第20話 5番目の男
何故なんだ?
何故こうなった?
やはり、誰にも内緒という言葉ほど
信頼できるものは無い。
ということが、わかった。
「違うのよ。和也君。
私は和也君のこと何も話していないわよ。
約束を守る女だもん。
食事を作ってくれなくなるのは困るし。」
言い訳は済んだか?
希美ちゃん。
希美ちゃんが精神エネルギーを使いこなし
体を浮かせるようになったのは良い。
だが、しかし。
何故、他の役員たちが役員室で
みんな浮いているのだ?
「ただ、体を浮かせるようになったから
みんなに自慢しただけなのよ。
そしたら、みんな教えてって
しつこいから。」
いやいや、
希美ちゃんが教えて
出来るようになるものなの?
そんな、誰でもできるものなの?
「和也よ。儂にもわからん。
落ち込みそうな気分じゃ。
儂が長きにわたって修行してきたものが
こんなに、あっさりと。」
爺が俺にぼやいてくる。
そりゃそうだ。
俺も、エドワードも爺の助けがあったから
出来たのに。
希美ちゃんをはじめ、この小娘3人は
爺の協力が無くても出来てしまうのだ。
もしかして、もともとあった才能とか?
「まあ、考えられるのは、
長きにわたって和也や儂と接していたから
何らかの影響があった可能性もあるがのう」
「そうか。
結構、俺も精神エネルギーとかぶつけちゃったり
してたのも、あるのかな?」
俺は爺と頭の中での会話を終えて。
「希美ちゃん、皆さん。
すごいですね。
浮いていますよ。」
「和也さんだって、できるのでしょう?」
日向が俺に問い詰めてきた。
「いやいや。僕は浮かべませんよ。」
「エドワードの子供達が言っていました。
うんこマンが、
高層ビルの屋上までビューンと飛んだと。」
倫花が、さらに俺を追い込む。
「しかも、すごい高速で」
琴美まで。
エドワードの子供達との約束なんて
こんなもんだ。
確かに、希美ちゃんは約束をやぶっていない。
「いやいや、子供たちの勘違いですよ。
子供だから、大げさになってしまっているのですよ」
俺は嘘を貫くタイプだ。
「エドワードにも問い詰めたら、
和也さんは、人間の領域をこえているとか
わけのわからないことを言っていましたけど」
日向がグイグイ攻めてくる。
しかし、日向とエドワードは仲が良いのかな?
エドワードも日向には結構話してしまうのか?
いや、きっと、子供たちの責任を
自分で被ろうとして、共犯者になったのか。
「一応、私たち、スパイなので。
情報源が確かかどうかはわかりますし、
裏もとっています。」
倫花も、グイグイ攻めてくる。
「話してしまった方が、楽になりますよ。」
琴美は、俺を犯罪者扱いだ。
仕方ない。
ここは必殺「開き直り」だ。
「フフ。
ハハハハハ。
バレてしまっては仕方がない。
私の真の姿を見せてやろう」
俺は、何故か悪役のように小娘たちに伝えた。
そして、一瞬で体を浮かし
希美ちゃんの後ろに移動した。
「うそ?信じられない」
日向が驚いた表情で叫ぶ。
「グッ。まさかここまで早いとは」
倫花も、悔しそうな表情で語る。
「悔しいですね。私たちでは足元にも及ばない。」
琴美も、理解できたようだ。
「まあ、みなさんは私より才能がありそうだから
毎日修行すれば、このくらい出来るようになりますよ。
私なんて、何年も毎日修行していたのですから」
俺は、小娘たちが落ち込むのを和らげようと語った。
まあ、エドワードくらいにはなるかもしれないが
俺レベルになるには、中々難しいだろう。
なんせ、俺には修行相手の爺がいるから
修行の内容にハンデがあるのだ。
まあ、毎日フルマラソンするくらい
めちゃくちゃつらいけど。
「何で、何年も毎日修行してたの?
何で、出来るようになったの?」
無邪気な希美ちゃんが俺に聞いてきた。
お前たち小娘の色気に負けないように
修行していましたとは言えない。
組織から小娘達を守るために
修行していましたとも恥ずかしくて言えない。
爺の存在も絶対言えない。
さて、どうしよう?
