保健室―前編―〜患者同士の秘密の話〜
短いですが、どうぞ。どうしても時間の都合上これしか書けないのです…。
「ヤバい…モウムリ…」
「…だ、大丈夫?」
ベッドに顔を埋め、片言ながら弱音を吐く蓮斗。
その様子をオロオロしながら眺める人物。
白衣を少しぎこちなく着ているこの人物は…。
「…大丈夫です。すいません、栗実さん」
「いえ…謝られる程ではないので…」
蓮斗がいるのは、保健室だった。あの空気に耐えられなくなった蓮斗は、授業が始まると同時にここに逃げ込んでいた。
栗実は、いわゆる教育実習生というもので、普段滅多に利用されないここ、保健室を実習の場としている。
「こんな人が来ないところで実習にならないのでは?」と蓮斗はそれとなくツッコミを入れているが、
「そんなことないです」といつもはオドオドしている栗実にしては強く反論してくるので、蓮斗はあまり気にしないことにしていた。
「そういや」
蓮斗がベッドから顔を上げる。それと同時に栗実がびくりとするが、蓮斗は気にしない。これでも改善されたほうなのだ。
2人が出会って間もない頃などは、蓮斗の一挙手一投足にいちいち反応して書類等を落としていたものだから、蓮斗としてはなんだか動きづらかったのを覚えている。
顔をぐしぐしと袖で擦り、改めて蓮斗はベッドに腰掛けた。
「栗実さんって何歳なんですか?なんか、あんまり俺と変わらないような気がするんですけど」
「それはそうです。私は、貴方と同い年ですから」
「…へ?」
栗実が自分と同い年。それを聞いた瞬間、蓮斗の頭上に?マークが浮かんだ。
「だから、私には敬語を使わなくていいですよ。……2つの人格を持つ、蓮斗さん」
「!?」
頭上の?マークに、!マークが追加される。
何故、彼女が自分の事を知っているのか?
蓮斗の詳しい事情を知っているのは、今のところ秋奈と景のみ。
推測だけで言ったにしては、余りにも核心をつき過ぎている。
「なんで、って顔してますね」
「……」
「知りたいですか?なんで私が貴方の秘密を知っているのか」
蓮斗は迷いなく頷く。返答次第では許さないつもりで。
だが、栗実の次の言葉は、またもや予想外のものだった。
「当たり前です。私も、秋奈さんのカウンセリングを受けていますから。患者同士なら、知られていてもおかしくないでしょう?」
それを聞いた瞬間、蓮斗は思った。
あの女教師め、と。