が望んだ事です。だから、私はそれに協力します」


ジリッ、と音がした。

秋奈の煙草が、2秒と経たずに灰と化す。


(うわぁぁぁーっ!)


心の中で蓮斗は叫んだ。


だが、


「……好きにするがいいさ」


秋奈は、反対しなかった。

テーブルの上に落ちた灰を携帯灰皿へと入れ、ゆっくりと席を立つ。


「しかし、それを伝えるのは他にいるんじゃないか?とだけ言っておこう」


顔を上げる蓮斗。

秋奈の視線は、蓮斗へと注がれていた。そこで蓮斗は、ここにいない人物を思い出す。


「恋。景は?」

「ゴメン。私が威吹を連れに教室に行った時にいなかったから……」

「……そっか」


ピリッ、と蓮斗の頭に電力の様な痛みが走る。何だ?と疑問を感じた蓮斗を見て、秋奈は、


「全員が納得してから私の所へ来い。出来る限りの事はしよう。……ん?どうした、恋?」


先程から不思議そうな視線を秋奈に送っていた恋を見て、秋奈は首を傾げた。


「あ、いえ……。ただ、何でいきなり?」


そんな恋の言葉に、秋奈は保健室に来てから始めて表情を緩めた。そして、コーヒーカップを手に取り、熱さなど微塵も感じさせない飲みっぷりで中身を飲み干すと、


「忘れたか?私は蓮斗のカウンセラーだぞ?患者が記憶を取り戻すと決めたなら、私は何も言えないし、言わないよ。……それに、私も大人気なかったからな」


目を細め、どこか遠くを見るような目で秋奈は窓の外を眺める。

その視線を栗実と恋に移すと、2人の頭をわしゃわしゃと撫でた。


「お前らを、信じる事にしたのさ」


いきなり話の輪に入れられ驚く栗実だが、秋奈から先程までの圧力が無くなっている事を知ると、溜まっていた息をゆっくりと吐いて身体の力を抜いた。以前の彼女なら、『爆発』していてもおかしくなかったかもしれない。


そんな光景を覗く影がいた。

それにいち早く気が付いたのは、今まで微動だにしなかった威吹だった。

その影は、保健室の扉を少しだけ開け、その隙間からこちらを覗いている。

気付きはした威吹だったが、リアクションはしない。

ただ、目を開いて蓮斗を見た。


「……?」


その視線に気づいた蓮斗。

とりあえずその開かれた目を見返すと、その目が左に動く。つられて左に視線をずらすと、半開きになっている保健室の扉が蓮斗の目に入った。

そこには。


「景……?」


半信半疑で名を読んでみる。

影は、慌てた様子でその場から消えた。


「景!」


蓮斗は思わず立ち上がり、影を追い掛けようと走り始めた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