ここは必殺「適当な回答」だ
「希美ちゃんも知ってのとおり
俺は漫画やアニメが好きです。
それで、自己流で超能力みたいなのを
やってみたら、できちゃって
それで、面白くて、修行をしていたんです。」
「へー。そうなんだ。」
人に聞いといて、必死で答えたのに
希美ちゃんは、あまり興味のない様子。
「でも、みんな浮けるようになって
これってすごくない。」
倫花が興奮して話してくる。
「そうね。でも、誰かにバレたら
見世物になってしまう。
これは、誰にも言えないわね。
和也さんも、だから黙っていたのでしょう?」
日向が冷静な判断をしてくれる。
「残念。自慢したかったのに」
琴美は少し残念そうだ。
「そう、この能力は人に自慢するものでは
ないんだ。
力にうぬぼれて、良いことは無いからね。」
俺は希美ちゃんに目を合わせて話してやった。
「うぐ。」
希美ちゃんが悔しそうだ。
ザマーミロ。
そして、俺は冷静に考えて
「実は、組織には、この力の大きい奴らが
たくさんいるんだ。
だから、良ければ毎日修行しておいて
損は無いと思うよ。
まあ、命が狙われることは無いかと思うけど
護身術って感じかな。」
俺はみんなにさりげなく修行して強くなるように
促した。
「いわれなくとも、エドワードや和也さんに
負けているのは悔しいのです。」
結構、日向は負けず嫌いなんだね。
「そうですわ。エドワードや和也さんより
強くなって、私の思いどおりにさせたいです。」
琴美は違う方向でやる気が出ている。
「わたしだって、皆に負けたくない」
琴美もやる気だ。
「それじゃあ。毎日、朝のミーティングは
修行の時間にするのはどう?」
希美ちゃんがアイディアをだしてきた。
「それは駄目です。仕事は仕事」
日向にすぐに却下された。
「それぞれ、修行した方が面白そうよ。」
倫花がみんなに勝負を挑んできた。
「そうね。負けないわ。」
琴美も応戦だ。
まあ、良い感じにやる気が出てくれた。
少し、修行の仕方をおしえてやるか。
俺は、そう思い、胡坐を組んだ。
「見ててください。
こんな、修行方法があります。
私は毎日これをやってますがね。」
そして、高速で浮かんだり沈んだりして
修行方法を披露してやった。
「やだ。気持ち悪い。」
「本当に人間を超えているわ」
「こんなの出来るの」
「簡単に出来そうね。」
4者それぞれ、違うコメントだ。
まあ、予想していなかったが、
役員たちが少しでも強くなれば
俺も少し安心できる。
良しとしよう。
爺はまだ少し落ち込んでいるようだが。
「和也よ。
お主、忘れていないか?」
「えっ?何を」
「小娘たちの精神エネルギーが大きくなれば
それだけ、これからの修行もつらくなるぞ。」
「あっ。そうだった。
ただでさえ、色気攻撃に負けそうなのに
精神エネルギーがおおきくなったら、
精神が崩壊してしまうかもしれない。」
「そうじゃ。
儂など、気絶どころか死んでしまうかも
しれぬぞ。」
俺と爺は、頭の中で会話しながら、
今後の対策を必死に考えるのであった。
しかし、そこに更なる問題が発生した。
「あと、今年の社員旅行は海に決定しました。
エドワードと和也さんも強制参加ですよ。」
日向が、俺に報告してきた。
「当社が支援する水着も試着披露する予定です。」
倫花がいやらしい表情で報告する。
そうだった。
登録社員のデザインした水着を当社が支援しているのだが
材質を、俺が任され、
中小企業に相談したら、あっというまに有機素材で
肌触りが良く、強くて伸縮性のある
試作品を作ってしまった。
しかもシルクだ。
水に弱く、汗にも弱い、
変色もしやすくて、とても水着には合わないはずなのに。
改良をして出来てしまった。
あとは、コストの問題だが、
どうしようもない。
石油の残渣物から作られた安い水着に対抗できるわけがない。
良質、高価格でブランド販売することになったのだ。
万が一、売れれば、蚕の養殖もやるしかないか。
「女性社員には、無償で水着を与えています
日向が、広告宣伝費で経費に落とせるというので。」
琴美が説明してくれた。
なるほど、ただの旅行ではなく
水着の営業広告も兼ねていると。
いやいや違う。
なるほどではない。
旅行までに、今以上に小娘たちの精神エネルギーが
大きくなってしまっていたら。
考えただけでも恐ろしい。
「皆さんも水着を試着披露するのですか?」
俺は恐る恐る聞いてみた。
「当たり前です。」
4人同時に答えられた。
そりゃそうだよね。
組織に加えて、不安な要素が増えた気がした。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「エドワード。
相談があるんだけど。」
俺は、T町を歩きながらエドワードに
話しかけた。
「和也さんが私に相談?
珍しいですね。
どうしたのですか?」
「今度、社員旅行は海らしい。
しかも、女性社員も役員も水着姿を披露するらしい。」
「すばらしいじゃないですか。
うれしくないのですか?」
「いや。うれしい。
でも、役員どもの精神エネルギーが
日々、大きくなっている」
「そうですね。
私も、感じていますが
悔しいぐらい成長が早いです。」
「以前に、エドワードの前で試したけど
精神エネルギーを異性にぶつけると
とんでもないことになる。
俺は、役員どもの精神エネルギーと
色気攻撃を喰らったら
死んでしまうかもしれない。」
「そんなことはないでしょう。
私は全然平気ですよ。」
「そこだ。
何故、エドワードは大丈夫で
俺は駄目なのか。
それを相談したかったんだ」
「それを私に聞かれても。
ただ、役員の方々に関しては
あまり、女性として意識していないのが
原因かもしれませんね。」
女性として見ていない。
そんな技があるのか?
