分岐―前編―〜運命はその選択を強要させる〜
この『分岐』は、文字通り大切な分岐点です。
あまり激しい出来事は起こりませんが、とても大切な場面になります。
「ん…………んぅ」
大きく伸びをして、恋は深呼吸をした。
朝の空気が体に染み渡る。
2、3日の入院。
それは、恋の気持ちを落ち着かせるには十分な時間だった。前向きな考えを持つことにしたのだ。
「行きますか」
とんとん、と靴の先を地面に叩き、恋は歩き出す。
学校に着いて、自分の席に座る恋。
もちろんのこと、隣の席には誰もいない。
「…………」
暗い気持ちになりそうになるのを、頭を振って蹴散らした。
大丈夫、大丈夫、と心の中で言いながら、恋は勉強道具を机へと移していく。
そんな恋の隣を、とある人物が通り過ぎた。
長い髪をたくし上げている、個性的な髪型。
威吹だった。
威吹はそのまま席につくと、鞄を机の横に掛けた。その時、ちらっと恋を見る。
目が、合った。
「!」
「……?」
すぐに目を逸らしてしまう威吹に、恋は疑問を覚える。
それからしばらく恋は威吹を見つめ続けていたが、威吹は恋を見ることは無かった。
「ほら、席に付け。始めるぞ」
いつの間にか来ていた秋奈が、教卓に手をついて言った。
いつも通り、淡々と出席をとっていく秋奈。が、ピタッ、と声が途切れる。
何だろう、と恋は顔を上げて秋奈を見る。
秋奈にしては珍しく、動揺しているような、そんな表情をしていた。
そこで、不意に、目が合った。
時が止まった。
恋は、そんな、気分だった。
気が付けば、秋奈はいつもの秋奈に戻っており、出席の点呼は続いていた。
「…………?」
――何か、おかしい。
その違和感は、放課後まで続いた。
恋が威吹に近付けば、威吹は何も言わずに離れていく。
秋奈も、威吹ほどあからさまではないにしろ、どころか恋と接するのを避けているようだった。
――絶対に、おかしい。
恋は、思った。
2人は、私に対して何かを隠している、と。
でなければ、さすがにあの態度はおかしすぎる。
「…………よし」
1人、恋は何か思い立ち、勢いよく教室から飛び出して行った。
終わりが少しずつ近づいて来ました。
ここまで読み続けて下さっている方々、ありがとうございます。
そして出来れば、最後までお付き合いしてくだされば幸いです。
では、次回更新で。