第21話 行動派
ジョンはすぐに気絶するが、復活も早い。
30分くらいで起き上がった。
爺は、気絶するとしばらく復活しないのに。
「ハハハハハ
またまた、お恥ずかしいところを
見せてしまいました。
まさか、負けてしまうとは
全然思っていなかったので。
油断してしまいました」
ジョンが言い訳をしている。
「負けは負けよ。
約束どおり、わたしの奴隷になってもらうわ」
倫花が、事前の約束を言い出した。
口頭での約束なんて、あてに出来ないのだが。
「もちろんです。
わたしは、約束を守る男です。
倫花さんの奴隷なんて、
常に近くにいられる喜び。
光栄ですよ。」
ジョンは、やっぱり馬鹿なのかな?
喜んでいる。
「よろしい。
ジョン。
あなたは、組織で5番目に強いのでしょう?
まずは、命令として
私の仲間には迷惑をかけないこと。
わかった。」
倫花は早速、ジョンに命令する。
組織の上層部なのに、結構、難しいんじゃない。
「わかりました。
しかし、
さすが、私が惚れた方です。
私が組織の者で、その強さまで知っているとは。」
ジョンが素直に了承した。
少し、驚いた様子だったが。
「そのぐらい、当然よ」
倫花が、自分の力で知った口ぶりだ。
俺が教えてあげたのに。
「ところで、何故、いきなり
水着ショーを見に来て、倫花に惚れたんだ?」
俺は、気になったので聞いてみた。
「いや、実は、私の配下のワンとミックが
この国のことで、
怪しい感じだったので。
まあ、聞くのも面倒くさいし、
私に内緒で、楽しいことをしているのかと。」
「楽しいこと?」
「私って、上層部でも仲間外れの部類なので、
配下たちも私を仲間外れにして楽しいことを
しているのかと。」
「はあ。」
「まあ、暇なので、ひとりでこの国に来て、
SNSなどで調べていたのですが、
うちのシステムで抽出できない
株式会社のぞみ
というのが、結構、賑やかにさわがれており、
調べさせていただきました。」
「なるほど、暇つぶしですか?」
「はい。
ただ、うちのシステムで抽出できないように
する者など想定していませんでしたから、
興味もわきまして、
色々調べたら、倫花さんのSNSに当たって
会いたくなって会社に行ったのです。」
あら、ばれちゃったんだ。
別室にカツラと寝かせている高橋君が
やったんだけど。
しかし、行動派だな。
「しかし、会社に行ったら
社員旅行ということで
私は、場所を聞いて追いかけたのです。
そしたら、水着ショーをやっているでは
ないですか。
しかも、大きな精神エネルギーまで感じる。
最後には、精神エネルギーをぶつけられて
倒れてしまいましたが。
もう、
それで倫花さんにゾッコンです。」
「あの、観客の中にいたんだ?」
「はい。目覚めてみると、皆さんは
いなくなってしまっている。
途方に暮れてしまったのですが、
バスが止まっていたのを思い出して、
空から、同じバスを探し回ったのです。」
単なる馬鹿ではないのか?
思いつめると周りが見えないタイプだな。
「空を飛んでて
誰かに見られたりしなかったの?」
「相当、高度を飛んでいたので
望遠鏡でも使わなければ、わからないでしょう。」
なるほど。
馴れたものなんだな。
「で、組織には連絡するの?」
「何をですか?」
「いや、精神エネルギーをもった役員の
会社があるとか。
うちの会社がやっていることとか。」
「ああ、なるほど。
連絡した方が良いですよね。
この会社や、やっていることなど
絶対、みんな怒りますもん。」
何か、調子が狂うな。
出来れば、しばらく連絡しないで欲しいのだけど。
「ジョン、約束したでしょ。
私の仲間、つまり会社にも迷惑をかけちゃ駄目よ。」
倫花女王様が、ジョンに命令をくだす。
「わかりました。
バレたら、私が怒られて消されそうですが
倫花さんとの約束です。
連絡しません。」
ジョンって、本当に倫花に惚れこんじゃったんだな。
軽く言っているけど命がけじゃん。
「そうなの?
ジョンが消されては困ります。
だったら、連絡しても良いわよ。」
あら、倫花、許可しちゃうの?
