職業 テイマー
狼さんはその大きな目でしっかりと俺の目を見てきてはこう言った。
『何故異なる種族の我と話せるか。それは、お主がテイマーだからだ。』
テイマー?聞きなれてはいる言葉だからどういう事なのかは理解出来る。
ゲームなどでは、自分のレベルより低い魔物などを従わせて戦う職業だ。もちろんただ命令だけをする訳じゃなく、その主従関係にある魔物に攻撃力を高める魔法だったり、移動速度や防御力を高める魔法などを使いサポートすることも出来る。ここまでが俺の浅はかな知識で知る範囲だった。
『お主のその考えで間違えではないな。ただそのレベルというのが何かは分からぬが、それは恐らく関係ないだろう。』
俺はとんでもない事を知ってしまった。正直異世界に来たからには強い勇者的なものとか、賢者とか、聖騎士とか色々俺TUEEEE!的な、最強なものをイメージしていたのだが、なんて言うか、すこし地味?みたいな…
というか思考読みとらないで!変態!!!
俺がそう考えるとまた狼さんは読み取りやがりました。
『す、すまない…本来は思念で会話出来るものだからなテイマーとは…だから、意外と便利なものなのだ。』
狼さんはそういうと振っていたしっぽを地面へと付けてしまった。
落ち込んでいますね。そして、尻尾を下げると同時に見えました。凛花がしっぽに捕まって遊んでいたのを。
いつのまに…
『お主がテイマーがどういった職業なのかを考えてる時からだ』
また読んで…!!もういい…これにも慣れないとだよな…テイマーってものになったからには…
「そういや、なんで俺と狼さんは主従関係でも無いのに会話できるんだ?それと俺以外の人間に話せるようにはならないのか?」
俺が思っていたことを思念とやらで会話になる前に口に出した。
蚊帳の外の凛花が少し可哀想に思えたからだ。あからさまにしっぽが落ち着いてしまい、遊び道具が無くなって落ち込んでるのが見えたし…
『あまり詳しくは分からぬが、テイマーは潜在能力で我々のような種族が違うものたちと話す力があるのだろうな。そして、テイマー以外の人と話すにはそのテイマーと主従関係になり、主がテイムした魔物にそう命令すると会話をすることが出来る。』
なるほど、ということは凛花もいずれは喋れるようになるのか。それなら安心だ。凛花も色々聞きたいこととかもあるだろうし。
『もしや、お主。我をテイムしようと言うのか?』
うん。折角テイマーになったんだしな、狼さん見た感じかなり強そうだし…
『この我をテイム…?』
なぜか狼さんは震えています。
他の狼たちも俺らのやり取りが聞こえているからか、ワナワナ震えて、くぅんと泣いています。
テイムになんでそんなに怯えるんだ?
『我も話しでしか聞いた事がないのだが…我の何代も前の頃から伝えられている話があってな…』
何百年も昔に存在していたテイマーとその狼さんの先祖の話を。
昔世界は平和に満ちていた。魔物も基本的に暴れ回ることはなく、人間もまたその魔物たちに手を出すことはなかった。だが、そんな平和な世界に強欲なテイマーが現れた。
テイマーの能力は強制的にあらゆる生命を従えることができる。故に拒否権などなく、たった一言。"テイム"そう言うだけでテイムできてしまうのだ。
その為、平穏に暮らしていた我々の先祖は強制的にそのテイマーに従うこととなった。
そして強欲なテイマーは、その圧倒的な力を使い、あらゆる魔物達を従え、国を落とそうと攻め入った。
我々の感情など気にもとめず、テイマーはひたすらに命令を下し、我々魔物に人を殺すことを命じたのだ。
もちろん、人間も抵抗をしてきた。魔物と人間の戦争となったのだ。どんなに我々が声を出そうともテイマー意外の種族には届かない。
そして、一夜にしてその国は滅んでしまった。そのテイマーによって。
『これが我々が幼き頃に聞かされた話だ…。』
なるほど…もしそれが本当にあった話ならあまりにも酷すぎる。
「そんな恐ろしい存在ならなんで、俺がテイマーってわかった瞬間に攻撃して来なかった?狼さん達なら余裕で俺を殺せただろ?」
正直質問しててなんてことを言ってるんだと思う。でもあまりにも残酷な話なので聞かざるを得なかった。
『お主からは、悪意というものが感じ取れないからだ。むしろ、暖かいものを感じる。後ろの娘にもな。』
なるほど、だから話をしてくれたわけか。狂暴にみえても、やっぱり見た目じゃわからないもんだね、話せてよかった。
「凛花もそれを聞いたらかなり喜ぶよ。ありがとう。」
凛花は未だに遠くの方で落ち込んでる。
なぁ、狼さん
『なんだ?』
狼さんには俺がどう見える?もし、そいつのような悪に見えないなら、力を貸してほしい。仲間になってくれないか?
