表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
70/95

想定外〜蓮斗の半身『蓮』〜

「…………」


蓮斗は、病室で1人自分の身体に巻かれた包帯を見つめていた。


医師から告げられた、身体に深く刻まれた刺し傷の存在、更には記憶喪失という信じ難い言葉。

その2つは、蓮斗を混乱させるには充分だった。


「…………」


表情には出ないものの、頭の中では目まぐるしく色々な考えが巡っていた。



なぜ、自分は刺されたのか。


刺される様なことを、自分はしたのだろうか。


無くした記憶は、どんなものだったのか。



「……駄目だ、わからない」


思わず出てしまう弱音。

蓮斗はベッドにバタリと倒れ込み、天井を見つめた。何か他に気が紛れる事は無いかと思案する。


「そういえば……」


ふと、病室にいた皆の事を思い出す。


「秋奈先生に、景に、栗実さん……それに、あの2人」



ぱっと見た時は、違和感を感じなかった事を思い出す。


「……れん、だっけ」


一瞬だけ、記憶が戻った様な感覚があったのを蓮斗は覚えている。

しかし、気を失う寸前に、蓮斗は自分が自分じゃないような、そんな感じがしたことも覚えていた。


「あれは……一体……?」


自分じゃないけど、自分。

自分だけれど、自分じゃない。


矛盾した感覚を身体は当たり前のように受け入れていた。


「痛っ…。…………寝よう」


蓮斗は、それまで考えていた事を全てシャットダウンした。頭が割れる様な痛みが、一瞬だけ蓮斗を苦しめた。

























「レン君……?」


恋は、静かに病室の扉を開ける。少しだけ開いた扉の隙間から、蓮斗の姿が伺えた。


蓮斗が寝ている事がわかると、そのままゆっくりと中に入り扉を閉める。


「何の用だ?」

「……っ!!」


背後からいきなり掛けられた声に、恋は心底驚いた。すぐさま振り返ると、そこには寝ているはずの蓮斗が、身体を起こしてこちらを見つめていた。


「あは……起きてたんだ」

「いや、寝てた」


驚いたせいか、ぎこちない動きで蓮斗の元に向かう恋。椅子を出して、蓮斗に身体を向けるように座る。


「……どう?」


蓮斗の身体を下から上へ、ゆっくりと眺めてから恋はそう聞いた。


「別に……全く、南貴の野郎しっかりとナイフの根元までねじ込みやがった」

「あ、うん。ごめん……」

「なんでお前が謝る」

「うん………え?」


恋は、気の抜けた声を出して蓮斗を見つめた。

蓮斗は記憶喪失で、恋の事は忘れているはずなのに、何故何もなかったように会話が成立しているのだろう、と。

その視線に気が付いた蓮斗は、やれやれと言わんばかりに首を振った。


「き、記憶が戻ったの……?」


期待の眼差しを、蓮斗に向ける恋だったが、蓮斗は首を横に振っていた。


「『蓮斗』は、記憶喪失のままだ……って言えば、わかるか?」


その言葉を聞いて、恋は一瞬止まる。その間すら面倒なのか、恋が聞き返す前に、蓮斗は続きを口にした。


「まぁ、大体わかってると思うが……俺は蓮斗であって、蓮斗じゃない。……『蓮斗』と対に当たる人格…『蓮』だ……って、聞いてるか?」


その後、しばらく恋は止まったまま動かなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