目の前に胸があって、
あれがこれで、これがあれなのに。
相談する相手が悪かった。
この分野においては、
俺には到達のできない領域に
エドワードはいるのだ。
「そうか。
俺も努力してみるよ。
死ぬかもしれないけど。」
俺は諦めた気持ちで、スタートアップの
IT会社にたどり着いた。
「佐藤さん。どうですか?」
「あっ。和也さんとエドワードさん
お世話になります。
順調ですよ。
システム自体はそれほど複雑ではないのですが
入力するデータ量が多いので
もう少し、時間を下さい。」
「急がなくても大丈夫です。
テストをしっかりやってもらってから
導入しますから。」
「承知しました。
しかし、本当に感謝していますよ。
私たちのアイディアに投資していただけて。」
「いやいや、本当にタイミングが良かった。
佐藤さんがうちの登録社員で、アイディアを
出してくれた時には、嬉しかったですよ。」
「私たちも、この会社のために役に立ちたいと
思っていましたし、
前から温めていたアイディアを披露出来て
しかも、認めてくれたのは本当に感謝です。」
今回のモデル事業の要となるシステムを
お願いしているのだ。
地域で、経済も物流も回す。
つまりモデル事業の基本は地産地消だ。
そこに必ずついてくるのが、お金の流れだ。
国や世界の動向に影響されずに、
地産地消の流通ができるようにしたい。
そもそも、お金とは物々交換の代わりとなる
道具だ。
大根と人参を交換すれば流通はそれで完了。
そして、食べてしまえば何も残らない。
ただ、大根で家を買うのは難しい。
大根は大量に買っても腐ってしまう。
あと、大根で人参も白菜もお米も買いたいときなど。
そんなとき、お金という道具があれば便利だ。
だから、道具として使っているだけなら便利だし、
物はいつか無くなるので、
実際は世の中の
お金は、それほど増えていかないはず。
しかし、現在社会では利息や為替、投資などがあって
お金はどんどん増えていく。
食べ物はたくさん貯蔵しても増えないどころか
腐って無くなってしまうが、
お金は、利益がでるところに貯蔵しておけば増えるのだ。
まあ、不思議な話だが仕方がない。
そして、このお金に各国や企業が一喜一憂して
振り回されている。
おそらく、組織の最終段階は通貨の支配だろう。
デジタル通貨か。
今は試験段階だが、
基軸通貨もなくなるかもしれない。
そして、全てが通貨の全てがデジタル化されれば、
個人情報を管理することも出来る。
国としては税金徴収など良いかもしれないが、
その国も組織に管理されてしまうだろう。
まあ、そんな思いもあって佐藤君のアイディアを
活用しようとしているのだが。
要は、大昔の物々交換の原点に戻るだけなのだが。
例えば地域の作物の出来量で、仕入高などの価格が
勝手に決まるのだが、そこで働く者の外注費も
勝手に連動して地域デジタル通貨が発行される。
大量に取れれば外注費も安くなるが、食料品も
安く購入できるのだ。
給料にしないのは、労働基準法などの壁があるからだ。
農業以外の様々な仕事なども同様だが、種類が多いので
佐藤君が大変なのだ。
システム的には難しくないのだが。
農業については、有機農業に変更しているので
人手が必要なのだが、小遣い稼ぎ程度で多くの人たちが
手伝っている。
このシステムは、そんな時にも非常に有効なのだが、
これから、自由貿易が加速化して安い農産物が入って
きても、影響を受けないことを得意としている。
まあ、有機野菜を食べ馴れると安くても外国産の
野菜などは食べないようになっているようだが。
そのおかげで、エンゲル係数は高い。しかし、
それ以上に、電気、ガスなどのライフラインが安い。
あと、地域デジタル通貨を利用すれば地域においては
安くサービスを受けることが出来る。
簡単に言えば、地域で生まれた通貨を地域で消費して
回しているだけだ。
ある程度、流通が広まれば増やす必要もない。
最初の信頼投資はエドワードのおかげだが。
通常の通貨と地域デジタル通貨の2種類を扱うようだが
混乱は無いだろう。
毎日、お得な地域券を利用しているようなものだ。
つまりは、ライフラインや衣食住は地産地消を強めて
地域デジタル通貨で回す。
他界に影響されない仕組みを試みて、
地産地消で賄えない部分は通常の通貨で回す。
まあ、地域の人は
これまで以上のゆとりはできるはずだ。
そんなんで、T町のモデル事業は進んでいるのだが、
こんなのが広まったら、
絶対、組織は動いてくるよな。
「エドワード。
なんか、うまくいっちゃっている感じが
するのだけど。」
「そうですね。
うまくいきすぎてしまってますね。」
「組織は動くだろうかね?」
「組織は、動くでしょうね。」
「やっぱり。
まだ、核ミサイル撃ち落とせるほど
強くなっていないのだけど。」
「ハハハハハ
まさか。核ミサイルなんて
しばらくは、ありませんよ。」
「あら。しばらくですか。
それでは、何とかそれまでに強くならなくては」
「何か、和也さんが言うと
核ミサイルを落とすというのも冗談に
聞こえなくなってきますよ。」
ハハハ
冗談ではないのだが。
大国同士で核戦争は無いだろう。
ただ、大国と小国ではありえる。
核ミサイルは抑止力なのだ。
持っていない国は抑止されない。
まあ、この国で2,3発持っていても
大きな大陸相手では意味が無いだろうが。
「なあ。エドワード。
俺はこの国の自衛隊というのを尊敬している。
武道に通じるものがあるかもしれないけど
専守防衛だ。
身を守る、大切な人を守るために強くなる。
ハンデを背負っての命がけの訓練や防衛だ。
そこらの他国と緊張感や練度が違う。
だから強い。
強さは、武器や性能だけではないんだ。
その精神力はすごいよ。
まあ、いくら達人集団でも
防衛の限界はあるけどね。」
「そうですね。
わたしも同感です。
他国には無い強さです。
他国では
自主防衛という名のもとに攻撃力を増加していく。
資本家の思いどおりに。
この国では、憲法改正が盛んになってきましたが
どうなることやら。」
「うん。
色々な考え方があるからね。
俺なんかは、
どんな攻撃もかわす、絶対防御の力があれば
攻撃力なんて必要ないと思うんだ。
ミサイルをミサイルで撃ち落とすのが難しければ
