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俺のコードネームは「D」  作者: 庵本探
15/24

第15話 秘密基地

 エドワードが仲間になって、4か月後。

 落ち葉も落ち切って、冬の様相になった。


 あれから、支店が2つ増えた。

 支店長は、社員の浩一と優希だ。

 許可申請など時間がかかったが、

 俺とエドワードはチャンチャン事業の準備で走り回った。

 面白いのは、今回、

 漁が盛んな町や放牧が盛んな町とも協力が出来たことだ。

 これから、弁当や定食屋のメニューも増えるだろう。

 

 登録社員も、派遣先の会社もあっという間に増えた。

 広告など大して出していないのに。

 なんか、小娘役員4人のSNSがすごいらしく、

 フォロワー数が合計すると1000万を超えるらしい。

 俺も見たことがあるが、

 毎日、社員用の弁当を食べていたり、

 派遣社員達と楽しそうに定食屋でご飯食べていたり、

 そんな日常を上げているだけなのだが。

 コメントが、奇麗、かわいい、美味しそう、安い、

 などなど。


 まあ、計画は着々と進むのであった。

 借金も増えているが、資産も増えているし、

 資産から借金を差し引いた資本も20億ほどまで増えた。

 しかし、日本一になるまで、あと、何十年かかることやら。

 大体、日本一の定義がわからん。


 そして、ようやく

 エドワードが俺のアパートに引っ越してきた。

 引っ越して来たのだが。

 何かが違う。


 俺の向かいの部屋、3部屋を借りることになったのだが

 合体されて1部屋に完全なリフォームがされている。

 大家のピグモン婆も、簡単に許可したらしい。

 というより、エドワードに惚れこんでしまったらしい。

 まったく、色男は何でも許されるのか?


 そして、今日は、引っ越し祝いということで、

 エドワードが、俺と小娘役員4人を招待してくれたのだが

 なにこれ?


 うん。高級ホテルのような空間。

 高級ベッドにソファー、リビングなどなど。

 エドワードなら納得。


 しかし、地下室?

 どうやって作ったの?

 地下に階段で降りると、大きいサーバーや

 システムが配置されている。

 まるで、秘密基地じゃん。


「エドワード、これって?」


「はい、秘密基地です。

 このドアを開けると、トンネルにつながっていて

 近くの公園に出られます。」   


「さすがですね。エドワードさん」

「惚れなおしましたわ。エドワードさん」

「かっこいい。エドワードさん」

「この部屋でゲーム出来るの?エドワード」


 希美ちゃん以外、みんな絶賛である。

 いや、そういう問題ではないでしょう。

 みんな、不思議じゃないの?

 どうやって、こんな秘密基地作れたのとか?

 何の目的で作ったの? とか。

 仕方ないので、俺が聞くことにする。


「この基地の目的って?」


「はい。主に情報収集です。

 ある目的を入力すると、

 システムが自動でネットに存在する情報を収集し

 AIが情報の信用性などを識別しながら

 回答を導きます。

 まあ、我々の役に立つかと思いましてね。」


「いや、役に立つだろうけど。

 費用対効果が無い様な気が。」


 数億円はかかっているよね。

 秘密基地は男のロマンだけど。

 小娘4人組の欲望のために数億円?


「和也さん。儲けなどは関係ないのです。

 世界を征服するのです。

 このくらいのこと。

 私は、役員たちの話を聞いて感動しました。

 全財産を投げうっても良い気持ちです。」

 エドワードが爺と同じく小娘たちに感化されている。


「例えば、株式会社のぞみ を入力すると、

 このように、」


 資本金2000万円 代表取締役 野々村希美 

 取締役・・・・・・・・・・・・

 人材派遣会社・・・

 事件を起こし記者会見を開くが・・・・

 利益を社員のために還元すること・・・

 資本主義や共産主義とは違う思想があると

 SNS上で話題となっている。

 ・・・・・・・・・・・・


「おお。すごい。

 因みに、デュランを入力するとどうなるの?」

 俺はエドワードに聞いてみた。


「残念ながら、回答はゼロです。

 組織のメンバーは、ネットなどに自分の情報を

 あげさせませんから。」


「だよね。因みに藤原和也、

 俺の名前を入力するとどうなるかな?」


「よろしいのですか?