「えっ?
だって、連絡したら皆さんが消されてしまいますよ。
倫花さんだけは、
何とかお願いできるかもしれませんが
それ以上のことは、わたしでも、止めることはできません。」
「いいんじゃない。ジョンでは物足りなかったし」
日向が強気の発言だ。
「そうです。わたしも奴隷を作るのです。」
琴美は、奴隷が本当に欲しいんだ。
「そうよ、いくら奴隷だって、
自由を縛ってはいけないわ。
心配しないで、ジョンの自由にしなさい。」
希美ちゃんが、それなりに良いことを言っている。
「なんか、調子が狂いますね。」
お前がな。
「しかし、わかりました。
ありがとうございます倫花さん。
この件は、私の自由にさせていただきます。
気が向いたら連絡しますし、
面倒くさかったら連絡しません。」
やっぱり調子が狂う。
なんか、緊張感が無いのだ。
「それで、これからジョンはどうするの?」
「私は、倫花さんの奴隷として
これから常に傍にいます。」
なんて健気な、おっさんだ。
見かけは、かっこ良いのに。
「ジョン。
あなたの気持ちは、わかったわ。
私たちの会社の入社を認めましょう。
あと、常に傍にいるなら、
私のアパートで寝泊まりね。」
倫花が怪しい笑みを浮かべてジョンにつげる。
倫花さん?男女が一つ屋根のしたですよ。
何をやろうとしているのですか?
「良いわよ、ジョンが良ければ入社を認めるわ。」
「私も。」
「また、男が増えたわね。」
他の役員達も、ジョンの入社を了承した。
本人の気持ちも聞かないで。
「ありがとうございます。
働いたことなどないので、色々教えて下さい。」
そうか、上層部ともなると働かなくても
生活できるんだ。
スゲー。
しかし、そりゃあ暇だよな。
「働いていたことがないの?
何を、いつもやって過ごしていたの?」
当然の疑問を日向が問いかけた。
「特に何も。
暇なので精神エネルギーを鍛えたりはしましたが。
勝手にお金は入ってくるし
身の回りのことは、
屋敷の者がすべてやってくれますし。
私たちは目立ってはいけないので。」
精神エネルギーを鍛えてはいるんだ。
自由な時間があるから、結構出来るな。
「へー。どんなことして鍛えているの?」
琴美が修行の方法に興味津々だ。
「色々ありますが、
必ずやるのは、
胡坐をかいて、浮いたり沈んだり。
結構、疲れるんですよ」
あら。俺と同じ。
「やって見て。」
希美ちゃんがリクエストした。
ジョンは胡坐をかいて
「こんな感じです。」
「大したことないわね。」
「私たちと同じくらい。」
「期待外れです。」
「私のが凄いかも」
「えっ?
いや、本気でやっていないので
本気出してやってみますよ。
驚かないで下さい」
ジョンが剥きになった。
確かにさっきよりは高速になった。
しかし、
「ジョン、もっと修行しなさい。
私の奴隷として恥ずかしくない程度には。」
倫花がジョンに注文する。
「いや。
そんなこと言われても。
本当に、驚かないのですね。」
「見てなさい。」
倫花が胡坐をかいた。
いや、ジョンに見せるほどまでには
成長していないでしょ。
ジョンだって大したものだ。
俺の半分くらいの速さだけど。
俺の場合は、
人の目で追えなくなってきているからな。
「いつも準備運動くらいでしかやっていないけど。」
倫花は
浮いたり沈んだりをやりはじめたのだが。
「・・・・・・・・・」
ジョンが驚いて固まっている。
そりゃそうだ。
俺も驚いている。
なんなんだ?