違う方法だってあると思うんだけど。
まあ、新しい防衛が出来ればできたで、
新しい攻撃方法が作られるんだろうけど。
だから、核ミサイルごときが最強の武器の今なら
俺は、無効にできるくらいには強くなってみるよ。」
「さすがですね。
核ミサイルごときですか。
わたしも、小型ミサイルくらい落とせるほどには
頑張ってみますよ。
ただ、今は物質的な攻撃よりも
ネット攻撃や、人的な攻撃が主流かもしれません。
この国だって、公安が頑張っていますがどうなることやら。」
俺とエドワードはくだらない話をしながら
T町を後にしたのであった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
世界は大きく変化している。
あれほど、T国を批判していた各国が
経済では手を結んでいる。
S国は、各国から批判されると同時に経済からも
離され、結局、T国と経済の結びつきが強くなった。
政治では批判合戦だが、経済ではつながっている。
そんなもんだろう。
戦争が起きたって、経済はきっとつながったままだ。
いや、戦争や内乱は経済を活性化させ
企業は、大手企業に吸収されていくだろう。
俺はそんなことを考えながらバスに乗っている。
はあー。
しかし、
世界なんてどうでも良い。
これから俺の身に襲い掛かることを考えれば。
そう。社員旅行だ。
海だ。
水着だ。
普通なら喜ぶところだが。
あれから小娘たちの精神エネルギーは想像以上に
大きくなってしまった。
しかも、小娘達から
俺に対する悪戯心が見え隠れする。
これから俺の身に起こることは想像できない。
爺は頼りにならないし。
・・・・・・・・・・
いや、待てよ。
フフフ
ハハハハハハ
何故、気付かなかったのだろう。
簡単なことであった。
見ていろ小娘達。
返り討ちにしてくれるわ。
俺たちは無事に海についた。
俺とエドワード、役員4人と社員30名程度だ。
男は、俺とエドワード、
スケベな浣腸マン改めカツラさんに、
日向ファンの高橋君だ。
あとはエドワードの子供2人
つまり30人程度が女性の軍団。
しかも美人ばかり。
芸能人の集まりでも見るかのように
浜辺の視線は熱い。
「あれ、カブノゾの役員達じゃね。」
「本当だ。本物だよ。」
「実際見るほうが、めちゃくちゃ美人じゃん」
「やべ。友達に連絡しなくちゃ」
「役員以外も美人が多くね。」
「やっぱり、俺、カブノゾに就職しよう」
浜辺から声が聞こえてくる。
そうだった。
役員たちはネットの中では今や有名人。
芸能人でも見るかのような騒ぎだ。
どうやら、「株式会社のぞみ」は短縮されて
「カブノゾ」と呼ばれているらしい。
俺とエドワード、カツラや高橋君の男4人は
テントとステージの用意だ。
海の家も予約していたので、
女性人たちは順番に着替えに行っている。
俺はここで作戦に出た。
「爺。頼む」
「うむ。任せよ。
多分大丈夫じゃろう。」
俺と爺は体の支配権を入れ替えた。
そう。
爺は体の支配権を変えれば
色気に対する耐性が強くなるのだ。
ただ、変な男になってしまうので封印していたのだが。
今は、そんなことを言っていられない。
「和也さーん」
日向が水着に着替えて俺に寄ってきた。
精神エネルギーも駄々洩れにして。
ピンクのビキニだが、真面目な日向が
いやらしい姿だと、インパクトが強い。
大丈夫か爺。
「さすがは日向さん。素敵です。
水着も素敵ですが、それを着ている人がもっと
素敵ですね。」
日向は予想外の俺の対応に困惑したようだが
すぐに恥ずかしそうに顔を赤らめた。
フフフ
爺の恥ずかしすぎる言動はつらい。
しかし、まずは日向を倒した感じだ。
うん。近くで高橋君も鼻血をたらして
倒れているが。
ほっといておこう。
「和也さん。どうですか?」
次はスケベ妖怪の倫花か。
やはり、レースクイーン張りに食い込んだ
水着だ。
こんなん、反則だろう。
「美しい。倫花さん。美しすぎます。
究極の美を見た気持ちですよ。」
やはり爺はおかしい。
こんなセリフ、世の中で言える奴がいるのか。
倫花も一瞬固まったが、
そのあと、やはり顔を赤らめて
笑みを我慢しているようだ。
一番の強敵、
倫花もかわすことが出来たな。
ヨシッ。
「どうですか?和也さん」
一番、色気の弱い琴美だ。
可愛い琴美だが、精神エネルギーが大きいと
いやらしくも見えてくる。
微妙な感じがたまらないのだが、
今の爺なら。
「すごく可愛いです。可愛いだけでなく、
大人の美しさが混じりあって、すごく素敵ですよ。」
さすが爺。恐ろしいほど冷静に琴美の喜びそうな
言葉をチョイスしている。
琴美も一瞬戸惑った感じだったが、
すぐに、ものすごい笑顔になった。
琴美も抑え込んだ。
フフフ
ミッションコンプリート。
完璧な勝利だ。
そこにふんどし姿のカツラが現われたのだが。
「何故にフンドシ。?」
「わからないのか。
この深紅の赤。
そして、肉体美
今日のために鍛え上げてきたのだよ。」
カツラはそう言って、役員たちの水着を
見たのだが、
そのまま、砂場に倒れてしまった。
肉体美も力を抜いた瞬間にたるんだ。
精神エネルギーが漏れたこの3人を接近して見ては
普通の人では耐えられないのだ。
あんなに水着を見たがっていたのに、一瞬で終わった。
かわいそうなカツラさん。
「和也さんは着替えないのですか?」
エドワードだ。
日々、修行をしているせいか
カツラとは全然違う肉体美だ。
「あの人素敵じゃない」
「外国の人よね。」
「芸能人かしら」
「抱かれたくなっちゃう」
さすがは、エドワード。
こいつはこいつで、女性たちの視線を釘付けだ。
「そうだね。あまり人には見せたことがないが
たまには、披露しようか」
爺はエドワードに答えて、
服を気障に脱ぎだした。
「すごい。和也さん。
鋼のような体ですね。」
エドワードが俺の体を見て惚れこんでいる。
そりゃあ、毎日、修行しているのだ
こんな体になってしまう。
「和也さん。素敵です。
マッチョマンは苦手な私でも素敵に見えます」
「本当、やられました。
本能の収まりがつかなくなりそうです。」
「かっこいい。和也さん」
小娘役員どもも、俺の体に惚れこんだようだ。
小娘達と違い、
精神エネルギーは隠しているのに。
完全勝利だな。
フフフ
「お待たせ―。」
うん?
