叫〜覚悟を飲み込むその痛み〜
急展開です。
蓮斗にしがみついたまま眠る恋。なんだかとても気持ち良さそうなので、蓮斗は恋を起こさずに、そのまま顔を見つめていた。
「コイツに聞けば、わかるのかな」
見つめたまま、そんなことを呟いてみる。
考えてみれば、入院していた時にも先程のような事があった事を蓮斗は思い出す。
――あの時、自分は何と言った?
「っ……!」
また、頭痛が蓮斗を襲う。よほど思い出したくない記憶なのか、と自分に聞いてみる。当たり前に、返事はない。と、その時、蓮斗の携帯がベッドの上で震えた。
「……携帯、か」
身体を引きずり、体勢を入れ替えて携帯を手にする。念のためのアラームだった。蓮斗はそれを止め、おもむろに着信履歴を開いてみる。
「恋……恋……秋奈先生……威吹…威吹?」
聞き覚えのある名に、蓮斗はハッとした。
威吹とは、自分を助けてくれた(この際夢か現実かは置いておいて)人物ではないか?
「っ!……頭痛がくるって事は…彼女の事も、忘れているのか」
もはや、頭痛は記憶喪失の判断材料となっていた。
考えるのを1度やめ、更に画面をスライドさせる。
その中に、一際頭痛を酷くさせる名があった。
「……南、貴……」
口に出して呟いてみる。頭痛は増すばかりで、蓮斗は気を失いそうになりながらも携帯を閉じた。
脇腹の傷痕が、やけに疼くのを感じる。
――わけがわからない。自分は、一体何をして、何をされて、何を忘れてるんだ……。
『所詮、他人の子か』
「……あっ……!」
今度は背中。おかしい。そんなところ、怪我をした覚えはない。それなのに。
静かに、蓮斗は背中に手を回す。そして、それに触れて。
――それなのに。
―――何故、俺は背中に傷があるんだろう―――
「……っあ……」
そこで、恋は目を覚ました。目の前にあるのは、混沌とした瞳をした、蓮斗の顔。
何があったのか。考えるその間もなく。
「――――あああぁあぁああああああぁあ!!!!」
全ての感情が、爆発した。