出会い〜始まりは問題から〜
はじめまして。初投稿となりますが…まだまだ未熟者ですがよろしくお願いします。執筆の遅さに定評あり(泣)
「レン君」
「………ん?」
レンと呼ばれた男―─蓮斗は、自分のベッドに寝転がりながら返事をする。
「起きないの?」
「…うん」
「なんで?」
「…休みだから」
そう言って蓮斗は体の向きを変える。朝の陽射しが瞼ごしにも感じられる。眩しいな、と思い仰向けになろうとした、その時。
「ぐぁっ!?」
全身(しいていえば腹部に集中して)に強烈な衝撃が襲い掛かった。反射的に目を開き、自分の体に今まさに膝蹴りをかました人物を睨みつける。そして叫んだ。
「何でお前は朝から俺の家に居るんだー――っ!!」
「まったく…一緒に住んでる訳でもないのに、何故こんな早くに…」
蓮斗は散々な状態となっているベッドを直しながら呟く。すぐ横には机の椅子に座っている女─―恋が、つまらなそうにくるくると回っている。
「で?今日はなんだよ」
「わかってるくせに〜」
回転を止めてピタッと蓮斗の方を向く恋。その表情は笑顔だが、見る者が見れば少したじろぐかもしれない。つまりは、とても好戦的な笑顔だった。
それを見て蓮斗は溜め息をつく。次の言葉が簡単に予想できるからだ。
「私と勝負しよう!」
屈託のない笑顔で言い切った恋。蓮斗は、また大きく溜め息をついた。
蓮斗と恋が最初に出会ったのは二ヶ月前。二年前に共学になったばかりの蓮斗の高校は、全校の三分の二が男子であり、しかも近所ではなかなかのガラの悪さで有名だった。
もちろん色恋ざたなんて期待できるはずもなく、色気のない高校生活を蓮斗は送っていた。そう…恋が来るまでは。こんなガラの悪い高校に転校してくる辺り(しかも女子ときた)普通の理由じゃないだろうとは思っていたが…そんな事を詮索してる暇はなかった。なんと彼女は転校早々停学に入ってしまったのだ。……しかも、暴力事件で。
信じられなかった。いきなり転校してきて、いきなり停学になるなんて。
百歩譲って男ならまだわかる。しかし恋は女で、しかも黙っていれば可愛いと思わせるような『女の子』な見た目の持ち主が、よりによって暴力事件で停学なんて…。
と、いうのが最初蓮斗が抱いた感想だった。
甘い。甘すぎたこの考え。いとも簡単に覆されるとは知らずに、蓮斗は問題の日を迎えてしまう。
その日は、恋が転校してきて2週間後。彼女は停学明け早々やらかしていた。
教室にあるのはぐちゃぐちゃになった机、椅子。その上に転がる男子生徒達。
「…は?」
これが蓮斗の第一声だった。しょうがないだろう、朝からこんな状況がいきなり目の前に現れたら誰だって困惑する。
しかし、そんな事など気にも止めない彼女は、教室の中心から出入口に向かって――つまりは蓮斗に向かって――こう言い放った。
「次はキミ?」
瞬間、鳥肌が立った。
この時すぐにでも教室から飛び出していれば、何もなかったかもしれない。
だがしかし、蓮斗は何気なく一歩を踏み出した。瞬間、恋が床を蹴る。3歩と少しでたやすく蓮斗の懐に入り込むと、笑みと共に右足を軸にして回し蹴りを出した。いきなりこんなことをされたら普通は食らってしまうものだが、蓮斗はそれを身をかがめてスレスレで避ける。そしてそのついでのように恋の軸足を払い除けたのだった。
「っ!?」
「悪いな」
当然の如く恋はバランスを崩して後ろに倒れ込む。
ここまでは蓮斗の思惑通りだったのだが、次の瞬間教室に鈍い音が響き渡る。恋の後ろに運悪く机があり、今の音は恋が派手に頭をぶつけた音だった。
「……ありゃ」
「あの机さえなければ…」
「なに?」
回想し終わると同時に今日何度目かの大きな溜め息をつく。
「いいからさ〜!私と勝負してよ!」
蓮斗は、またひとつ溜め息をついた。