忘れていた。
希美ちゃんだ。
今回はビキニ姿だ。
グラマーだな。
奇麗な体だ。
しかし、爺ならこの程度。
「爺、大丈夫だよな?」
「・・・・・・」
「爺?」
俺である爺は固まった。
そして、
意識を取り戻した爺は
希美ちゃんが来る方向と逆の
テントまでゆっくり歩きだした。
「和也君、どこ行くの?」
「テント」
希美ちゃんの問いかけに、何とか答えた爺。
「爺、大丈夫か?」
「か、和也よ。危なかった。
いつものように、気絶しそうになった。
3人で限界だったのかもしれぬ。」
「そうか、結構、我慢していたんだな。」
「うむ。やはり、あの精神エネルギーは
馬鹿に出来ない。」
「仕方ない、次の作戦だ」
「うむ。わかった。」
俺と爺は頭の中で会話を終えると、
テントに入り自分の荷物から
サングラスを取った。
普通のサングラスではない。
油性マジックでさらに暗くしたやつだ。
前が見えなくとも、俺達なら問題は無い。
俺である爺はサングラスをかけてみんなのもとに
戻った。
「和也君、どう?少し恥ずかしいけど」
「素敵だよ。希美ちゃん」
他の役員とは違い適当に爺は答えた。
全然見えていないのだが。
「ありがとう。うれしいわ。」
喜んでくれる希美ちゃんだが、
俺の心は少し痛い。
俺は、何とかしのいで、
水着ショーの準備に取り掛かるのであった。
その間、社員や役員達、
そしてエドワードの子供たちは、各々
海を満喫していた。
周りの視線は熱い。
社員はナンパされて喜んでいるようだが、
ショーの宣伝も忘れていないようだ。
役員たちと子供達には、
エドワードがボディーガードとしてついている。
近くに寄られて、カツラや高橋君のように
倒れられても困る。
エドワードは女性からは素敵に見えるのだが
男達から見れば、恐ろしい存在に見えるのだ。
男どもは遠くからスマホなどで撮影するだけ。
「和也さんも、
準備が終わったら一緒に遊びましょう」
日向が優しい言葉をかけてくれる。
しかし、俺は遠慮する。
絶対、俺に対する悪戯を考えているに違いない。
「ショーの準備の後は昼食の用意もしなければ
ならないので、皆さんで楽しんでください。」
まあ、子供達も含めてみんな楽しそうで何よりである。
俺は、浜辺の定番、バーベキューの準備をした。
しかし、何か俺って奴隷みたいだな。
こんなに俺って働き者だったか?
なんだかんだで、
社員も役員も子供達も楽しく過ごせているようだ。
カツラと高橋君は、いまだに倒れているが
ほっといておこう。
そして
午後2時になり予定どおり、水着ショーの開幕だ。
「浜辺の皆様。
本日は株式会社のぞみの
水着ショーに集まっていただきありがとうございます。」
司会は日向だ。
浜辺のステージには観衆が集まっている。
すごいことに、浜辺のほとんどの人が集まっているのでは。
数千人?かな。
どんどん人が増えてくる。
「それでは、当社プロデュースの水着です。
シルクを使って着心地は夏気分。
まるで裸のような解放感。
スタイルを気にする方もこの水着ならパーフェクトボディに」
日向がイケイケでアナウンスする。
砂浜からは社員の水着姿に歓声が上がっている。
これは成功だ。
因みにブランド名は「NATUE」だ。
デザイナーの夏江をそのままブランド名にした。
しかし、観客の男どもは日向の水着姿に惚れこんでいる。
日向を崇拝する高橋は、間近に近寄って倒れた。
最後に役員どものショータイムだが。
嫌な予感がした。
俺に対しての腹いせのように。
役員4人がステージに上がり、ポーズをとったが、
その瞬間、客席に向かって
精神エネルギーを開放しやがった。
倒れる男達
狂気になって、ステージに向かう男ども。
憧れの目で見つめる女性ども。
こんな、ファッションショーなどないだろう。
俺とエドワードはステージに向かってくる
狂気の男どもを気絶させ、何とか落ち着かせたが。
女性たちは、その光景を見て水着を購入したいと
これまた混乱した状態になった。
成功したのだろうか?
