倉庫―後編―〜残された代償〜
更新、多大に遅れてしまい本当にすみません…。
こんな作品でも、感想、指摘、評価があれば嬉しいです。
「…………はぁ」
蓮斗は1人、自分の部屋でうなだれていた。ベッドに寄り掛かり、腕を頭に乗せて天井を仰ぐ。
思い返すのは、身体が重なり合うあの感覚。唇が重なり、首筋を這う舌の感触が簡単に思い出せた。
「我ながら、馬鹿な事したなぁ……」
そう呟いて、視線を天井から時計に移す。
既に昼を過ぎていた。
しかし、別に休日でも祝日でも何でもない。
体調が悪い訳でもない。
普通の平日。本来なら自分の部屋でうなだれている場合ではない。
今すぐ家を飛び出し、学校に行かなければならないはずだが、蓮斗はそうしない。
厳密にいえば、それができなかった。
「そこで何をしている!」
扉が開き、入ってきた光に眩しいと思う暇も、2人にはなかった。
扉を開けたのは、教師だった。
秋奈なら助かっていたかもしれない。しかし、立っていたのは風紀委員を束ねていて、更に生活指導も兼任している教師。
この教師に停学を食らわされた生徒はかなりの数に上り、元々ガラが悪いこの学校の中では恐れられていた。
そんな教師に、この状況。
蓮斗の腕の中に恋が居て、恋は執拗に蓮斗を求めていた。
このままでは、2人共停学になってしまう。
そう考えた蓮斗は、教師ににじり寄った。
ここから先は、蓮斗はあまり覚えていない。
しかし、一つだけ覚えているとすれば。
殴った。
それだけだった。
そしてその後に残ったのは、蓮斗に課せられたこの『無期限停学』。
結論からいえば、恋に被害がいかなかっただけよかったと蓮斗は思う。
しかし、それでも馬鹿な事をしたと蓮斗は呟いた。
『教師を殴った』
それは、自らの心の傷を開かせ、更に深くえぐるに等しい行為。
今までの幸運全てをひいても、お釣りがくるほどのダメージ。
それを、蓮斗はひたすら感じていた。
そこで、蓮斗を現在に引き戻すノックの音。
「開いてる」
蓮斗がそれだけ返すと、すぐにドアが開く。
「悪いけどさ、今来ても楽しくもなんともないぞ」
「んだよぉ、冷てぇなあ。せっかく励ましにきたのに」
南貴だった。南貴は私服で、多分こいつも今日は学校行ってないな、と蓮斗は思う。
「んで?なんの用だ?」
「励ましに来たっつってんだろ?つーわけで…」
「面倒くさい」
「最後まで言わせろっつの!」
対応が面倒な蓮斗は、とりあえず早く会話を終わらせようとする。だが、逆効果のようで、今のようなやり取りがしばらく続いてしまう。
何度却下されても言おうとする辺り、南貴のしつこさが伺えた。
そのうち、蓮斗は観念したのか口を閉じる。
「そうそ、そやって素直になればいいんだよ。つーわけでドライブいかね?」
「は?」
「ハイ決定〜。じゃ、外で待ってるからな。早く着替えてこいよ」
そう言って南貴は部屋を出ていく。その様子をポカンとして見ていた蓮斗は、しばらくして、更にテンションが下がるのを感じた。
これが本当に『ただのドライブ』なら、蓮斗もそれなりに嬉しかったかもしれない。
しかし、南貴のいうドライブは、『ただのドライブ』なんかではないのだ。
しょうがなく着替え、蓮斗は外に出る。
そこには、蓮斗の予想通りの光景があった。
家の前には、数台の単車。その1つ1つに、種類の違うステッカー。
蓮斗の記憶が正しければ、それはこの辺りの暴走族のステッカーだ。
「お、来たか。さ、行こうぜ。長い『ドライブ』の始まりだ!」
その内の1つ、一際目立つ単車に南貴が乗っていた。それには、合計5枚のステッカー。
つまりは、南貴が5つの暴走族を束ねている証拠。
南貴のいうドライブとは、すなわち暴走族同士の『抗争』を意味していた。