表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/95

責吻―後編―〜気のせい、キノセイ、この涙〜

皆さんのおかげで1万PV突破しました!まだまだ未熟者ですが、よろしくです!

目の前には恋の顔。

驚きで目も閉じれない蓮斗は、強引にされた口づけをしばらく理解できなかった。


いつまでも離れない恋。

さすがに我に返った蓮斗は恋を引きはがし息を整える。


「コイツ…何考えてんだ…」




引きはがされた恋は、幸せそうに寝息をたてている。

キスをされた側としては、拍子抜けしたような、安心したような気分で。

でもそれ以上に気になるのは、恋のあの一言。


まるで、あの時の景との出来事を見ていたかのような、責めるような言葉が、いつまでも頭から離れない。


もし、見られていたら?


自分が気付いていないだけで、恋が全てを知っていたとしたら?


「……最悪だ」


蓮斗は、もはやそうとしか考えられなかった。

そう考えれば、恋の言葉はつじつまが合う。

意味が通る。


あの言葉の中に、一体どれだけの想いを込めていたのか。


隣で寝息をたてている恋。


ふと、蓮斗は思う。


コイツは、最近寝れてないと言った。


その原因は、蓮斗が居ないから。蓮斗を抱きしめていないと寝れないから。


「…起きてんだろ、恋」

「………うん」


恋は、起きていた。

寝たふりをしていただけだったのだ。


「そのままで聞いて」


起き上がろうとする恋を蓮斗は止める。

顔を見られたくないからだ。


「お前…何を見た?」


なるべく優しく、なだめるような口調で言葉を紡ぐ。

そうしないと、今の立場など関係無しに責めてしまいそうだから。

それでも、冷たい口調だったのが自覚できた。


「…………」

「言いづらいんだったら、沈黙で答えてくれ。何も見てないなら、『見てない』って言ってくれればいい」


もちろん、返ってきたのはしばらくの沈黙。

寝転がって背を向ける恋から、何か申し訳なさの様なものを、蓮斗は感じ取った。


「ごめ」違う!」


謝ろうとする恋の言葉を、蓮斗は叫ぶように掻き消した。


「謝るのは…俺のほう…だろ?」


自信なさ気に呟く蓮斗。

そこで、恋が起き上がり蓮斗の顔を見た。


――ああ、今、俺はどんな顔をしているんだろう。


そんな事を考えながら、恋の言葉を待つ。

どんな叱咤も、侮辱も、怒りも受け止めるつもりで目を閉じる。

しかし、恋は予想外の言葉を放った。


「…なんで、謝るのかな…」

「へ?」


思わず目を開く。


「だって、私、嫉妬する立場でもなんでもないじゃん」


そこにいる恋は、けらけらと笑っていた。

まるで、勘違いをしている友達を笑うように。


「私とレン君は、違うでしょ?約束があるから、一緒にいるだけ。違う?」


そこには、前のような女の子の恋はいなく、いつもの、少し強気な、いつもどおりの恋がいた。


「じゃあ、さっきのは」

「面白かったよ、レン君の顔!ふふっ、ちょっとからかっただけ」


ペろりと舌を出した恋は、勢いよく立ち上がり、


「んっ!?」


振り向きざまに蓮斗にキスをする。


「じゃ、今日は帰るね。怪我、ごめんね」


一言挟む暇もなく、恋は部屋を出ていった。




いつもの恋だ。


そう、だよな。恋人でもなんでもないんだ。


だから、さっきのキスが少ししょっぱかったのは、気のせいだよな?


この胸の痛みも、何かの間違いなんだよな?


寂しく感じるのも、勘違いなんだよな?



だから、キスの時に泣いてるように見えたのも……。


俺が泣いてるのも…。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