 このシステム、実は裏情報ともつながってまして

 個人の趣向なども出てしまいます。

 当然、これまで閲覧した動画やサイトなども。」


「やめてください。エドワード君

 そんな怖いシステムを入れてしまったのですか。

 プライバシーの侵害になるようなことは

 禁止にしましょう。」

 俺は、エドワードにお願いした。


 ところが。


「ここに、藤原和也と生年月日を入れれば

 でてくるの?

 ねえ、エドワード」


 希美ちゃんが席に座って入力しようとしている。


「やめてください。希美様。

 お願いします。」


 せっかく、この数か月、エドワードと仕事をする中で

 俺のプライドさんが旅から帰ってきたのに。

 今は、開き直り君と仲良く同居しているのだ。

 時間の経過というのは偉大なのだ。

 もう、俺のプライドさんをイジメないで下さい。


「そうか、組織でもこのようなシステムが導入されていて

 組織の目的にそぐわない人や組織が抽出される。

 今回、うちの会社が、候補として出てしまったと」

 俺は、エドワードに問いた。


「そのとおりです。和也さん。

 組織のシステムはこれの数百倍も性能や精度が高いですが。

 組織の目的に反する者が現われれば、

 すぐに抽出されて

 瞬時に芽を抜くための行動が行われます。

 今回のように。」


 うーん。そのシステム壊したいな。

 俺を検索されたら、たまったもんではない。

 しかし、情報を収集することが

 情報を与えているんだもんな。

 ネットを活用するということはそういうことなのだ。

 たまったものではない。


「本当に、人を管理できそうな感じだよ。

 いや、国家まで

 各国の要人や、資本家などもすでに

 趣向や弱みなどは把握されているのだろうから。」


「もう、既に、そちらは完了しています。

 あとは、民意。

 これを支配、管理できれば、

 組織の目的は達成できるでしょう。

 これも、あと一歩ですがね。」


「そうだろうね。

 マスコミで流す情報は同じものばかり。

 ネットの情報も管理して

 多少、本当の話が混じった陰謀論を流す。

 答えは別なところにあるのに

 2択であるかのようにすれば、

 民意を管理するのも可能だろう。」


「そのとおりです。

 組織の下には、資本主義者も共産主義者もいる。

 どちらも2択の中で、

 組織の下で踊らされているだけなのです。

 そして庶民のほとんどは貧困にする。

 あとは、お金という単なる紙切れで

 人が動くようになるわけです。」


「だよね。

 うちみたいに

 気持ちで動く会社や人なんて邪魔になるよね。」


「そのとおりです。」


 俺とエドワードは珍しく真剣な話をした。

 すると


「出てきた。

 うーん。

 やっぱり、このシステムすごい。

 当たってる。」


 えっ?

 希美ちゃん

 何しているの?

 まさか?


「和也君を入力したら

 変態

 異常者

 だって。ハハハハハ

 すごーい」


 システムさん。

 俺のことを簡潔にまとめていただき

 ありがとうございます。って

 ちくしょ―う。

 

 俺とエドワード、小娘役員4人は階段を昇って

 1階のエドワードの部屋に戻った。


「皆さん。寛いでいてください。

 今、食事とお酒の用意を致しますので。」


 ほう。エドワードも俺のように使用人になるのか。

 うん。うん。

 何か、たくさん食材がキッチンに置いてあるし

 部屋を提供した者の宿命だよね。

 俺が思っていると


 「ピンポーン」


「お待たせ致しました。

 シェフの飯田友信です。

 本日は、皆様のために腕を振るわせていただきますので

 宜しくお願いします。」

 

