「純ファンタジー」というジャンルが欲しい
皆さんは、どんな物語を読んで育ちましたか?
僕の親は、ゲームの代わりに本をたくさん買ってくれるような人だったので、小さい頃は本ばかり読んでいた記憶があります。家のスペースが無くなって、多くの本を泣く泣く手放すことになりましたが、それでも本に関する思い出は心の中に残っています。
初めて出会ったファンタジーは、ミヒャエル・エンデの作品でした。小学校に入って最初の誕生日に、「モモ」をプレゼントされました。確か、二日ほどかけて読み切ったでしょうか。読了後の静かな興奮は、今でもはっきり思い出すことができます。
それから学校の図書館で「はてしない物語」を読み、完璧にファンタジーの面白さにハマった僕は、色々なものに手を伸ばし、様々な物語と出会いました。指輪物語、二分間の冒険、南総里見八犬伝、その他諸々。
中でも一番影響を受けたのは、やはりハリーポッターでしょう。日常の中にある魔法の世界。十一歳の誕生日には、フクロウがホグワーツの入学許可書を運んでこないかとベランダで待ったものです。
その後ミステリーや時代物、日常物や恋愛物も読むようになりましたが、やはり一番はファンタジーです。
つまり、文学という世界において、剣と魔法という所に最も影響を強く受けた訳です。子供の頃に書いた処女作も当然、幻想世界のお話でした。
さて、そんな僕もすくすくと成長し、高校生になって初めてスマホを手にしました。そして、新しい世界に足を踏み入れたのです。
それこそが「小説家になろう」の世界──"ライトノベル"の世界です。
非常に多くの人を敵に回しそうな発言ですが、それまで僕の中のライトノベルとは「かわいい女の子がたくさん出てくるオタクの小説」という、とんでもない偏見で塗り固められていました。なんとも恥ずかしいことです。
それを覆してくれたのは、言わずと知れた「転生したらスライムだった件」。累計一千万部突破、絶賛アニメ放送中の、今乗りに乗っている作品です。
この作品で、僕は初めてファンタジーの世界に"スキル"などが登場する時代なのだと知りました。RPGゲーム等もほとんどやらずに育ったもので(ポケモンはルビーサファイアぐらいはやりましたけど)、魔法が存在する世界に別枠で現れるスキルの概念に慣れるのは少し時間がかかりましたが、何の問題も無く楽しめるようになりました。
一度足を踏み入れれば、「なろう」という世界は僕にとって理想郷でした。
なにしろ、膨大な数の幻想世界に飛び込むことが出来るのですから。しかも無料で。
何かと問題にされがちなネット時代ですが、その時代に生まれたことに感謝の念すら湧きます。
しかし、最近何か物足りなさを感じるようになりました。基本僕はランキングから小説を探し出すのですが、「どこか違う」という思いが首をもたげてきて、満足出来なくなるのです。
では一体、僕はどんな物語を求めているのか?
それはやはり、僕という人間を形成したとも言える、幼い頃に読んだ物語のような──混じり気の無い、剣、魔法、友情、愛、冒険が溢れる、『純ファンタジー』なのでしょう。
ライトノベルを批判する気はありません。ライトノベルにおいて書かれる世界が偽物だと、純粋でないと言うつもりも全くありません。
ただ、僕が読んできた物語が僕の基礎になっていて、スキルや、ゲームマスターなどの要素を"異物"と判断してしまっているだけのことです。万人に当てはまることではなく、僕がそういう人間だ、というだけなのです。
しかし、そもそも「小説家になろう」で求められるお話は、高校生以上の、大人のためのファンタジーです。僕が呼ぶ『純ファンタジー』とは、結局大半は児童文学であり、この市場のニーズに合っていない訳ですよね。
だから、僕がなろうに純ファンタジーを求めるのはお門違いだと言うのもよく分かります。
ですが、なろうには「純文学」や「童話」といったジャンルもあるではないですか。零細ジャンルと言われてはいますが、楽しんでおられる方も一定数いらっしゃるでしょう。かく言う僕も、その一人です。
ならば、なろうに「ハイファンタジー」「ローファンタジー」とは少し違う、「純ファンタジー」というジャンルがあってもいいのではないでしょうか。
先程も言いましたが、なろうには夜しか時間が取れない僕は、ランキングから面白い小説を探しています。しかし、ランキングに乗るのは純ファンタジーとは少し違う、スキルなどが主流の、大人のためのファンタジー作品ばかりです。
一般的には児童文学と大別されるような、でも大人になっても心を震わせるハリーポッターのような世界観の物語が溢れるランキングが、僕は欲しいです。
児童文学というのは「児童を対象とした文学」ではなく、「全年齢を対象とした文学」ではないかと、最近思います。ハリーポッターや、指輪物語、ちょっとズレますが仮面ライダーだって、僕ら大人は夢中になって楽しんでいます。「星の王子さま」は、本当にそのいい例でしょう。
「児童文学なんて、そんな子どもっぽいものはいらない」なんて、そんなことは言わず。
ここは「小説家になろう」、児童文学作家が純ファンタジーを多くの人に見てもらえるチャンスを提供してもらってもいいではないですか。なにより僕が読みたいですし。
なろうに、子どもの頃夢中になった純ファンタジーが溢れる日が来てほしい、それが僕のささやかながら切なる願いです。
追記
予想以上の反響をいただいており、びっくりするやら嬉しいやら。読んでいただき、評価してくださった方に感謝です。
感想欄にてたくさんのご意見を頂きました。
とても勉強になったのは、僕の中でも純ファンタジーの定義というものが曖昧だったことです。何となく、ゲームの要素が出てきたり、能力が数値化されるものは純ファンタジーとは違うのではないか、そんな程度のふわっとした意識でした。
あともう一つは、ちゃんと主人公が苦悩して成長するところに魅力を感じます。チート能力で問題をサクッと解決、これもストレスが無くて楽しいには楽しいのですが、主人公にはぜひともめいっぱい苦しんでもらいたいものです。
それが僕の呼ぶ『純ファンタジー』というものの要素でしょうか。こればっかりは人それぞれなので、『ゲームファンタジー』を先に分けた方がいいという意見にはとても納得です。
感想も増えてきたので、そろそろ感想返しを止めようかと思いますが、引き続きたくさんのご意見を頂けると嬉しいです。
追追記
感想欄にて、筍山子に「ゲームファンタジー」と「純ファンタジー」のタグ付けを提案していただきました。僕も大賛成です!
皆さんの自信の純ファンタジーにはぜひタグを付けてください。
僕の趣味の誤字報告つきで読みに行きます笑