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~前夜~ 「紡ぎ手」
これは、誰かのために綴られた物語である。
むかし、むかしあるところに、一人の青年がいました。この青年には大きな特徴はない、誰かよりも誇れるなにかもない。どこにでもいる平平凡凡な青年である。されど、他の誰よりも誇れるものがあるとすれば、人を愛する想いの強さだろう。そしてこの青年はある女性に恋をしていた、この女性は美しく聡明である。
しかし
この女性には青年の手が届くけれども、言葉は届かぬ、されど青年はあきらめずに語る。
これはそんな青年が人生を掛け紡ぎ続けた物語である。
「聞いてくれているかい?」