【初陣】2
子どもたちが帰還したとの報せを受け、ドワーフの族長ゾルは教会に急いでいた。骨や牙を結い合わせて作った額の首飾りがチャリチャリと音を立てる。慌てて扉を開けるやいなや、巨大な緑の塊が頭上から襲い掛かってきた。
きつく抱きしめられたゾルは、自分を絶対に放さんとする決意と、そこから広がる震えと、自分の頭頂部にポトリと落ちてきた雫の暖かさを感じていた。
今度はゾルが優しく抱き返す。
「おかえり、バザラナ。おかえり、ミム。おかえり、ガーリィー。おかえり、レオン」
自分を締め付ける緑色の腕が更に強張った。
「なぁ、父さん、聞いてくれよ。あいつらさぁ……あい、っづらさぁ、とても……とてもさぁ……勇敢だった! 勇敢だったんだよぉ! あだし、なんかよりさぁ……すごく、ずっと強くてさぁ。……何でさぁ。なのに、何でさぁ……」
ミムが担いでいた麻袋をずいっと父の顔の傍に差し出した。その腕は震えていた。
袋の重さのせいではなかった。袋の重みのせいであった。
「これ、みんな……」
両手で確かに受け取る。チャリっと音がする。
重い。
ガーリィーとレオンは何も言わなかった。
唯々、震えていた。
唯々、怒っていた。恨んでいた。呪っていた。
なぜ僕の腕はこんなにも細いのかと。
なぜ俺の体はこんなにも小さいのかと。
なぜ牙が生えていないのかと。
「……おいで」
ギュっと、強く抱きしめた。
ノルス傭兵団では必ず、初陣で生き残った者に仲間の遺体の処理が課せられた。それは、幼少の頃から共に暮らしてきた友であり、兄姉であり、父や母であった。彼らはそこで、自分の命が仲間たちの命によって守られてきたということを理解した。彼らはそこで、自分の命を仲間たちの命のために使うことを決意した。
一本の大樹の下で、真っ赤な四匹の狼が産声を上げていた。