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第八十八話 合衆国西海岸進攻作戦 その17

 はい、前回の続きを話します。


 ニミッツ提督は、「できるなら日本本土に対して潜水艦による通商破壊戦を仕掛けたかった」と司令部スタッフに漏らしています。


 しかし、通商破壊戦をするには潜水艦の数は足りず。


 必要な潜水艦を建造し、その乗組員を養成するには数年はかかります。


 日本海軍の連合艦隊主力が合衆国西海岸に接近している状況では、そのような長期的な作戦は実行不可能でした。


 そして、当時、太平洋に展開していた合衆国潜水艦の数では「偵察・哨戒」に専念させるのが現実的でした。


 もちろん、現場の潜水艦乗りたちからは反発がありました。


 彼らが厳しい訓練を積み重ねてきたのは、日本海軍の戦艦や空母に目掛けて魚雷を発射するのを目標としてきたからです。


 潜水艦乗組員は、戦艦・空母乗組員にくらべると「格下」に見られることも多く、だからこそ潜水艦乗組員同士は団結心が強く、「身内」と思っていたニミッツ提督からの命令は、「裏切り」に思えました。


 潜水艦の艦長の一人は、ニミッツ提督に「あんたはモンタナホテルに住むようになって、毎日焼き立てのパンと新鮮な野菜を食べられる贅沢に慣れて、乾パンと缶詰めしか食えない潜水艦乗組員の気持ちを忘れたのか!?」と面と向かって罵りました。


 それに対してニミッツ提督は穏やかに答えました。


「我が合衆国海軍潜水艦乗組員たちは、敵艦を発見するための目と耳を鍛え、敵艦に突き立てるための牙を磨いてきた。日本艦隊の正確な動きを知るためには、君たちの鍛え上げた目と耳が必要だ。そのために牙を今は封印してくれ」


 ニミッツ提督は、潜水艦乗組員たちを納得させることに成功しました。


 太平洋上に散らばる合衆国潜水艦部隊により、日本海軍連合艦隊主力の現在地は断続的に合衆国海軍太平洋艦隊司令部に届きました。


 太平洋艦隊司令部の立てた作戦には、連合艦隊の現在地を知ることは重要でした。


 空母の数で四隻対八隻と劣勢なため、陸上の基地航空隊と連携して航空攻撃による先制攻撃をする計画だったのです。


 ニミッツ提督は、海軍作戦本部を通じて陸軍航空隊にも協力を求めましたが、陸軍の返事は「南部連合国との戦いに精一杯で西海岸に航空隊を派遣する余裕無し」というものでした。


 ニミッツ提督は「こんな時に、いつもの縄張り争いか!」と苦々しく思いましたが、近年公開された資料によると、陸軍航空隊は南部連合国との戦いで多大な損害を出しており、本当に西海岸への派遣は不可能だったと判明しています。


 陸軍は正確な損害を海軍に隠していました。


 逆に、海軍も陸軍に正確な損害を伝えてはいなかったので、陸軍の方は海軍は自分達より航空隊は余裕があると判断していました。


 合衆国陸海軍の縄張り争いは、本土である西海岸防衛に支障を起こしていました。


 この続きは、次回に話します。

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