部屋〜心をえぐるは無意識という刃物〜
恋愛にもどってこれたような、そんな気がします。
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「…………」
無事退院した蓮斗は、自分の部屋に戻るやいなや呆然としていた。
壊れたカラーボックス、穴の開いた壁。何をどう生活すればこうなるのか、蓮斗は頭を抱えてため息をつく。
勿論、それをやったのは蓮斗本人(厳密に言えば蓮だが)なのだが、当の本人はぶつくさ言いながらカラーボックスの破片を拾ったりしている。
その後ろで、恋は蓮斗の部屋をまじまじと見渡していた。
「ふ〜ん……」
「……な、なに」
「いや、レン君の部屋に入るのそういえば初めてだなぁって」
せわしなく視線をうろつかせている恋に対し、そんなの当たり前だろ、と言おうとした蓮斗だったがそれはやめた。
蓮斗からしてみれば初対面となんらかわりない恋の存在だが、それはあくまで記憶喪失を無視した視点。
自分が忘れているだけ、と心の中で呟いて、蓮斗は部屋の片付けに戻った。
「手伝うね」
「あ、うん。ありがとう」
しかし、悪い奴ではないとも蓮斗は思った。
「――ん〜〜っ!」
「……こんなもんか」
大きく伸びをする恋の横で、手を叩きながら蓮斗は息を吐いた。
壊れたカラーボックスはそのままゴミ袋へ。壁の穴はガムテープで塞ぎ、カレンダーやらポスターでカモフラージュ。ホコリが酷かったので、今は窓を全開にして空気を入れ換えていた。
2人はベッドに座り、どちらからともなく視線を交える。
しばらく沈黙が続いたが、それは恋の笑顔で破られた。いきなりの不意打ちに蓮斗は顔を赤くする。顔を背けないのはせめてもの意地か。
「そういえば、私の名前わかる?」
「……れん」
少しだけ間を置いて蓮斗が答えると、恋は嬉しそうにまた笑顔を見せた。
「そう!恋愛の、恋ね。レン君」
「…………」
「ん?どうしたの?」
「いや……恋と、蓮斗って、ややこしいなって」
思った事をそのまま口にした蓮斗だったが、そこで恋は蓮斗にとって予想外の反応を示した。
笑顔から一変、もの悲しい表情。しかしその視線はしっかりと蓮斗に注がれており、蓮斗は少し、不安になってしまう。
「……おんなじこと、言ってる」
ぽつり、と言葉を漏らす恋。
蓮斗が今言った言葉は、過去に恋が言った言葉と同じだった。
「じゃあ、私帰るね」
「あ……」
「また明日、学校でね」
バタリ、と扉の閉まる音。
何故、今自分は彼女を呼び止めようとしたのか。
蓮斗は1人、そんな事を考えた。
「思ってたより、つらいなぁ……」
家から飛び出した、1人の女の子。
その女の子は、涙が溢れて止まらなかった。