この成長の早さは。
ジョンよりも若干早い。
「こんな感じ。
まだまだ、誰かさんには敵わないけど。」
倫花が、俺をチラリと見た。
「もっと、すごい方がいるのですか?」
ジョンが驚いて問いかけた。
「まあ、それは内緒だけど。」
日向が俺のことを隠してくれた。
どうやら、役員たちは俺のことについては
内緒にしてくれているようだ。
ありがたいが、
何か、俺が小娘役員どもに守られている感じで
微妙な気分。
「いやはや。
すみませんでした。
皆さんの力を甘く見ていました。
しかも、倫花さんに益々惚れました。
組織に消されるなど心配していましたが、
皆さん、同じレベルなら
結構、
ナンバー3までは
良い勝負が出来るかもしれませんね。」
ジョンが組織の内情を話してくれた。
「へー。トップは強いんだ。」
希美ちゃんが、自分よりも強いであろう相手に
敵意をむき出しにしている。
「いや、別格なのですよ。
力の底が見えない。
彼が太古に我々を集めて
組織を作ったようなものですから。」
「太古って、どういうこと?」
日向は、小さいことでも気づく。
ジョンの言葉にすかさず、ツッコミをいれる。
「あれっ。
皆さんは生まれ変わりをしていないのですか?
それで、そこまで強く。
まあ、それはどうでも良いですね。
これは組織の絶対秘密事項なのですがね。
我々、組織の5人は太古から生まれかわりを
しているのです。
そして、精神エネルギーを
大きくしてきたのです。」
絶対秘密事項を簡単に話してしまうジョンって。
しかも、役員小娘たちの強くなって理由は
どうでも良いとは。
本当に適当なおっさんだ。
しかし、普通の人には信じられないだろう。
「すごいじゃない。
ジョン。
生まれ変わりの方法を教えなさい。」
倫花は信じています。
「私にも」
「私にも」
日向と琴美も興味津々だ。
「いや、
方法というのは、
死ぬ直前に
自我と精神エネルギーに
記憶を強く詰め込むのですが、
ほとんどの記憶は無くなります。
強い記憶だけが残るのです。」
へー。
そうなんだ。
爺もやっていそうだけど。
爺は何で認知症みたいになったんだ。
「太古って、どのくらい昔なの?」
俺は少し気になって聞いてみた。
「そうですね。
我々4人に関しては、3000年以上、
トップはわかりませんね。」
なるほど、爺もそのくらいなのかな?
当時、精神エネルギーの流行でもあったのか?
「何回、生き返ったのよ。」
倫花がツッコンだ。
「数えきれないですね。
あっ。
でも、過去に付き合ってきた女性の中で
倫花さんが最高ですよ。」
「付き合ってはいないけどね。」
倫花が、褒められたのに冷たく否定した。
「いやいや。
奴隷も付き合っているうちのひとつです。」
ジョンは強い。
そこに、部屋の電話が鳴った。
エドワードが電話に出る。
「宴会の用意が出来たそうです。
行きますか。
私も、子供達を誘って急いで
行きます。」
そうだった。
子供たちは、社員達が遊んでくれていたのだ。
部屋は希美ちゃん達と一緒だが
酒呑みのつきあいと、プールを天秤にかけて
子供たちはプールを選択したのだ。
「ジョン、あなたも宴会に参加よ。
みんなに紹介しなくちゃ」
倫花がジョンを誘った。
「ありがとうごじます。
宴会というのは初めてかもしれません。
お酒も好きなので楽しみです。
結構、私、お酒が強いのです。」
ジョンも宴会に興味があるようだ。
しかし、お酒が強いとか、
言ってはいけないセリフを吐いてしまったな。
希美ちゃんの餌食にならなければ良いが。
そして、俺たちは宴会場に向かうのだが
未だに俺はサングラスをしている。
うん?