1日だけで数百の水着の注文を得ることが出来た。
1着の価格は1万円以上なのに。
男どもの態度を見て購入したくなったのだろう。
蚕の養殖も考えなければならないか。
男どもも、就職希望してくるが、本日は受け入れできない。
本当に動機が不純な奴等だ。
責める気にはなれないが。
そんなこんなで、社員旅行のショータイムは終わったのだが
あまりにも、騒ぎが大きすぎて、
逃げるように、予約していた温泉宿にバスで向かった。
「はあ。残念ですね。もう少し海で遊びたかったのですが。」
「たまらなかったわ。あのギラギラした男達の求める顔が」
「いやいや。怖かったですよ。」
「別に、あの海でもっと遊んでも良かったのに」
役員達も社員達も少し残念そうだが仕方がない。
あの砂浜は欲望の世界となってしまったのだから。
それも小娘たちのせいだが。
犯罪が起きない程度に
浜辺に残った男女でうまくやってくれればよい。
まあ、予定通り、商品の宣伝広告は出来た。
というより予想以上の反響だ。
品が良ければ、買ってくれるという証明だが
精神エネルギーという反則技が気になる。
実際、爺もサングラスをしていたのに一瞬固まってしまった。
本当に頼りにならない。
まあ、俺では倒れていただろうから文句は言えないが。
爺と俺は水着の危機を終えたので、体の支配権を入れ替えた。
爺はいつになく疲れ切っている。
「爺。お疲れ様。
よくぞ、頑張ってくれた。」
「和也よ。
毎日の修行が楽に思えたぞ。
組織よりも、本当の敵はあの小娘達ではないか?」
「わかる。
わかるよ爺。
でも、これからは安心だ。
もう、水着の出番は無いから」
「うむ。
そうじゃのう。
美味しいものを食べて、たまには寛ごうぞ」
「そうだね。」
俺と爺は頭の中で会話した。
これから起こる悲劇も想像しないで。
俺とエドワード、カツラに高橋君は一緒の部屋だ。
5階という高さもあって窓からの景色が良い。
何故か、男同士が安心する。
「ちくしょう。何で俺は気絶してしまったんだ。
和也、来年も夏の社員旅行は海だ。
いや、冬でも海だ。水着だ。」
カツラが悔しそうにしている。
冬に水着は難しいです。カツラさん。
「僕もですよ。日向さんの水着は頭にこびりついていますが
なぜ、写真を撮るまで耐えられなかったのか。
近づきすぎたのは失敗でした。」
日向ファンの高橋君も悔しそうだ。
本当に変態の2人にはあきれるが
責める気にはなれない。
俺だって耐えられなかっただろうから。
「せっかくだから、露天風呂にでも入ろうか?」
俺は、皆を誘った。
「混浴は無いのか?
覗きはできないのか?」
「カツラ、それは無い。」
俺はカツラの期待を遮った。
気持ち悪いが男4人で温泉に入ったのだが
気持ちが良い。
何で、温泉は気持ちが良いのだろう?
景色も良いが
家庭の風呂とは違う。
やはり広さかな?
T町の健康センターも広さを意識した。
裸という無防備で広い空間にいることは
本来、恐怖なのだが。
無防備で安心な場所にくつろげるのは逆に
解放感が得られるのだろう。
カツラが何故か
シャンプーで剥げた頭を洗っている。
それは良いのだが、大事な部分を重点的に
洗っているのは、何かを期待しているのだろうか?
高橋君は、隣の女子浴場を覗こうと
必死になっている。
壁をよじ登ろうとして、落ちて、また倒れた。
高橋君は、倒れてばかりだな。
何をやっているのやら。
それよりも、エドワードは常に修行をしている。
今日い1日、ずーっと、1mm程度浮いているのだ。
精神力が並でない。
実際、ワンやミックと良い勝負になるのではないか
と思うほど成長している。
「エドワード、
本当にまじめだね。
たまには、息を抜いたら?」
「いやいや。
和也さんに少しでも近づきたいのですよ。
なので、常に修行をしています。」
「まあ、今日くらいは息を抜きなよ。
子供達も楽しませなくちゃ」
「ハハハ
ありがとうございます。
まあ、子供たちはみんなのおかげで
楽しそうですよ。
因みに、あの子達も精神エネルギーを
使えるようになってきたのですが」
「嘘でしょ?