思念と思考の感覚が自然とわかり、ハッキリと思考と思念が分けられるようになっていた。
狼さんは少し驚いたように
『な、仲間といったか?お主はテイマーであり、我ら魔物を従える存在。言わば主になるのだぞ?』
主か…そんな器でもないしな…俺は仲間として着いてきてもらいたい。まぁもし戦いってなったら力借りる事になるけど。
『強力な力を持っているのに変わっておるな。お主は…』
そういうなり、少し時間をくれないかと言っては俺と凛花から仲間を連れて離れてってしまった。
「おい!俺をほったらかして何してたんだ!詳しく聞かせろ!!!」
空気を読んで離れてくれてたんだなと思いつつ、全てのことを話した。
「んで、その狼さんたちは何話しに行ったんだ?」
「分からない。なんの話ししているのかはさっぱり。」
まぁたしかに人間の俺らには分かるわけないか。というなり仰向けになる凛花。
しばらくして狼さんたちは戻ってきました。
「話はどうなっ『お主の仲間になろう。そして、お主の剣となり盾となり、生涯を共にする事を誓おう。』お、おう…?」
そういうなり、狼さんは伏せの構えになった。
『我に向かい手をかざし、我の種族名を口にし、最後にテイムと言うのだ。それで我はお主と主従関係になる。』
わかった。狼さんの種族名は?
『ダークウルフだ』
いかにもな感じ。毛並みほんとに漆黒な感じだし。何よりカッコイイ。
と言うより、ダークウルフさん1匹だけでいいの?他の群れの方々は?
俺の疑問に狼さん、もといダークウルフさんは答えました。
『我々は離れていても意思で繋がっている。我が呼べば彼らは影からすぐに現れてくれる。故にリーダーである我が仲間になればその我の仲間もお主の仲間になる。』
それは心強いな。分かった。えーっと…名前…ってなんだ?
『名前…か?そのようなものは我々魔物にはない。』
ない?ダークウルフって長いし呼びずらいよな…折角の仲間だしな…よし、名前が無いならが付ける!
『よいのか?!我に名前をくれるのか?』
「当たり前だ。仲間の証だ!」
「ダークウルフさんの名前は… 【黒助】!!!」
その瞬間、黒助は突然光出した。
『何だこの光は!?』
「ほああああ!?何した凜人!!!?」
いや、俺も何が起きたのか分からない!!!何だこの光!!!
『不思議と暖かい感じがするな、まさかこれがテイムなのか?』
目の前に不思議な文字が見えた。
【テイム済み 】
種族 ダークウルフ 【黒助】
「これは…どうやら今の方法でもテイムできているみたいだ。なんで別の方法で出来たかは分からないけど宜しくな!黒助!!!それと、これから、俺の仲間と呼べる者達には声を聞こえるようにしてくれ。これが初めてのお願いだ。」
「あぁ、わかった。主よ。」
「俺は凜人。んでこっちは姉の凛花だ。俺たちは双子の姉弟なんだ。名前で呼んでくれ。改めてよろしく!」
凛花も声の正体に気づいたらしく黒助の方に向き直って挨拶をした。
さっき説明をしたからか、黒助のテイムが成功したということを理解したみいだった。
俺と、凛花と黒助は、黒助の仲間たちを見送ったあと、この後の行先について話し合っていた。
黒助にはまだ話していなかったことを話した。
この世界とは違う世界から来たこと、突然送り込まれて、この世界の知識が全くないこと。俺はなんの職業なのか分かったが、凛花はいまだ分かる術がないこと。そして、衣食住が整っていないこと。
一通り話すと黒助は一つ一つ解決策を提案してくれた。
「ほう、こことは違う世界…そんな場所があるのだな…それならばまず初めにこの近くの王都に向かうのがいいだろう。そこに行けば色々な本を見ることもでき、尚且つギルドに行けば適職が何かを調べてもらうことが出来る。それに宿もあるだろう」
「はぁん?近くに王国があったのか。まぁ来てそうそうこんなでかい黒助達に出くわしたもんなぁ、調べることも出来ねえや!」
凛花は俺が名付けた名に一切文句などなく、すぐに適応してくれていた。
「確かに来てそうそう頭の整理もできないままだったしね、ひとまずその近くの王国に向かおっか。黒助、案内してもらえる?」
黒助は分かったといっては、休ませていた身体を起こし俺たちを器用に背中へ乗せてくれた。
そして、今まで体験したどんな乗り物よりも早い速度で平原を駆け抜けるのであった。