景―前編―〜理解者の役目〜
短いですが…。どうぞ。出来れば、出来ればでいいんで感想か評価をください。いい小説にするために…。
恋は、誰もいない席を眺める。主のいない席を見つめ続ける。
目を背けようとしても、思い浮かぶのは彼の事ばかり。
怖かった。あの時の彼が。
分からなかった。彼という人間が。
でも、確かにあの時まで一緒にいた。いてくれた。
同年代の友達がいない自分に、居場所を作ってくれた。
それは、確かに動機は普通ではなかったけれど、とても温かい場所だった。
現に、今はここが冷たく感じる。彼の身体も、温かかった。安心出来ていた。
それなのに…。
今は、嫌だった。
彼の傍に、いたくなかった。
だから、今はこれでいいんだ。
無理して彼の傍にいなくていいんだ。
それでいい。
それでいいはずなのに…。
何故、こんなにも冷たく感じるのだろう。
恋は机に突っ伏した。顔を上げていたら席を見てしまう。他の場所を見ても考えてしまう。
苦肉の策だった。
と、そこで教室の扉がガラガラと開く。
秋奈だけではない。見覚えのない女子も後ろからくっついてきた。
「…蓮斗は」
自己紹介を始める訳でもなく、先程の恋と同じように無人の席を見つめる女子。
恋は顔を上げて驚いた。女子の顔が青ざめていたからだ。
クラスの全員の視線を無視して、女子は叫んだ。
「蓮斗は…蓮斗はどこ!?」
恋は、鳥肌が立った。同性相手には初めて、戦慄を覚えた。
女子は、秋奈を問い詰めていた。
「蓮斗のところに連れていって!お願い!」
「…だが」
「お願いします!蓮斗を…蓮斗をあんな風にしちゃったのは私だから、私が理解者だから!だからお願い。お願いします!」
必死に秋奈に頼み込む女子の胸には、〔景〕と書かれたネームが着けられていた。