責吻―後編―〜気のせい、キノセイ、この涙〜
皆さんのおかげで1万PV突破しました!まだまだ未熟者ですが、よろしくです!
目の前には恋の顔。
驚きで目も閉じれない蓮斗は、強引にされた口づけをしばらく理解できなかった。
いつまでも離れない恋。
さすがに我に返った蓮斗は恋を引きはがし息を整える。
「コイツ…何考えてんだ…」
引きはがされた恋は、幸せそうに寝息をたてている。
キスをされた側としては、拍子抜けしたような、安心したような気分で。
でもそれ以上に気になるのは、恋のあの一言。
まるで、あの時の景との出来事を見ていたかのような、責めるような言葉が、いつまでも頭から離れない。
もし、見られていたら?
自分が気付いていないだけで、恋が全てを知っていたとしたら?
「……最悪だ」
蓮斗は、もはやそうとしか考えられなかった。
そう考えれば、恋の言葉はつじつまが合う。
意味が通る。
あの言葉の中に、一体どれだけの想いを込めていたのか。
隣で寝息をたてている恋。
ふと、蓮斗は思う。
コイツは、最近寝れてないと言った。
その原因は、蓮斗が居ないから。蓮斗を抱きしめていないと寝れないから。
「…起きてんだろ、恋」
「………うん」
恋は、起きていた。
寝たふりをしていただけだったのだ。
「そのままで聞いて」
起き上がろうとする恋を蓮斗は止める。
顔を見られたくないからだ。
「お前…何を見た?」
なるべく優しく、なだめるような口調で言葉を紡ぐ。
そうしないと、今の立場など関係無しに責めてしまいそうだから。
それでも、冷たい口調だったのが自覚できた。
「…………」
「言いづらいんだったら、沈黙で答えてくれ。何も見てないなら、『見てない』って言ってくれればいい」
もちろん、返ってきたのはしばらくの沈黙。
寝転がって背を向ける恋から、何か申し訳なさの様なものを、蓮斗は感じ取った。
「ごめ」違う!」
謝ろうとする恋の言葉を、蓮斗は叫ぶように掻き消した。
「謝るのは…俺のほう…だろ?」
自信なさ気に呟く蓮斗。
そこで、恋が起き上がり蓮斗の顔を見た。
――ああ、今、俺はどんな顔をしているんだろう。
そんな事を考えながら、恋の言葉を待つ。
どんな叱咤も、侮辱も、怒りも受け止めるつもりで目を閉じる。
しかし、恋は予想外の言葉を放った。
「…なんで、謝るのかな…」
「へ?」
思わず目を開く。
「だって、私、嫉妬する立場でもなんでもないじゃん」
そこにいる恋は、けらけらと笑っていた。
まるで、勘違いをしている友達を笑うように。
「私とレン君は、違うでしょ?約束があるから、一緒にいるだけ。違う?」
そこには、前のような女の子の恋はいなく、いつもの、少し強気な、いつもどおりの恋がいた。
「じゃあ、さっきのは」
「面白かったよ、レン君の顔!ふふっ、ちょっとからかっただけ」
ペろりと舌を出した恋は、勢いよく立ち上がり、
「んっ!?」
振り向きざまに蓮斗にキスをする。
「じゃ、今日は帰るね。怪我、ごめんね」
一言挟む暇もなく、恋は部屋を出ていった。
いつもの恋だ。
そう、だよな。恋人でもなんでもないんだ。
だから、さっきのキスが少ししょっぱかったのは、気のせいだよな?
この胸の痛みも、何かの間違いなんだよな?
寂しく感じるのも、勘違いなんだよな?
だから、キスの時に泣いてるように見えたのも……。
俺が泣いてるのも…。