倉庫―前編―〜気持ちの変化は予測不能〜
ラブラブ要素が少ないと感じた今日この頃…
「――おらっ!」
気合いと共に蹴りを放つ蓮斗。倉庫に鈍い鉄の音が響く。
「っ…。やっぱり無理か」
「だめ?」
「残念だけど、さすがに鉄を蹴破れる程俺は強くない」
「そっか」
「………?」
あっさりと諦める恋に、蓮斗は首を傾げた。
「…やけに冷静だな」
「え?」
「お前、今の状況わかってる?閉じ込められてるんだぞ?」
いいながら、蓮斗は積み上げられているマットに寝転んだ。
目も慣れて、薄暗い中でも一応互いの居場所は確認出来るので、少しではあるが安心感はある。
「う〜ん…。なんていうか……」
蓮斗の問いに対し、そう呟きながら同じ様にマットに寝転がる。
決して広いわけではないマットの上では、必然的に身体が触れてしまう。
そんなこんなで若干身体を緊張させている蓮斗をよそに、恋は更に身体を寄せた。
その行動を無意識で行っている分、余計にタチが悪い、と蓮斗は思った。
「なんかね…。不安じゃないんだ」
「?」
そう言いながら、恋は蓮斗にこちらを向くように促す。
最初蓮斗は顔だけを向けたが、恋に肩を捕まえられて結局全身を恋に向かい合わせる。
「レン君といると…不思議と不安じゃないの」
暗いとはいえ、間近で恋の顔を見て更に身体が固まる蓮斗。
それを知ってか知らずか、恋は更に身体を密着させた。
「なんでだろうね。ちょっと前まで、本当に怖かったのにさ。…傍にも居てほしくなかったんだよ?正直いえばさ」
「……それは正しいと思うけど」
顔を背ける蓮斗。それを、恋は無理矢理に戻す。
「でもね…」
そして、恋は蓮斗の胸に顔を埋めた。
「私…変なんだ」
くぐもった声が蓮斗の耳に届く。
「私、嫉妬しちゃってる」
「……え?」
蓮斗は耳を疑い、恋を見た。それもそう、恋は、この間とは全く正反対の事を言っているのだ。
「今、なんて…」
そして、聞き返そうとした瞬間に、
蓮斗の口は、恋によって塞がれる。
彼女の、唇で。