何かを忘れている気がするが
色々あって、思い出せない。
まあ、いっか。
宴会場は、座敷だ。
上座に役員4人が座る。
下座2列に社員達が並んで座るのだが、
宴会は、昼間水着ショーに参加していない
他の男社員達も30人程度参加している。
男女が交互に並ぶように。
あとは、俺とエドワード、子供達2人、
そして新入社員のジョンだが、
一番下座に座っている。
俺が席を決めたのだが
浴衣姿の役員達から離れたかったのだ。
おかげで、サングラスを今は外している。
しかし、この会社には役員だけでなく
奇麗な女性たちが多い。
どうやら社員達はプールで遊んだ後に
風呂に入ったようだ。
やはり、石鹸とシャンプーの匂いが
部屋に充満している。
男性社員達も鼻の下が伸びているようだ。
「和也さん、カツラさんと高橋君はどした?」
ユウランが俺に聞いてきた。
ユウランも浴衣姿だが、色気を感じない。
ホレホレとばかりに胸元を強調するのだが。
しかし、忘れていた。
カツラと高橋君は
別の部屋で寝かせていたのだ。
起こさなかったら、めちゃくちゃ怒られるだろう。
俺は急いで、カツラと高橋君の部屋に行き
起こした。
「ありがとう。和也。
この恩は忘れないぞ。」
「本当に感謝です。和也さん。
このまま寝ていたら、一生後悔するとこでした。」
2人は、俺に、ものすごく感謝をしてくるが、
忘れていた俺は、罪悪感でいっぱいだった。
まあ、なんだかんだで、全員揃い
宴会の開始だ。
司会は、いつもの日向。
「それでは、これより宴会をはじめます。
挨拶とか面倒くさいので乾杯から始めます。
乾杯の音頭は、希美社長、お願い。」
「ご指名ですので、
みなさん、グラスをもって。
準備は良いかしら?
それでは、今日は飲み放題、食べ放題よ
仕事は忘れてね。
それではカンパーイ」
「カンパーイ」
希美ちゃんらしい乾杯の音頭だ。
堅苦しい挨拶や、決まったセリフの乾杯音頭も
良いかもしれないが。
みんなに語り掛けるとき、伝えるのは言葉でなく、
気持ちだ。
カツラも楽しそうだ。
役員たち相手では倒れてしまうが
社員相手なら大丈夫そう。
風呂場で大事なところを洗っていた
成果が出ればよいのだが。
高橋君も、下座でも上座の日向に
近いところに席を用意してあげた。
役員達もさすがに宴会では
精神エネルギーを控えている。
高橋君は、日向を近くで見ているだけで
幸せなのだ。
日向をつまみに、呑んでいる感じ。
エドワードの子供達も楽しそうで何より。
子供達だけ別メニューなのだが、
「おいしいね。」
「お父さんの料理もおいしいけど、
また違った感じでおいしい。」
「そうかい。良かった。
今日のメニューをお父さんも作れるように
なるから、
今度、作ってあげるね。」
エドワードは子供達に甘い。
しかし、自分には厳しい。
やはり、胡坐をかきながらも1mm程度、常に
浮いている。
しかも、近くのジョンにバレないように。
「ジョン。前に来てちょうだい。」
倫花が、ジョンを上座に呼んだ。
そうだった。
新しく社員になったジョンを皆に
紹介する予定だった。
ジョンは、馬鹿っぽいところを
少し少しも見せず
紳士な雰囲気で前まで移動した。
女性社員達の視線が熱い。
ジョンも外見だけなら、かっこよいのだ。
「みんな。紹介します。
ジョンです。
今日から社員になって、
皆さんと一緒に働いてもらう仲間です。
ジョン、自己紹介して。」
倫花が、みんなにジョンを紹介した。
「こんにちは。
ジョンです。
倫花さんの奴隷です。
不束者ですが、宜しくお願いします。」
ジョンが、嫁入りのような挨拶をした。
会場は、笑いと拍手で囲まれた。
どうやら、社員達にも歓迎されたようだ。
そのまま、ジョンは役員達につかまり
色気に囲まれ呑まされ続けるのだ。
かわいそうに、また犠牲者が増えるだろう。
俺は、役員達から一番離れたところで
安心して、ゆっくり呑んでいるのだが
社員達が、俺にお酒を次から次へと
注ぎに来る。
「和也さん。頑張っているね。
この会社が、こんなに大きくなって
有名になるとは思いませんでしたよ。」
俺が入社当時にお世話になった真紀と優希だ。
当初は男か女かわからなかったが女だったようだ。
おそらくだけど。
「そうだね。
みんなのおかげじゃない。
真紀さんと優希さんも、今では支店長で
頑張っているよね。
着実に仕事や社員が増えているし。
大変ですか?」
「和也さんの力が大きいわよ。
大変だけど、
私たちも自分たちの力を試せて
楽しいわよ。
役員達も、やりたいようにやらせてくれるし。」
真紀が笑顔で答えてくれた。
少し、ドキッとした。
修行をしても、未だに駄目だ。
この2人も美人だ。水着ショーにも出ている。
「そうですか。
良かった。」
「和也さんは、未だに大変そうね。
次から次へとプロジェクトを押し付けられて。」
優希が心配してくれた。
「わかってくれる。
そうなんだ。
何故か、相談相手になって、
気が付くと、押し付けられているんだよ。」
俺は、わかってくれる仲間がいて喜んで話した。
「まあ、わかりますよ。
それでは、また、今度ゆっくりと」
2人は、あまり俺の愚痴を聞きたくないようで
逃げるように、エドワードに注ぎに行った。
というより、
実はエドワードに注ぎに行くために、まずは
俺に注ぎに来たのか?
