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責吻―前編―〜責める唇〜

学校からの帰り道。蓮斗は脇腹を抱えながら歩いていた。


「いつつ……」

「…だ、大丈夫?」

「多分…」


そう言いつつも、蓮斗の顔色は優れない。

どうも、ただの蹴りでは有り得ない痛みが身体を襲っていた。


「……開いたのかな」

「え、なに?」


なんでもない、と言ってごまかす蓮斗。

恐らく、いや、絶対に、傷が開いている。

冷や汗をかきながら蓮斗は思う。


抜糸したばかりの傷口から血が滲んで、ワイシャツに染み込んでいる感覚が、非常に気持ち悪い。

ブレザーを上に着ているのでばれはしないだろう…との考えだが、このままでは貧血で倒れかねない。


(クソ…家はまだか!?)


と、そこで見慣れた家が目に入る。

蓮斗の家だ。

ここぞとばかりに蓮斗が口を開こうとした瞬間、まさかの一言が。


「ねぇ…。お邪魔してっていいかな?」

「えっ?」


冗談だろオイ!?と蓮斗は言い出しそうになるが、なんとか押し止める。若干口がぱくぱくしたのはしょうがない。


「な…なんで?」


引き攣る笑顔で蓮斗は聞いた。すると恋は、なんだかもじもじした様子で、

「だって…」と漏らすと指を胸の前でいじる。


「最近…寝れなくて…。あのね、その、宿泊研修でクセ…になったみたいで……」

「………」


顔を赤らめて言う恋は、恥ずかしそうに、上目使いで蓮斗を見つめる。


「…そ、そう」


流石にそんな目で見られては、無下に

「帰れ」とは言えない蓮斗だった。




「いてて…」

「じっとして?優しくするからさ」


蓮斗の部屋――しょうがないので、事情を説明して蓮斗は恋に包帯を巻いてもらっていた。

説明した瞬間に、恋が

「そんな…」と呟いたきり超ローテンションに入ってしまったので(それが予想出来ていたので言わなかった)しばらく蓮斗は貧血の心配を拭えなかったが。


「はい、終わったよ」

「あぁ、サンキュー…っと?」


包帯を巻き終わり、制服を片付けようと立ち上がろうとするが…。


「わっ」


立ちくらみが蓮斗を襲った。恋に支えられ、無様に倒れるのだけは避けた。


「あっ、あっ、ちょっ」

「わっ…恋、危ない…」


だが、咄嗟に支えただけの恋はバランスを崩し倒れてしまう。蓮斗が庇おうとして恋の下になって倒れるが、そこはベッドの上。軽くバウンドして2人は落ち着いた。


ふぅ、と息を吐いた蓮斗だが、今度は違う問題が浮上した。


ベッドに寝転がる男女。

しかも庇おうとして蓮斗はしっかりと恋を抱き寄せているので密着度最大級。

気付けば恋の腕も首に絡み始めている。


「あっちょっ、恋、タンマ」

「…へ?」


更にくっつこうとする恋を蓮斗は止める。


「その、今のままこれ以上近づいたら…」


既に身体は完全密着。互いの膝が交差し、絡み合う程に。

そして、互いの顔も、既に吐息を感じ合える程に近づいているのだ。もちろん、そのままいけば自然と唇が合わさってしまう。


「だから、このままで…な?」


だが、恋は止まらなかった。

蓮斗を抱き寄せる力はいっそう強くなり、少し、また少しと近づいていく。


「れっ恋、ダメだって」


せめてもの抵抗で、顔を逸らす。頬に温かく柔らかい感触が広がる。


「私とのキスは…嫌?」


唇が頬から離れ、恋はそう言った。

更に続くその言葉は、蓮斗を責めるようだった。


「あの娘とは出来て、私とは出来ないの…?」


それを聞いた瞬間、蓮斗は時間が止まったように感じた。


その一瞬に、顔を戻されて唇が合わされた。

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