暴走―中編―〜彼が起こした行動は〜
やっと、物語を動かせました…
恋は、いきなり腕を引かれ、立ちあがらされた。
腕を引いたのが蓮斗だということに、恋はワンテンポ遅れて気づく。
「…れ…」
呼ぼうとした、彼の名前。しかし、恋は言葉を止めてしまった。
乱れた服に、やつれてしまった顔。
そして1番目を引かれるのは、ところどころに赤い染みができた包帯を巻いた、右腕だった。
「…………っ!」
反射的に、恋は掴まれた腕を振り払おうとしてしまう。が、それが間違いであることに気が付いた。
蓮斗は、ほんの一瞬だけ、しかし本当に哀しそうな表情をしていたのだ。
気付いた時には、手遅れだった。
蓮斗の表情はすぐに感情を出さなくなり、恋を引っ張っていく。
恋は、抵抗出来なかった。
案の定、恋は外に連れ出される。
そのまま蓮斗は突き進んだ。
行き着いたのは、学校だった。
そして、裏庭。
息を切らして、肩で息をする恋に、顔を合わしてからは初めて、蓮斗は口を開いた。
「……約束、覚えてるな?」
恋は、嫌な予感しかしなかった。蓮斗の目は、しっかりと恋を見据えている。
淀んでいるその目は、恋を不安にさせた。
「喜べよ……。今が、その時だ」
「……」
かつて2人が交わした約束。
蓮斗が、恋を自分の傍に縛り付けておくために、互いの力をぶつかり合わせて成立した、約束。
「お前は、もう大丈夫だよ…。俺がいなくてもな」
恋は、返事をしない。
肩を震わせ、強く手を握りしめる。
「だから、……だからな」
蓮斗が全てを言い終える前に、恋は顔を上げた。
そして、全てを言わせないために、蓮斗に飛びつき、そのまま押し倒した。
自分の頬に流れる涙。
それを生み出す感情に従って。