 おい、エドワード。

 金にものを言わせやがて。


「こちら、銀座レストランで料理長の

 飯田さんです。」


「何かテレビで見たことある。」

「凄い方とお知り合いなのですね」

「今日はデザートも食べられるの?」

「締めのラーメンは?」


「ハハハ。お任せください」


 まあ、良い。

 今日は俺が使用人のようにこき使われないのだから。

 

 1時間後


「和也君。出来たみたいよ。」

「食べ終わったお皿片付けてください。和也さん」

「飯田さんも料理終わったら御一緒に」

「洗い物は和也さんがやってくれますよ」


 なんだ?

 なんなんだ?

 チクショウ。

 エドワードは俺が喜んで

 使用人のように働いていると勘違いしているようだ。

 月25万円の給料で働いている俺に、

 残業代払え。

 

 そうなのだ。

 当初50万円の約束だったが

 小娘役員4人の報酬が25万円だったので

 俺も同額に落としてもらったのだ。

 なので、エドワードも25万円。

 何か矛盾を感じてきた。


 そんなことを思いながら

 俺が使用人のように働いていると

 メインデッシュのステーキが出来上がった。


「和也よ。あれは旨そうなのじゃ。」

 爺も高級料理によだれが垂れているようである。


 しかし、大体、こういうタイミングで事件は起きる。


「爺、来ちゃったみたい」

「ふざけた野郎じゃ。このタイミングか?

 許せぬな」

 俺と爺は頭の中で会話する。

 すごい精神体が近づいている。


「ちょっと。ジョギングしてくる。

 お腹を空かしてから食べたいからね。」

 俺はそう言って、エドワードの部屋を出た。


 アパートの入り口で

 高級スーツに身を包んだ

 長身、銀髪の男と出会う。

 年は40代くらいか

 銀髪外国人は年齢がわかりづらい。


「うちのアパートに用ですか」

 俺のアパートではないのだが、俺は尋ねた。


「こちらに、エドワードという外国人が来てませんか?」

 流暢にこの国の言葉を話す外国人。


「エドワードの友人ですか?」


「友人というよりは、元仲間ですかね。」

 正直な銀髪外国人だ。


「和也よ、こいつ。邪心がない。

 記憶を読むのも出来ぬな。」

 爺が俺に話しかける。


「あなたは、藤原和也さんですよね。

 色々、私たちの邪魔をしているようなので

 軽部と同じように消えてほしいのですが」


 やはり軽部は消されたか。


「よく、俺のことがわかりましたね。」


「調べさせていただきましたから。

 スケベな動画が好きなようで。

 変態、異常者らしいですね。」


 殺られた。

 プライバシーの侵害だ。


「何かの間違いでしょう。

 私は、正常ですよ。」


「いやいや、その精神エネルギーは

 異常です。

 私より、やや少ないぐらいですか。

 信じられませんね。 

 まだ、私たちのほかに、このレベルの者が

 いるとは。」


「すごいですね。

 精神エネルギーがわかるのですか?

 まあ、今日は帰ってもらえませんかね。

 ステーキが冷めてしまいますので。」

 

