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決着〜南貴と蓮斗、南と蓮〜

「っ!!」

「ぎっ!!」


蓮斗の耳を掠めていく南貴の拳。南貴は拳を引かずにそのまま腕を蓮斗の首に巻き付ける。頸動脈に指が食い込んだ。


「がぁっ!!」


蓮斗は抵抗せずに身体を南貴に預け、そのまま足を払って南貴のバランスを崩しにかかる。そして力だけで南貴をぶん投げた。


「ふっ!!」


投げるために使った勢いを使い、たたき付けられた南貴へ肘を突き出したまま倒れ込む。南貴はそれを身をよじることで辛うじて避けた。

ゴッ、と鈍い音を立てて肘が地面をえぐる。当たれば正に一撃必殺。そこに情けなど微塵も感じられない。

攻撃を外し隙が出た蓮斗に、南貴は跳ね起きの要領で蹴りをかます。鼻先を掠めるそれは、直撃すれば首の骨すら危うかっただろう。


「…はっ、楽しいな」


蹴りの反動でそのまま立ち上がり、2、3歩下がってから南貴は言った。


「確かにな……けど」


蓮斗は腰を落とし、下から南貴を睨みつける。


「それ以上に、お前が憎い……!」

「俺もだ……!」


2人同時に、地面を蹴った。叫んだのは、南貴。


「おおぉおぉおお!!」


殴りつける拳は、全体重が乗った怨みの鉄槌。

受けた腕が軋む。逆らわずに受け流し、体当たりをして南貴を吹き飛ばす蓮斗。


「ぐ…………」


鳩尾に入ったのか、南貴は苦しそうに前屈みになっていた。

それを見下ろす蓮斗の目には怒りしか見えない。辛うじて顔を上げる南貴に、容赦なく追撃を加える。


「かっ………!?」


丸まった背中に、体重を乗せた肘がめり込んだ。ミシリ、と嫌な音が南貴の頭に響く。それも、何度も。


2度。


3度。


4度。


「……ぐっ、あぁっ!!」


耐え切れずに倒れ込めば、俯せのままの南貴に蓮斗は更に蹴りを入れた。


もはや一方的なまでの攻撃に、南貴はなす術もない。と、その時。


「もうやめて!!」


恋が、蓮斗にしがみついていた。


「っ、止めるな!俺は……」

「やだ、絶対に止める。私これ以上見てられない!!」


振り払われても、恋は必死にしがみついた。故に、攻撃は止まってしまう。それが、致命的だった。


とすん。


正に、そんな感じで、蓮斗の脇腹にナイフが突き刺さっていた。


「っ……!!あっ!!」


蓮斗は、自分を刺した人物である南貴を、恋ともども振り払った。ペたりと尻餅をついた恋の頭上を、ナイフが通りすぎていく。


「南貴ィ……!」

「はは……アハハ。無様だね、蓮斗ぉ……」


ケタケタと笑う南貴。それを見て、蓮斗は気付いた。ナイフを引き抜き、地面に投げ捨てる。


「……まさか、お前は」

「さすがに気付いたかぁ。……そう。俺はお前と同じ2重人格者だよ」


更に笑う南貴。それに、蓮斗は歯ぎしりで返した。


「おかしいと思ったんだ。あまりにも性格や言葉遣いが頻繁に変わりすぎてるってな………!」

「今更気付いたって遅いよ。形勢逆転だ、今こそ、俺の願いが叶うんだ……!」


ふらりと立ち上がり、南貴は懐からナイフを取り出す。蓮斗は、脇腹を抱えながら後ずさるしかなかった。息をするたび、脈打つように血が溢れ、指の間をぬめりと濡らしていく。


「あ、そうだ」


何かを思い出した様に、南貴は視線を蓮斗から外す。外した視線のその先には、尻餅をついたままの恋が。


「……おい、まさか」


蓮斗の言葉に、南貴はニヤリと笑う。

そして、ナイフを振り上げた。恋は恐怖で動けずにいる。


「やめろぉぉぉぉ!!!!」


瞬間、蓮斗は駆け出していた。



































「恋!恋?しっかりして!」

「あ……え…?」


気が付けば、恋は威吹に支えられていた。

どうしたんだろう、と恋は考える。視線を落とせば、身体は真っ赤に染まっていた。

あぁ、刺されたのか。

恋は、あっさりとそう結論を出した。しかしおかしい。刺されたなら少なからずどこかが痛むはずだ。あまりにもひど過ぎて痛みもわからないんだろうか、などと考えを巡らせる。

しかし、そんな考えは目の前の光景を見て吹き飛んだ。


そこには、白目を剥いて気絶している南貴。


そして、ここにいないはずの秋奈に抱き抱えられた、蓮斗の姿があった。


「しっかりしろ、蓮斗!おい!」

「…………」


蓮斗は、秋奈の言葉に答えようとしているのか、口をゆっくりと動かしている。しかし、そこから出てくるのは空気だけで、声は出ていない。


「あ、れ?レン君……!?」


身体を起こし、恋は蓮斗に近付く。そこで、自分は刺されていないと理解した。

蓮斗の腹部、そこには、ナイフが根元までしっかりと突き刺さっていたから。

夥しい量の血が、辺りを赤く染めていた。

恋の身体に着いていた血は1つ残らず蓮斗のものだった。

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