そんなんで、たくさんの人が俺に
注ぎに来てくれた。
思えば、この2年で多くの仲間が増えた。
希美ちゃん風にいえば、家族かな。
社員だけでなく、あちらこちらに。
働くと自然と知り合いが増えていく。
同じ目的に向かうのであれば仲間だ。
前なら、小娘役員4人だけを守りたいという
思いだった。
4人を守ろうとするだけでも必死だったが。
今では、仲間が増えたが、それ以上に
力も大きくなった。
目の見える範囲なら、皆を守れるくらいには。
そんなことを思いながら、上座に目をやると。
やはり、
ジョンがパンツ一枚になって呑まされている。
楽しそうだが、
俺は知っている。
あの蛇の生殺し状態の地獄を。
そして、案の定、ジョンは最後には倒れた。
宴会は無事に終わった。
社員同士、部屋で呑む者たちもいるようだ。
カツラも何故か社員の部屋に遊びに行った。
浣腸マン改めカツラは、本日をもって
「セクハラ魔王」に名前が変わったようだが。
高橋君は、日向の近くで倒れている。
また、懲りずに日向の近くに寄って
日向の精神エネルギーで倒されてしまったのだろう。
俺は倒れた高橋君を
エドワードはパンツ一枚で倒れているジョンを
それぞれ担いで、部屋に戻った。
布団が4人分轢かれている。
やっと寝れる。
・・・・・
はずはない。
やはり、役員小娘4人は酒をもって
俺たちの部屋にやってくる。
しかも、エドワードの子供達も連れて。
もう、子供は寝る時間でしょ。
「今日ぐらいは、思い切り呑まなくちゃ」
希美ちゃんは、まだ元気いっぱいだ。
別の意味で妖怪だな。
いつも、これくらい呑んでいるでしょ。
俺は、心の中でつっこむとともに、
浴衣姿を真近で見てヤバイと思い、
すかさず、サングラスをかけた。
「あらあら、精神エネルギーで攻撃しませんよ。
サングラスなど外してはどうですか?」
日向が俺に声をかけてきた。
「いやいや、そちらよりも自分は
浴衣姿に弱いので」
俺は正直に答えた。
「そうですか。仕方ないですわ。」
倫花は、そう言いながら、精神エネルギーで
俺のサングラスを外そうとする。
俺も、抵抗したので大丈夫だが。
しかし、本当に強くなっている。
しかも、器用に操ることも出来ている。
俺は感心した。
他の3人も同じくらいなのだろうか?
すると、
「私もやるわ」
「私も協力するわ」
「甘いわ。和也君」
「私たちも」
他の3人と子供たちまでが
俺のサングラスを外そうと参戦してきた。
俺は、6方からの攻撃を何とか耐えるのだが、
サングラスがガタガタと俺の顔で揺れ動き
壊れてしまいそうになる。
「エドワード、助けて」
俺は、エドワードに助けを求めた。
「すみません。和也さん。
私も、役員さん達には逆らえないので。」
エドワードが断ってきた。
頼りにならない奴。
ここは・・・・・・
「爺、頼む。」
「・・・・・・・・・・」
そういえば、
爺は、さっきの浴衣姿で気絶していた。
エドワード以上に頼りにならない。
そして、俺は、サングラスを壊れないように
そして、外されないように防御していた
のだが、
一瞬、隙が出来てしまい、
サングラスを壊されてしまった。
「負けました。どうか精神エネルギーの攻撃だけは
勘弁してください。
どうかお願いいたします。」
俺は、素直に負けを認め、嘆願したのであった。
しかし、強くなりすぎだぞ。
小娘4人も、エドワードの子供達も
成長が早すぎだ。
エドワードも驚愕しているだろうと
エドワードを見ると
何故か、御満悦。
「エドワード君。
もしかして、君、俺に内緒で
皆に修行を教えてないかい?」
「内緒にしていたわけではないのですが、
毎日のように仕事終わりに頼まれまして。
私も早く自分の修行相手になって欲しくて、
修行のお手伝いをしていたのですが
私もビックリするほど成長が早くて。」
成長が早くてじゃねーよ。
エドワードは色気に耐えられるから良いが
俺なんて、直にイチコロなんだぞ。
まあ、しかし、エドワードも小娘4人も
ジョンよりも強そうだ。
組織の上層部とも良い勝負をしそうだ。
ワンやミックが相手でも全然心配ないだろう。
少し前まで、戦力は組織が全然上だったのに
今では、こちらの方が上じゃないのか?
