夜〜Brake Mind コワレテイクココロ〜
こわれていくのははたしてどちらか…
恋は1人、自分の部屋で思い返す。
宿泊研修での、蓮斗の事。
まるで別人のように変わり果て、敵には情け容赦なくとどめを刺すあの姿。
――今思い返しても震えが来る。
恋はブルリと震える身体を抑え、ベッドへと倒れ込んだ。
「……なんか、久し振りにぐっすり寝れそう……」
呟いて、恋は目を閉じる。
恋の身体には、抱き抱えられた時の感触が鮮明に残っていた。
「怖いのに、あったかい……。へんな、の……」
「くそ……」
蓮斗は、夜中にも関わらず起きていた。
寝れないのである。
「なんだってんだ……」
ベッドの上で1人悪態をつく蓮斗。その時、蓮斗を突如として『ある衝動』が襲った。
「また……か、くそっ!………くっ…ぁあぁああ!!」
バゴン!!と鈍い音が部屋中に響き渡る。蓮斗がすぐそばにあった本棚の1段を叩き割ったのだ。
蓮斗は、本棚を壊した方の手を抱え、必死に何かを堪えている。
「落ち着け……落ち着け……!」
歯を食いしばり、そう自分へ語りかける蓮斗。
激しい動機は蓮斗を正気から引きはがしていってしまう。
蓮斗が抑えようとしているのは、『もう1人の自分』そのもの。破壊衝動だ。
「なんだっていきなり……ふぅっ……はっ……」
深呼吸もままならない蓮斗。気を抜けば手当たり次第に暴れ回りたくなる危険な欲求を、蓮斗は必死に抑え続けていた。