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到着〜素直になれない恋心(レンゴコロ)〜

なかなか長くかけないものです。

「〜……。やっと着いたか」

「長かったね…」

2人はバスから降りるなり体操まがいの行動を始める。やはり根が体育会系ならしい。

時刻は7時半。予定よりも遅くなってしまっていた。少し急ぎ気味で移動する。いつもなら必ず話し掛けてくる恋も、流石に疲れたのか今は静かだった。

(ま、当たり前か)

蓮斗自身も疲れていたので、ここは無駄に刺激せずに放っておくことにした。




「じゃ、男子は右の階段から、女子は左の階段から自分達の部屋に行って」

クラス委員の奴が指示をして生徒を誘導する。こういうときは高い確率で…。

「ちょっ、あんたはこっちじゃないでしょうが!」

…女子に紛れて女子部屋に行こうとする奴がいる。

「馬鹿だなあいつ」

「本当」

階段を登りながら恋と言葉を交わす。

…馬鹿はここにもいた。

「お前はあっちだろうが」

そう言って恋を突き飛ばす。

「キャッ!危ないなあ」

「キレイに着地するやつが言う台詞じゃない。いいから早くいけよ。置いてかれるぞ」

「むぅ〜」

「わかったって。後で部屋来ていいから」

そう言ってやると、恋は渋々女子の集まる方へと走っていった。

どうやらあいつは、同年代の女子と一緒にいることが苦手ならしい。どうも話が合わないらしく、いつもどこか一つ距離を置いているのだ。

「あの明るさなら簡単に友達くらい作れるだろうに…」

変なとこでシャイだな、と独り言を呟いた。と、その時右肩に衝撃が伝わる。

「よう、蓮斗」

「南貴」

南貴みなきだった。高校に入ってから出来た蓮斗の友達だ。恋と入れ違いで来たところをみると、タイミングを図っていたのだろう。(恐らくは女子に紛れてたのもコイツだ)

「なんだよ、なんか用か?」

「つれない事言うなよ〜。俺とお前の仲だろ?」

恋がいる時は怖がって近寄らないくせに、コイツは何をほざいているのだろうか。そこらの族をまとめている奴が聞いて呆れる。(南貴はたった1人でいくつもの暴走族をまとめているのだ)

「ん?蓮斗シャンプー変えたか?」

「いや、いつものだけど」

「その割にはいつもと香りが…特に右肩から腕全体にかけて」

「!」

「ん?どした蓮斗」

まさか、あのバスでの肩の重み…右腕全体を捕まったのは、まさか。

蓮斗はバスの中での出来事を思い返していた。あの時恋は蓮斗の右腕に絡み付いて健やかに眠っていたのだが、今更その事実にたどり着く辺り、蓮斗も恋に負けず劣らずの天然である。(たまに頭を撫でるというオプション付き)

明らかに動揺している蓮斗を余所に、南貴はここで更に蓮斗を動揺させる事を言い放った。

「な、それよりもさ、恋ちゃんって今フリーなのか?」

「…は?あ、いや、多分そうだと…」

「マジ!?じゃあ俺にもチャンスはあるって事だな!っしゃあ!!」

「チャンスって、お前まさか」

人目をはばからず派手なガッツポーズを繰り出している南貴に、蓮斗は顔を向けた。

「恋を…狙ってんのか?」

「もちろん!」

「どうやって」

「何だ、知らねぇのか?普段あんだけ近くにいて…。ま、それもそうか。お前みたいな二重人格者、信じられる訳ねえもんな」

蓮斗の身体が若干強張る。だがそれも一瞬で、南貴には気付かれる事はなかった。

「いいか?ここだけの話…恋ちゃんに勝負仕掛けて勝てば、なんでも言うこと聞いてくれるらしいぜ!」

「…なんだそれ。初めて聞いたぞ」

「遅れてんなぁ。結構前からあるんだぜ、この噂」

「ふーん……」

素っ気ない返事だけを返して会話を打ち切る。

そんな噂初めて聞いたが、恐らくは恋が勝負する相手を手っ取り早く集めるために撒いた話だろう。あいつならやりかねなかった。




「負けたらどうすんだよ」

自由時間――部屋に蓮斗しかいなくなったのを見計らって恋を招き入れる。恋は予想通り喜んで来ていた。

「負けないからいいよ」

「負けただろうが」

蓮斗のベッドにねっころがっていた恋が、不意に鋭い目付きになる。

「あれは確認!勝負じゃないし」

「はいはい」

適当な返事にイラッときたのだろうか。いきなり起き上がりベッドに腰掛けていた蓮斗を思い切り引っ張った。

「うわっ」

なす術もなくベッドに仰向けに倒れる蓮斗。そこに恋の肘が鳩尾にめり込んだ。

「カハッ…が…っ」

何をする、と言う前に次弾が同じ位置に突き刺さる。あっという間に呼吸困難に陥った蓮斗は、胸を抑えて苦しむだけだ。

「つまらないこと言わないで」

そう言った恋の目は冷たかった。よほど負ける事にコンプレックスを持っているのだろうか。苦しむ蓮斗を余所に、立ち上がろうとする恋。だが、

「待てよ」

いきなり蓮斗に腕を引っ張られ、今度は恋が仰向けに倒れる。

「…!?」

恋の頭上には、先程まで苦しんでいたはずの蓮斗が。その顔にはまだ苦痛が残っていたが、目にはそれが見られない。

「…まただよ。なんなのそれ」

恋は呆れたようにそう言った。両手は蓮斗が片手でまとめて拘束している。

「普段は全然そんなそぶりなんか見せないし、強くなんか見えなかった。けど、今は全然違う。まるで人が違うみたいに変わってる」

恋の言葉に蓮斗は答えなかった。代わりに一言、両手は拘束したままで、耳元で囁いた。

「――人が心配していることには、気付けないのか」

「………」

それを聞いて、恋はすぐ近くにある蓮斗の顔から目を背けた。

そこで蓮斗は両手の拘束を解いた。そのまま頭を撫でてやる。恋の固い表情が、少しずつ和らいでいく。

「むやみやたらに喧嘩しないって、約束したよな」

「…うん」

「それだけわかってれば、いい」

最後にぽん、と頭を叩いて恋の横に寝転がる。

「気がすんだら、戻れよ」

それだけ言って、蓮斗は目を閉じた。少しして右腕が何かに捕まったが、気にしないことにした。

今回は蓮斗の性格の部分にほんの少しだけ触れ、恋の無鉄砲さ(不器用さ)を少しだけ強調してみました。恋の心中…非常にわかりづらいです…

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