拒絶〜過ちに気付くのはいつも後になってから〜
あの日から、蓮斗は姿を見せなくなってしまった。
今まで気にしていなかったクラスメイトも、さすがに同じ教室の中に失踪者が出れば動揺する。
どことなくクラスの中が浮わついている中、恋は教室から出ていった。
授業に身が入る訳もなく、ひたすら歩み続ける。
「待ちなさい」
いきなり後ろから声をかけられ、恋は立ち止まり、そして振り向いた。そこには、学校では珍しく髪を下ろしている、威吹だった。
「……なに?私、忙しいんだけど」
「蓮斗のこと」
「!」
恋の肩がビクリと動く。それを見た威吹は、1歩、恋に近寄った。
「あんたなら何か知ってると思ってね。さぁ、知ってること教えて頂戴」
また1歩近付く。次の瞬間、恋は。
走り出していた。
「待ちなさい!」
既に休み時間は終わりの鐘を告げている。しかし、そんなことは関係ないといわんばかりに、威吹は声を張り上げて追い掛け始めた。
「はぁっ…はぁっ……」
「…っは、っはぁ……さぁ、もう、逃げられないわよ…」
肩で息をする2人。しかし、表情は全く違っていた。
威吹は追い詰めた優越感からか、勝ち誇った表情。
それに対し、恋は、追い詰められた事に加え、これから聞かれるであろう質問に気が乗らなかった。
2人がいるのは、展望台に繋がる螺旋階段への扉の前。
しかし、螺旋階段への扉は今は鍵がしてあり、なおかつここへ来る道は一本しかない。その道にはもちろん、威吹が立ち塞がっている。
――逃げられない……。
恋は、膝をついて座り込んでしまった。
「なんで逃げたのか知らないけれど……。聞かしてもらうわ。蓮斗は、どこへ行ったの?」
「…………わからない」
「じゃあ、何かおかしな事は?」
「………………わからない」
「……じゃあ、蓮斗が」
「わかんないっ!!」
いきなりの、絶叫。
恋は、わなわなと肩を震わせて立ち上がる。
「私の方が知りたいよっ!レン君がおかしくなっちゃったのは誰が見たってわかるじゃん!でも……私にはその理由がわからない、レン君がどんな心の傷を負っているのかも知らない!!どこに行ったのかだってわからない……!……レン君は、……私を……」
――――拒絶した。
「…………あ…………」
恋はまた、床にへたり込んでしまう。
自分で言った言葉に、愕然としていた。
「私の……せいなのかなぁ」
「…………え?」
恋のかすれた声に、威吹は思わず返事をしていた。それは、自分に対しての言葉じゃないとわかっているのに。
「私が、レン君を拒絶したから……。私が、あの時に意地なんか張らなければ……」
「……恋?しっかりして、恋!?」
恋の頭の中で、過去の出来事が物凄い勢いで早送り再生されていく。それは、ある箇所でピタリと止まり、通常再生へと切り替わる。
そこは、恋と威吹が2度目となる対立を起こした日。
「レン君は、私を止めようとしてくれたのに……、私は…!」
―――どいて。そう言って、レン君を突っぱねた。
「拒絶した……!私、私……!」
「恋!ダメ、落ち着いて!しっかりして!」
いつからか、威吹は恋に駆け寄り、肩を掴み揺さ振っていた。
恋は、頭を抱え、小声で呟きながらただただ頭を振っている。
「……いや……いや……だ……よ……」
「恋?ちょっと、しっかりしなさい!!恋!!」
そのまま、恋はドサリと倒れた。
目を開いたまま、涙を流し、ぶつぶつと何かを呟きながら。
お世話にも、正常とは言えなかった。
――どこで、間違っちゃったのかな――。
あとはただ、白い世界が広がっていた。
痛々しいのが続きます…。
ですが、お付き合いいただけると、幸いです。