「そんなこと。

 どうでも良いことです。」

 銀髪外国人が笑みを浮かべながら話す。


「どうでも良くないのじゃ。

 高級料理のステーキじゃぞ」

 爺が頭の中で怒っている。


「では、どいてもらいましょう。」

 銀髪外国人はそういうと、すごい精神エネルギー

 を俺の脳にめがけて放出してきた。


 俺は自身の精神エネルギーで防御する。

 周りから見れば、2人のおっさんが

 向かい合って、

 見つめあっているだけに見えるだろうが、


「ほほう。すごい。

 精神エネルギーをコントロールできるとは

 でも、残念。

 私には敵いません。」

 そう言いながら、銀髪外国人は先ほどと比較にならない

 精神エネルギーを俺の脳にめがけて放出してきた。

 恐らく脳にダメージを与えて

 俺を倒そうとしているのだろう。


 俺は少し精神エネルギーを開放して

 銀髪外国人の攻撃を防御した。

 そう。

 俺と爺は、漫画の影響を受けて、

 自身の精神エネルギーを隠すことが出来る。

 まあ、思いっきり放出しても金髪にはならないが。


「バ、バカな。

 一瞬、精神エネルギーが大きくなったぞ

 そんなこと。

 ありえない。

 私だって、数百年かけてここまで来たのに

 貴様は、どれくらい前世から精神体を継承してきたのだ?」


「前世なんて記憶ないけど。」

 俺は、あっけらかんに答えた。


「危険だ。貴様は。やむを得ない」

 銀髪外国人はそういうと、右手を上げた。


 すると、近くに止めてあったトラックの荷台から

 10人ほどの男が現われてきた。

 俺と爺は気づいていたが。

 しかし、まあ、ありえない。

 この国で、機関銃なんて。

 騒ぎになっても面倒くさい。


 爺は、精神エネルギーで全員を一瞬で倒した。


「お前のやりたかったのは、これだろう?

 ステーキが冷めるからさっさと終わらそう。」

 俺は銀髪外国人に向けて言ってやった。


「何なんだ?一体貴様は?」


 俺は、少し精神エネルギーを開放して

 銀髪外国人の脳に攻撃をした。


 銀髪外人も精神エネルギーで防御をした。


 しかし、俺の精神エネルギーは器用に

 その防御を取り除き、

 隙間から精神エネルギーを銀髪外人の脳に

 ぶつける。

 

 銀髪外人は脳震盪状態となった。

 その瞬間、銀髪外国人は倒れた。

 俺は、倒れた奴らをトラックに戻し、

 銀髪外国人だけを担いで

 エドワードの部屋に連れて行った。


「何か、ジョギングしてたら、道に落ちてた。」

 俺は道に置いていた銀髪外国人を

 エドワードの玄関に置いた。


「デュラン!」

 エドワードが叫ぶ。


 やっぱりデュランだったか。

 ここまでデュランを運んでくる間に、

 爺は、デュランの頭の中で闘っている。

 絶対的な敗北を味わさせるために。

 というよりも、一瞬で終わったようだが。


「和也さん。デュランは?」


「いや、生きているよ。

 道に落ちていたから、拾ってきただけ。

 じきに目が覚めるよ。」


「始末しなくて良いのですか?」


「うん。大丈夫。脅威ではないから。」


「脅威ではない?

 デュランが。

 フフ。ハハハハハハ」

 エドワードが笑った。


 笑ってもらえて良かった。

 その笑い声でデュランが目覚めた。


「ここは?

 私は生きているのか?

 エドワード?

 あの方は、いったい?」

 デュランはエドワードを見て戸惑った。


「デュラン、

 珍しく冷静さが欠けているようですが」


 エドワードの話で、周りを見渡すデュラン。

 そして、俺と目が合う。


「あ、あ、あなた様は何者なんですか?

 私をどうしようと?

