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胸中〜彼女達の本音は〜

張り詰めた空気。

蓮斗は、容赦なく景を睨みつけていた。


「どういうつもりだって聞いてるんだ」


景の身体がビクリと震える。

蓮斗が、相手を威圧するときに出す、いつもより幾分低い声。

明らかに怯えている景を見て、蓮斗は若干心が痛む。だか景は、それを表に出すまいと歯を食いしばった。


「こっちのほうが聞きたいよ…」

「は?」


俯いていた顔を上げ、景は蓮斗の目を見た。


「聞きたいのはこっちだよ!昔の蓮斗はこんなじゃなかった!突き放したりしなかったよぉ……」


言って、また俯く景。


それを見て、また蓮斗は胸が痛んだ。何も言い返さないのは、蓮斗にも思うところがあるからだった。


「どうしちゃったの?何が蓮斗を変えたの?…お願いだから、昔の優しい蓮斗に戻ってよ…。抱きしめて。頭を撫でて。優しくして…」


景が言い終えれば、今度は蓮斗が俯く番だった。


間違っちゃいない。自分は、何も間違った事はしていない。そう思いながらも、蓮斗は言い返さなかった。いや、言い返さない、のほうが正しいのかもしれない。


現に、今まさに景に押し倒されても、蓮斗は抵抗しなかった。


自分からは何もしないのは、そうすることで最低限の人間性を保つため。


だが、それもやはり自己満足にしか過ぎなかった。


蓮斗は、ゆっくりと目を閉じた。

それは、全ての抵抗を諦めた証だった。


が。


「…っダメェ!」

「!?」


その瞬間、聞き慣れた声が蓮斗の耳に飛び込んできた。

目を開けば、そこには心底驚いた顔で保健室の入口を見つめている景の顔。

蓮斗も、首だけを曲げてその方向を見る。


「…恋?それに、栗実さん…」


そこには、肩で息をしている恋と、なにがなんだかわからない、といった様子で立っている栗実。


恋はそのまま勢いよく保健室に入り、蓮斗から景を引きはがした。


「いやっ…なにするのよ!」

「それは、こっちの、セリフ…!」


まだ息が整わない恋。とぎれとぎれの言葉を放つ。


「……〜っ!」

「あっ…」


景は、言葉にならない声を出しながら保健室を飛び出していった。

その後を、さんざん迷ったあげく栗実が追いかけはじめた。



「…………」

「…………」


残された2人は、ただ見つめ合った。

どちらも目を逸らせずに、時間だけがよどみなく流れていく。


「…恋」


蓮斗が口を開くと同時に、恋が目を逸らす。そのまま、蓮斗に背を向けた。


「…き、気をつけてよね。他の人に見付かったらどうするのさ」

「あ…。わ、悪い。でも、なんで…」


蓮斗は、そこで言葉を切った。それ以上は、なんだか聞いてはいけない気がしたからだ。


「…先に、戻ってる」

「あ…」


恋が保健室から出ていく。直ぐに蓮斗も保健室を出たが、恋の姿はもうなかった。

代わりに、すぐ側にある階段から勢いよく駆け上がる音が聞こえてきた。


「……なんで、あんなに息切らしてたんだよ…。あんなこと言ったくせによ」


独り言を呟き、蓮斗はこれからどうしようか考える。少しして、景が保健室を飛び出していった事を思い出した。


つい先程まで恋の事を考えていた手前、少し良心が痛んだが、今は景を捜す事にした。










「はぁ〜…」


階段をいい勢いで駆け上がり終えた恋は、反動のようにとぼとぼと歩いていた。


「なにしてんだろ、私…。『嫉妬する立場じゃない』なんて言ったくせに…。」


更に歩くスピードを落とし、壁に寄り掛かる。


「…矛盾しすぎだよ、私のばか」


大きな溜め息。


「?」


壁に寄りかけていた身体を起こし、辺りを見回す。

今の溜め息は、恋のものではなかった。


それは、恋の前方から歩いてくる人が発したもの。

微妙な着こなしの白衣が更に乱れてしまっている。


その人物はもちろん、彼女だった。


「…栗実さん?」

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