まあ、トップがどのくらい強いかわからないけど。
「しかし、よくぞ、ここまで強くなったね」
俺は本心を小娘達にぶつけた。
「いえいえ、まだまだです。」
「いったではないですか。和也さんやエドワードを
思いどおりにすると。」
「エドワードは射程圏内ね」
「私は単に和也君より強くなりたいだけ。」
目的は変だが、まあ良いか。
俺は、諦めて、小娘達からなるべく離れて
部屋の端っこに座るのであった。
エドワードの子供たちはエドワードの両脇に
座り、
小娘役員は高橋君とジョンを端っこに避けてから
自分達の部屋のように、ど真ん中で
布団の上で飲み会をしている。
「和也君、冷蔵庫からつまみ出して」
チクショー。
結局、いつもと変わらないじゃねーか。
そう、そして、結局
この部屋でみんな寝てしまい。
俺だけ、悶々として寝れなかったのであった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
朝になると、みんな起きだしてきた。
その中で、ジョンと倫花が朝の挨拶をしている。
「おはようございます。倫花さん」
「体は大丈夫?
おはようジョン」
「少し、二日酔いですが大丈夫です。
精神エネルギーでいくらか回復しました。
昨晩は、醜態を見せてしまいすみませんでした。
ついつい、楽しくて呑み過ぎてしまったようです。」
「いいのよ、あれで。
お酒は楽しく飲むのだから。
希美と勝負をすれば、だいたい、あーなるの」
「いやはや、そうですか。
しかし、皆さんとの会話は楽しかった。
今まで感じたことのない気持ちでした。」
「それは良かったわ。
これから、もっと私達と楽しめれば良いわね。
まあ、私も、あなたから楽しませてもらうけど」
倫花が言うと、何故かいやらしい。
「頑張ります。
それでですね、話は変わるのですが、
私、組織を抜けることにしました。」
えっ?
ジョンって本当に行動派だね。
馬鹿が付くほど。
「そうなの?
大丈夫なの?
組織抜けたら、狙われるんじゃない?」
「はい。
狙われます。
先ほど、NO3とNO4に連絡したら
こちらにやってくると言ってましたから。
恐らく、私を消しに来るのでしょう。」
「どうするの?」
倫花が心配そうに聞く。
「どうしましょう?」
ジョンも倫花に聞く。
本当にジョンは馬鹿なのか?
「いいじゃない。みんなで歓迎してあげましょう」
日向が聞いていたようで、簡単に言う。
「そうです。
もしかしたら私の奴隷になってくれるかも」
琴美は、本当に奴隷が欲しいようだ。
琴美の奴隷のイメージってどんなんだろう?
「また、飲み会できるね。
どうする?
和也君の部屋?