 あっ。そうでした。

 私のことなど後回しで、とりあえず、

 ステーキを召し上がってください。」


 そうだった。

 爺が怒ってしまう。

 早く、ステーキを食べてあげないと。

 俺はそう思い、

 デュランを誘って、部屋に入るのであった。


「旨い。やはり高級じゃ。うまいぞ。和也。

 安い弁当の肉も旨いが、全く違う肉じゃ」」

 爺がめちゃくちゃ喜んでいる。


 高級食材をプロが料理人したのだ。

 旨いはずである。

 まあ、たまに食うから旨いんだよね。

 毎日食べてたら、高級だって飽きるだろう。

 一方、デュランはエドワードの隣で立ちすくんでいる。


「この方は友達ですか。エドワードさん」

「この方も素敵ですね。エドワードさん」

「おとなしそうな方ですね。エドワードさん」

「わかった。デュランでしょ。エドワード」


 さすが、希美ちゃん。

 知っている外国人の名前を言っただけなのに

 正解してしまった。


「希美さん。そう。この方がデュランです。」

 エドワードが答える。


「あの組織のデュラン?」

「私たちの会社を潰そうとしたデュラン?」

「お金で人を殺してしまうデュラン?」

「やっぱり、当たったわね。

 私の目は誤魔化せないわよデュラン」


 少し、デュランが可哀そう

 皆に責められている。


「はいそうです。私がそのデュランです。

 覚悟は出来ています。」

 デュランも正直な男だ。

 しかも覚悟を決めているようだ。


「覚悟は出来ているようね。

 わたしも辛いけど。

 倒させてもらうわ。」

 希美ちゃんが、ため息をついて発言する。


 その瞬間、他の小娘3人が動き出す。

 俺は、様子を見ることにした。

 希美ちゃんの格闘技を喰らうが良い。

 そのぐらい、やらせてやろうかと。


 日向が、デュランをソファーの真ん中に座らせ

 デュランの背後に立った。

 倫花と琴美は両側に

 希美ちゃんは正面だ。

 デュランの逃げ道は無い。


 うん?俺の想像と何かが違う。


 日向と倫花、琴美が色気仕掛けで攻撃しはじめた。

 耳元でささやき、嫌らしい手つきで

 ボディーランゲージ

 しかも、

 各方面から胸を押し付けられて動けない。

 そして、目の前の希美ちゃんとは

 ワインの飲み比べ勝負。

 しまいには、一気コールをかけられ

 デュランは

 あっという間に、単なる酔っぱらいの

 オヤジになっていた

 しかも、お触りは厳禁。


「和也よ。デュランの精神エネルギーが小さくなって

 スケベ邪心の塊のようになってきたぞ。

 あれは、儂では耐えられぬな。」

 爺が俺に話しかける。


 これは狂う。

 俺でも耐えられない。

 精神が崩壊する。 

 日向、耳元で何を囁いているの?

 倫花、男も胸は弱いの。

 琴美、そこの近くは触っては駄目。

 デュランも

 精神が崩壊しそうだ。

 