だって、すごく小さいよ。
精神エネルギー」
「私も不思議なのですが
今では、5センチくらい浮けますよ」
俺は驚いた。
役員小娘だけでなく子供たちまでも
才能のある奴が集まりすぎ。
「和也よ。
儂の理論が追い付いていかぬ。
何でこんなに和也の周りだけ、
すごいことが起きるのじゃ?」
「俺だってわからないよ。
爺の影響じゃない?」
「儂も記憶が無いが
恐らく、こんなことはこれまでないのじゃ」
俺と爺は頭の中で会話をする。
「まあ、子供達には人に見せてはいけないと。
ここだけの約束だよと言いましたがね。」
エドワード。
君は甘い。
ここだけの約束という魔法の言葉を信じてはいけない。
約束は破られるためにあるのだ。
破った方を恨んではいけない。
約束を破られた場合を常に想定しなえれば。
俺は自分に言い聞かせた。
まあ、しかしくつろげた。
男どもはゆっくりくつろぎ、部屋に戻った。
「冷蔵庫のビールでも飲みましょうか?」
カツラが提案して、皆で夕食まで飲むことにした。
そこに
「お風呂ははいりましたか?」
日向たちだ。
浴衣姿に、風呂に入った後なのか
肌がピンク色に美しい。
両手にビールを抱えて高橋君の隣に座った。
高橋君は固まっている。
いつものように日向を見つめるわけでなく。
あまりに近すぎて緊張しているのか
俺の顔しかみていない。
「社員のみんなも楽しそうに呑んでいるので
私たち役員も楽しもうと」
琴美も両手にビールを抱えてカツラの隣に。
カツラも固まった。
やはり、動けずに俺の顔しか見ていない。
「入りましたよ。すごく癒されました」
エドワードが女性陣に答えた。
「夕食まで時間があるので、一緒に呑もうかと」
倫花もビールを両手に俺エドワードの隣に座ってきた。
しかし、エドワードは笑顔で動じない。
「呑むわよ。今日は。」
希美ちゃんは何故か日本酒一升瓶を片手に
俺の隣に。
忘れていた。
水着以上に強力なコスチュームを。
風呂上がりの浴衣だ。
肌はピンクに、石鹸とシャンプーの香り。
俺は急いでサングラスを装着した。
「どうしたのですか?
和也さん。いきなりサングラスなどして。
室内なのに。」
日向が俺に疑問を投げつけてきた。
そりゃそうだ。
違和感ありすぎ。
「負けました。
私は皆様の姿で倒れないように
サングラスをさせていただきます。」
俺は素直に負けを認めた。
悔しい。
「和也よ。
ここは素直に負けを認めて正解じゃ。」
爺も俺の行動に同意してくれた。
「フフフ。毎日修行をした甲斐がありました。」
「水着の時は悔しい思いをしましたが、
能力をぶつければ、良かったのね。」
「嬉しい。和也さんを負かしたわ。」
小娘どもは嬉しそうだ。
作戦を練ってきたのだろう。
浴衣に精神エネルギーをぶつけられたら
負けるに決まっているだろう。
しかし、
修行の動機は俺を負かすためだったのか?
それでこんなに成長を?
希美ちゃんは、興味がないらしく精神エネルギーを
内に隠しているようだが。
恐らく、一番成長している。
しかし、それなのに
希美ちゃんの
風呂上がりのシャンプーの匂いと
石鹸のほどよい香り。
高橋君やカツラは固まっているのではなく
座ったまま気絶している。
俺はサングラスのおかげで、なんとか大丈夫そうだ。
精神エネルギーのバリアーを張っていれば
いつもどおりに行けそうな気がする
しかし、
希美ちゃんとはいえ浴衣は強敵すぎる。
しかし、
エドワードは平然と3人を相手にしている。
現在の状況で序列的には、
エドワードが1位
小娘達が2位
最弱者が俺だ。
「和也君、ビールなんて甘いわ。
私たちは日本酒よ。」
そして、俺は、希美ちゃんに絡まれながら
日本酒をお茶碗でグイグイ呑まされている。
夕食の宴会まで、俺はもつのだろうか?
しかし、何だろう?
近頃、本当に希美ちゃんが綺麗に見えるのだ。
精神エネルギーのせいなのか、わからないが。
「希美ちゃん。本当にきれいになったね。」
俺は少し酔っぱらって希美ちゃんに話しかけた。
「・・・・・・・」
「どうしたの?」
「なんでもないわよ。
サングラスをかけられながら言われたって。」
何だか、希美ちゃんが少し怒った様子。
からかっていったのかと思ったのかな?
「いや。冗談でなくて、本当に綺麗になったよ。
サングラスをしないと直視できないくらい。」
俺は自分をフォローするように続けて言った。
「もう。そんなこと思っていないってわかっているから
言わないで。」
更に、不機嫌な様子。
希美ちゃんは、変なところでネガティブなんだな。
「いやいや。本当だって」
「あら、ありがとう。
嘘でも嬉しいわ。」
希美ちゃんは、まだ、疑っているらしいが、それなりに
うれしそうだ。
その時、
ものすごく大きい精神エネルギーが近づいてくる。
しかも空から。
エドワードよりも上か?
「和也さん。」
エドワードが真剣な顔で俺に話しかける。
「うん。結構、強そうだね。
しかも、空を飛んでくるなんて
相当、馬鹿だろう。」
「組織の奴等が来たのですか?」
「強そうですね」
「あっ。本当だ。強いのが向かってくる」
「返り討ちにしてやるわ。」
4人の小娘達もやる気満々だ。
空からやってくる奴は、見事に
俺たちの5階の窓にやってきた。
閉めた鍵は簡単に精神エネルギーで開けられた。
窓の手すりの上の立って挨拶をしてきた。
「ハハハハハ。
私は、ジョンです。
素晴らしかったですよ。
水着ショー。
ビューティフルです。
我慢できずに会いに来てしまいました。
実は・・・・・」
うん?組織の奴なのか?
それとも、この登場の仕方は馬鹿なのか?