エドワードの部屋?」
希美ちゃんも、まったく緊張感がない。
「すみません。
子供達がいるので、出来れば和也さんの部屋で」
最近、エドワードの俺に対する尊敬感が薄れた気がする。
「いつごろ、やってきそうなの?」
俺はジョンに聞いてみた。
「今、S国にいるようなので、
恐らく、今日の夜には着くのではないでしょうか?」
当事者のジョンも緊張感がない。
「じゃあ。今日、夕方6時に和也君の部屋に集合」
希美ちゃんが飲み会モードだ。
昨晩、あんなに呑んだのに。
しかも、俺の意見は聞いてくれない。
まあ、アパートの部屋に置いてきた子猫のランも心配だし
俺の部屋に集まるのは良いだろう。
ランのご飯やお水は、隣に住む信一に任せてきたが
心配で早く帰ってあげたい。
組織のNO4とNO3が来ても
これだけのメンバーがいれば怖くないし
逆に、相手が可哀そうになるのだが。
俺たち、相手の実力が大体把握できている。
それに対して、相手は、俺たちの実力を知らない。
力が強くなると、情報収集が疎かになってしまうものだ。
小娘たちなど、力をつけても
スパイ活動をしっかりやっている。
というか、情報収集力がハンパでなくなっている。
選挙予想まで正確に把握している。
予想では、ギリギリで与党の勝利だが
左派寄り議員が発言力が増えて保守議員の発言力が
弱まるとか。
経済はT国に傾斜して、安保はU国寄りの政策に
なるため、矛盾が生じて政権が安定しないと
する予想までしていた。
少し前の小娘達なら、理解不能だろうが
勉強もしているのか、自分たちで情報を元に
予想を立てている。
因みに、今回、水着の新素材も小娘達からの
情報を元に俺が中小企業にアイディアとして提供
したのだが、グラフェンという新素材技術の情報を
参考に新しい新素材を開発し、
シルクと混ぜ合わせることで出来た。
小娘達も恐ろしいが、中小企業の研究力も恐ろしい。
mRNAワクチンも情報を収集している。
大手製薬メーカーが相当暗躍しているようだ。
というより背後にいる大株主たち。
大金があちらこちらで動いているらしい。
昔から研究されてきた技術だが、今回のウィルス騒動で
世の中に出てくることが出来た。
逆に言うと、今回のウィルス騒動が無ければ、
世の中に出てくるのは、まだまだ先であったであろう。
悪い言い方をすれば、いまやっているワクチン接種は
大規模な人体実験であり、利権の確保だ。
しかし、
今回のワクチンのRNAはTLR7という分子に結合して
ウィルスに対する免疫を活性化させるだけのものだが、
研究が進めば、ウィルスだけでなくガンやその他の
病気治療にも応用が利くであろう。
そうなれば、医療技術が大きく変わることになる。
それはそれで、革新なことだ。
と、同時に悪用されれば恐ろしい技術にもなる。
証拠を残さずに、人体に注射で
メッセージを伝えることにより
様々な影響を与えることが出来るのだから。
エドワードが言っていた人口削減計画に
利用することも出来る。
組織が理想とする世界に多くの人間はいらないのだ。
まあ、世の中の多くの問題は人口の多さに
起因するところも大きいから、そう考えるのも
納得だけど。
俺の周りではやらないでほしい。
しかし、技術の進歩をもう少しゆっくりできないものか?
核技術にしろ、課題はたくさんある。
課題はあるのに、経済が絡むと前に進もうとする。
課題の先送りだ。
今回のワクチンも課題があると俺は思っている。
メリットが大きいときは、
大抵、デメリットも大きいのだ。
そして、mRNAワクチンにも課題があるからこそ、
中々、世の中に出てこれなかったと俺は思っている。
俺も専門家ではないからネットやマスコミに情報
が出てこないと、わからないのだが、マスコミも
その課題があったときは、自身の正義として報道してほしい。
そんなことを俺が考えていると
「和也よ。また、弱い奴が来るのか?」
爺も緊張感がなく、残念そうに俺の頭で問いかけた。
「いや、想定外の強い奴が来るよりましだよ。
組織のトップなんて俺達だって強さがわかっていない。
俺は、トップが来ないだけでも安心しているんだけど」
「どうせ、小娘達にもっていかれるのじゃろう?
儂らの出番はなくなったのじゃ。」
「そうだね。俺たちの出番は無いかも。
まあ、危険になったら手は出そうと思うけど。」
「それよりも、
儂は、組織よりも小娘達の方が恐ろしいわい」
「俺もそれは同感。」
爺とおれは、頭の中で会話した。
確かに、いま、最大の恐怖は小娘達がこれ以上に
強くなることだ。
しかし、もう俺には止められない。
そして、俺たちは組織のNO3とNO4を
歓迎する準備をするのであった。