 デュランが倫花の太ももに触れようとすると

 パシッとやられるが、耳元に息を吹きかけられる。

 ボディーを触られまくる。

 小娘たちがスケベ心を煽るが

 何もできない。

 酒で理性が無くなり、香水とシャンプーの香り。

 正に蛇の生殺し。

 そして、目の前には酒豪希美ちゃん。


 その後も王様ゲームやトランプなど色々なゲームを

 俺やエドワードも含めてやるのだが

 デュランは、負けているのに楽しそうだ。

 すでに、パンツ1枚となっている。

 もう、こいつのプライドさんは旅立った。

 希美ちゃんとは肩を抱き合って飲みあっている。


「ハハハハハ

 希美さん。あなたお酒強いですね。

 私も強い方なのですが」


「フフフ

 デュラン。

 あなたもなかなか倒れないわね。

 気に入ったわ。

 あなたは今日から仲間ね。」


「はっ?馬鹿ですか。

 私はあなたの会社を潰そうとしたのですよ。

 仲間だなんて。

 私を酔い潰して海にでも投げるんでしょう?」

 デュランが酔っぱらいながら反論した。


「海になんて投げないわよ。

 海にゴミは捨てちゃいけないの。

 私は、あなたが気に入った。

 それだけよ。

 勝手に私が仲間だって言っているんだから

 それで良いのよ。」

 希美ちゃんも酔っぱらいながら語った。


「しかし、私には組織に仲間がいるのですよ。

 わたしがいくら希美さんを好きになっても

 裏切りは出来ないのです。

 であれば、いっそ海に捨ててもらった方が。」

 デュランは酔って泣きそうな声で語っている。


「だから、海にゴミは捨てられないのよ。

 川も駄目よ。

 そんな小さいことどうだって良いわ。

 デュランは組織を

 裏切らなくて良いじゃない。

 それと、これとは別よ。

 組織の仲間達と、私たちの邪魔をしたって構わない。

 でも、あなたは私の仲間。

 わかる?」

 希美ちゃんは笑みを浮かべてどや顔で語った。


「そうですよ。デュランさん」

「私も仲間です。デュランさん」

「一緒に飲んでて楽しいもんね。デュランさん」

 他の小娘役員3人も笑顔で語った。


 デュランはやられた。

 悪魔美女たちの笑顔に。

 そんな小さいこと?

 俺たちの理想が?

 何なんだ?

 それよりも大切なもの?

 しかし、感情が沸き上がる。

 この笑顔を泣き顔にしたくない。


 こんなこと思うのは初めてだ。

 人類の理想のために仲間達と数百年かけて

 やっとここまで来たのだ。

 

 我々は特別なはずだ。

 修行をして、精神体を得ることが出来た。

 そして、死んでも、精神体を次の肉体に宿せば

 記憶も引き継ぐことが出来る。

 こんなこと、我々しか出来ない。

 そう、選ばれた者たちなのだ。


 だから、我々が人類を理想に導かなければならない。

 しかし。

 本当にそうなのだろうか?

 組織の仲間とは違う。

 この小娘たちがいう仲間。

 何故、暖かいのだろう?


「ハハハ。ありがとうございます。

 私を仲間に入れてもらって。

 だからといって、

 希美さんには負けてあげません。

 酒の勝負はこれからですよ。」

 パンツ1枚のデュランが何か吹っ切れたように騒ぐ。


「望むところよ。デュラン。

 わたしは、約束どおり、あなたを倒す。

 和也君、ワインが無くなったわ。

 買ってきて。」

 希美ちゃんも戦闘モードだ。


「和也さん。あなた様ほどの方が

 何故、使用人のような扱われ方を?」

 デュランが俺に聞いてくれた。


「そうなんだよ。ひどいんだよ。

 デュラン。わかってくれるかい?

 エドワードは俺が喜んでいると思っているし。

 本当は嫌なんだ。悔しいんだ。

 でも、この小娘たちに勝てないんだよ。」

 俺は、初対面のデュランに愚痴をこぼした。


「なるほど。フフ。ハハハハハ。

 私も勝てませんね。」

 デュランは何か一人で納得したようだ。

 

 こうして、エドワードの引っ越しパーティーは

 朝方の3時まで続いた。

 そして、最後に立っていたのは

 希美ちゃんだ。

 デュランは負けた。


「これで勝ったと思うなよ。」

 最後に悪役らしい言葉を吐いて、

 デュランは眠りについた。


 残ったのは、やはり俺と希美ちゃん。

 他のみんなは飯田さんも含めて寝ている。

「勝利おめでとうございます。希美ちゃん

 しかし、良いの?

 デュランに

 組織で邪魔しても構わないとか言っちゃって」


「だって、組織がやりたいなら仕方ないじゃない。

 こっちが潰れないように強くなれば良いだけの話。」

 希美ちゃんが、ごもっともなことを言う。


「自信満々だね。」


「だって、私たち美女が4人もいるのよ。

 あと、

 変態で異常者な人がいるんだもん。」


 ハハハ。少し照れるな。


「まあ。ご期待に添えるかわかりませんが、

 頑張りますよ。社長。」


「私も、命が短いから、どこまで見届けられるか

 わからないけど。」

 ふと、ワインを飲みながらうつむき加減に

 語る希美ちゃん。


 えっ?何?

 そんな?

 この希美ちゃんが?


「希美ちゃん、何か不治の病なの?

 そんな、短い命なんて言わないで

 だから、いつもそんな馬鹿なふりしてたの?

