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第八十七話 合衆国西海岸進攻作戦 その16

 はい、前回の続きを話します。


 サンディエゴの太平洋艦隊司令部に、ニミッツ提督が新たな太平洋艦隊司令長官として着任した時、現地の海軍士官たちは戦々恐々していました。


 ハワイ失陥の責任を取り、前任のキンメル提督はすでに更迭され、海軍の人事を司る航海局長だったニミッツ提督が後任になったので、太平洋艦隊の人事に大鉈を振るうと思われたのです。


 司令部スタッフの総入れ替え、戦隊司令官の更迭の可能性が高いと思われていました。


 しかし、ニミッツ提督はワシントンD.C.から伴った自分の副官だけを新たな人事とし、司令部スタッフは、ほとんどそのまま留任しました。


 水雷戦隊を指揮したスプルーアンス提督、空母機動部隊を指揮したハルゼー提督も留任しました。


 特に、空母二隻を喪失したハルゼー提督は本人も周りも更迭は免れないと考えていました。


 しかし、ニミッツ提督は、ハルゼー提督に「君は現在合衆国海軍で空母での戦いに一番精通した提督だ。それを現場から外すようなことを私はしない」と直接伝えました。


 ハルゼー提督は感動し、ニミッツ提督の指揮下になったことの喜びを伝えました。


 そして、スプルーアンス提督に対しては、ニミッツ提督は当初は彼を太平洋艦隊司令部の新たな参謀長に任命したかったようです。


 しかし、そのことをスプルーアンス提督に内示した時、スプルーアンス提督自身から反対されました。


 その理由は「ハワイ失陥で前線にいた将官で私だけが地位が上がったことになります。それでは、他の司令部スタッフとの関係が悪くなる可能性があります。それは避けるべきです」というものでした。


 ニミッツ提督は、スプルーアンス提督の反対意見に納得して、「君がそうだからこそ参謀長になって欲しかったんだがな」と惜しみながらスプルーアンス提督を水雷戦隊司令官として留任させました。


 戦艦を主力とする砲戦部隊は、ニミッツ提督が直率することにし、戦艦「モンタナ」に将旗を掲げました。


 合衆国海軍士官の大艦巨砲主義者であれば羨む地位でしたが、潜水艦を重視するニミッツ提督としては単に通信能力が最も高い艦に司令部を置いただけでした。


 戦艦「モンタナ」からニミッツ提督が最初に電波で送信した命令は、太平洋に点在している潜水艦に対するものでした。


 それは「日本海軍への自衛以外での攻撃禁止」でした。


 ニミッツ提督は、潜水艦部隊を「偵察・哨戒」に専念させることにしたのです。


 続きは、次回に話します。

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