ジョンは黒髪だが、エドワード並みにかっこよい感じだ。
外人とこの国のハーフみたいな顔立ちだが。
しかし、ジョンが話している途中なのに
4人の小娘たちは、何も言わずに
立ち上がり、浴衣姿で
精神エネルギーを、ジョンにいきなりぶつけた。
「・・・・・・・・・」
そのまま、ジョンは窓から落ちた。
気絶した状態で落ちれば死ぬだろうな。
しかし、本当に馬鹿だったのか?
死なれても困るので。
俺は精神エネルギーで
近くの木の上にジョンの体を置いた。
ほっとこう。
「大丈夫。生きているみたいだから
ほっとこう。」
俺はそう言って、また、窓の鍵を閉めた。
「なんだったんでしょうね。」
エドワードが俺に問いかけたが、俺にもわからん。
「爺、つまらないかもしれないが、頼む。」
「うむ。面倒くさいがやるか。」
爺は俺と頭の中での会話を終えると
記憶を探ってくれた。
どうやら、組織のメンバーのようだ。
しかも、いわゆる上層部。
ワンやミックよりも上だ。
しかし、上層部では5人のうち5番目らしい。
順番に強い奴が来るな。
しかし、俺やエドワードではなく
あきらかに、小娘達が狙いだったようだし
水着ショーが気に入ってきただけのようだったが。
「エドワード。
どうやら組織の上層部みたい。
5番目くらいかな。」
「そうですか。
あんな馬鹿みたいなのがいたのですね。
しかし、私よりは強そうでした。」
「まあ、精神エネルギーの大きさだけじゃ
わからないけどね。」
「そうですね。
役員の方々が、あっさり倒してしまいましたし。」
いやいや、あの攻撃を喰らったら俺でも倒れる。
本当に恐ろしいまでに成長してしまった。
だいたい、今日の水着ショーだって
観客席まで、結構離れていたのに
あの威力だ。
「あれで5番目なんて調子狂いますね。」
日向がガッカリしたような口調で話す。
「そうね。もう少し、日々の修行の成果を
試したかったのに。」
「私もです。5分の1も出していない。」
「私なんか、何もしてなかったよ。
まあ、呑みなおしましょ。」
あらあら、恐ろしいことを言いますね。
信じられない。
あれで、全開じゃないの?
そして、宴会の時間まで飲むことになったのだが、
面倒くさいことにジョンが復活したようだ。
今度は廊下からやってきた。
トントン
俺はドアを開けて
「怪我はないのですか?」
一応聞いてみた。
「ハハハハハ
いや。私としたことが。
お恥ずかしいところを見せてしまった。
怪我などありませんよ。
しかし、すごい色気でした。
ますます、好きになってしまいましたよ。
倫花さん。」
あれ?倫花が目当てだったの?
「あら、素敵。
嫌いじゃないわよ。
ストレートな告白。」
「では、私と付き合ってください。」
「フフフ」
倫花が悪戯な笑いをした。
「私に勝てたら、付き合いましょう。
そのかわり、負けたら、私の奴隷というのは
いかがですか?」
「なるほど、勝っても負けても
私には良い条件ですね。
既に、両想いですな。
まあ、しかし、私が負けることはありませんが。」
やっぱり馬鹿だ。
まあ、いくら馬鹿でも
好きな相手を殺すことは無いだろうから
ジョンの実力でも見てやろうか。
しかし、
倫花の自信はどこから来るのかわからない。
相手の強さはわかるだろうに。
もしかして、このジョンと付き合いたいのかな?
そして、ジョンは強い精神エネルギーを開放して
倫花にぶつけてきた。
といっても浴衣を脱がそうとしているのだが。
倫花は、あっけなく浴衣を脱がされた。
俺はサングラスをしているからわからないが、
おそらく、下着だけの格好になったのだろう。
しかし、倫花も同時に精神エネルギーをジョンに
ぶつけている。
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
やっぱり馬鹿だった。
自分で脱がせて
また、気絶した。
自爆だ。
ジョンの負け。
「これで、あなたは私の奴隷ね。
いろいろと、欲求不満の解消に役立ってもらうわ。」
倫花は、浴衣を着てからジョンの頭をなでている。
奴隷って、何をさせられるのだろう?
「倫花、ずるいですわ。奴隷をゲットするなんて。」
日向が、羨ましそうに言う。
「私も欲しい。欲求不満解消の奴隷」
琴美も。
何か会話の内容が恐ろしいのですが。
精神エネルギーが大きくなって
あちらの欲求も大きくなってしまったのかしら?
俺は変わらないけど、女性は違うのかな?
「和也君。
私も欲しい。
和也君がなって。」
希美ちゃんは違う意味で聞いてきているのだろうが
俺を何だと思っているのだろうか?
玩具ではないんだよ。
「なりません。」
きっぱり、お断りした。
すでに
普段、奴隷のように扱われているのに、
これ以上の奴隷なんて、どんなことになるんだ。
「希美に奴隷は必要ありません。
和也さんも、私と勝負をしませんか?」
倫花が欲張って俺にも勝負を挑んできた。
「倫花、あなたにはもういるでしょう。
勝負をする権利は私にあります。
和也さん、私と勝負しましょう。」
日向まで参戦してきた。
「私も勝負したい。奴隷をかけて。」
琴美までも俺に勝負を挑んできた。
奴隷には興味はあるが・・・・・
いや、駄目だ。
「やりません。
負ける勝負はしない主義です。」
俺は、剥きになってお断りをした。
本当に、今後が思いやられる。
俺と爺は、さらなる修行を心に誓ったのであった。