 俺が何とかするから

 いや、してみせるから」

 俺は真剣な顔で希美ちゃんに聞いた。


「それは、無理なの。

 美人薄命っていう病気だから。

 仕方ないのよ。」

 希美ちゃんも真剣な顔で言う。


 美人薄命だって?

 そんな病気聞いたことない。

 そんな大きな病気を抱えて生きてきたのか?

 って、コノヤロー

 俺の真剣な心配を返せ。

 というか、本当に心配した。

 愛する人を失うかもしれないという恐怖。


 ん?愛する人

 いや。ないない。

 希美ちゃんに対して、そんな気持ちはない。

 しかし・・・・・

 考えるのはやめよう。

 こういうことは考えるものではない。

 万が一、俺が惚れたとしても

 報われないのだから・・・・・・

 好きになっては、自分が傷つくのだけなのだ。

 俺は、遠くを見つめながら、

 しんみりと物思いにふけった。


「ちょっと。和也君。

 どこ見てんのよ。

 まあ、和也君だから仕方ないけど」

 希美ちゃんが文句言ってくる。何で?


 よく見ると、視線の先で

 日向はブラジャーが見えている

 琴美はスカートの中からパンティーが見えている。

 倫花もスカートの中、パンティー履いているのか?


「いや、違います。

 物思いにふけっていただけです。

 決して見てはいません。

 いや、今、見ちゃったけど」


「こっち見てれば。変態らしく」

 そう言って希美ちゃんの指をさした先には


 パンツ1枚で

 幸せそうに寝ているデュランの姿があった。  


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 翌朝デュランは帰った。

 高級車が迎えに来たが、

 帰り際に


「和也さん。

 私は動かないので、

 しばらく組織も動かないでしょう。

 しかし、

 組織の他の仲間が、

 あなた方のやっていることを知れば、

 必ず動き出します。

 守ってあげて下さい。

 私の仲間たちを。」


「わかりました。

 デュランも気を付けて。」


 俺とデュランは握手をして別れた。


「和也よ。

 組織のことじゃがデュランの記憶を探っても

 わからない者が多いのう」

 爺が頭の中で俺に話しかける。


 爺は、デュランが酔って精神エネルギーが

 拡散しているときに

 記憶を覗いたのだ。


「そうみたいだね。

 少なくとも、デュランが抑えることが出来ない

 ということは、

 デュラン以上の可能性が高い」


「そうじゃな。

 しかも、皆、前世の記憶が残っているようじゃ。

 何か、儂だけ落第生の気分じゃわい。」


「ハハハ。そうだね。

 でも生まれ変わりって可能なんだな。

 死ぬことが怖くなくなりそうだね。」


「うむ。

 それはそれで問題がありそうじゃがな」


「まあ。

 そうだろうね。

 死ぬのが怖い俺は、

 とりあえず、

 生きるために

 仕事にいきますか。」


 今日は、本社の社員採用の面接である。

 何故か、俺は人事担当も任されている。

 俺は、二日酔いの体に鞭をうって

 会社に行くのであった。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「高橋真一です。

 宜しくお願い致します。」


「当社を選んだ理由は?」


「日向さんが好きだからです。」


「採用」

 日向の独り言だ。


「あの、役員を好きなことだけが理由ですか」


「いけませんか?」


「いけなくはないかもしれないけど。

 何か、特技はありますか?」


「はい。ハッキングです。」


「犯罪ですよね?」


「いけませんか?」


「いけなくはないかもしれないけど。」

 いや、いけないだろう。


「女性が多い職場ですが大丈夫ですか?」


「色々妄想しながら仕事がしたいです。」


「妄想しながら仕事はまずいよね。」


「いけませんか?」

 

「いや、いけなくはないか。

 俺だって・・・・・・・コホン」


「基本、うちの会社は、みんな、

 家族だと思ってやっているのだけど。

 そういうの、

 ウザイとかありませんか?」


「自分、孤児だったので家族に憧れています。

 施設の人も家族でしたが、

 うんこヤロウとか、イジメられたりして、

 早く追い出されてしまいました。

 人から捨てられるのは怖いです。

 だから、僕を捨てないで下さい。」

 高橋君は涙ながらに語った。


「うん。採用」

 俺はもらい泣きしながら即決定した。


 この眼鏡君、いや高橋君

 ハッキングの技術が凄い。

 まだ、25歳だというのに。

 当社のシステムを簡単に理解してしまう。

 サーバーの脆弱性も突き止めた。

 内部システムの通信状況を可視化出来るように

 してくれるらしいが。

 浣腸マン改めカツラさんより優秀だ。


「以前は、どんなハッキングをしてたの?」

 俺は高橋君に聞いてみた。

 

「この会社のパソコンに侵入して、

 パソコンのカメラを利用して日向さんを

 覗いていました。

 日向さんには内緒にして下さい。」

 堂々と答える高橋君。


「正直だね。

 大きな組織のサーバーやシステムには

 侵入したことはないよね?」


「当たり前じゃないですか。

 そんなの犯罪ですよ。」


 いや、日向の件だけでも犯罪です。

 日向には内緒にしてやろう。

 ただし・・・・・・・

 俺が考えていると

 エドワードが口を出してくた。


「日向さんには、

 ハッキングの件は内緒にしてあげます。

 そのかわり、

 ここにアクセスして

 株式会社のぞみ を抽出対象から

 外してほしいのです。」


 エドワードは優秀だ。

 俺の考えを高橋君に伝えた。

 実はデュランがエドワードに

 組織のシステムへのアクセスコードを

 教えていたのだ。


「嫌です。犯罪じゃないですか?」


 そりゃそうだよね。


「高橋君。このシステムを管理している組織は

 悪の組織なのです。

 日向さん達の命を狙っているのです。」

 エドワードは高橋君に説明した。


「やります。

 というかシステムを破壊してやります。」

 高橋君にとって、犯罪より日向が大事。


「いや。組織に我々がアクセスしたことは

 知られたくないのですよ。

 ですから、バレないように、さりげなく。」

 

「わかりました。

 良いですよ。

 恐らく、抽出対象から外すのは簡単ですが

 足がつかないようにするのに

 時間がかかると思います。」

 高橋君は自信満々に答えた。


 高橋君はエドワードの秘密基地にこもって

 3日で完了させた。

 本当に優秀だ。


 しかし、これで、しばらくは組織から

 株式会社のぞみ が狙われることは無いだろう。

 そして、株式会社のぞみ に何もしないデュランへの

 制裁も起きないだろう。

 エドワードも元仲間のデュランを守りたかったのだ。


 俺も、

 しばらくは平穏な毎日が来るだろうと安堵した。

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「デュラン。

 あなたは、勘違いをしているようですね。

 私たちが仲間?

 私たちにとって、あなたなど下僕でしかありません。」  

 黒髪を後ろで縛った男は、デュランを見下ろして発言する。

 

「そ、そんな

 では、私はこれまで一体。

 私たちの理想とは?」

 デュランは驚愕する。


「理想?

 あなたを洗脳するために決まっているではないですか。

 まあ、また、頑張って生まれ変わってください。

 私の攻撃を受けて精神体が無事ならばですがね。」


 その瞬間。

 デュランの体から炎が上がる。

 デュランの脳裏には希美たちとの楽しい一夜が

 浮かび上がった。

 そして、和也が。

 守ってあげて下さい。和也さん。

 そう思ったのがデュランの最後の意識。  

 残ったのは黒炭だけとなった。

 、

「さて、デュランの精神波長が大きく変化していたので

 問い詰めましたが。

 デュランが全力で隠したがっていたのは

 何なんでしょう?

 まあ、暇だし、私が動いてあげますか。」


 和也たちが知らないところで

 事態は大きく動くのであった。


組織の上層部が動き出します。

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