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第八十六話 合衆国西海岸進攻作戦 その15

 はい、前回の続きを話します。


 日本海軍を迎え撃つ、合衆国太平洋艦隊の主力は、戦艦十一隻、空母四隻でした。


 戦艦は「モンタナ」「コロラド」「メリーランド」「ウエストバージニア」「テネシー」「カルフォルニア」「ニューメキシコ」「ミシシッピ」「アイダホ」「ペンシルベニア」「アリゾナ」。


 空母は「サラトガ」「レキシントン」「エンタープライズ」「ヨークタウン」。


 太平洋艦隊司令長官は、ハワイ陥落により更迭されたキンメル提督の後任のチェスター・ウィリアム・ニミッツ提督でした。


 ニミッツ提督は、合衆国海軍提督としては変わった経歴でした。


 戦前、彼は対日戦において「潜水艦による通商破壊戦」を主張していました。


 島国である日本は、資源を海外から輸入しなければならず、そのための大量の商船が常に洋上で移動しています。


 その商船を潜水艦で攻撃すれば、日本は生存のための資源が得られず、降伏に追い込めるという考えです。


 しかし、通商破壊戦を主張する海軍士官は、合衆国海軍では少数派でした。


 最大派閥の大艦巨砲主義者は、戦艦同士の艦隊決戦により日本海軍を打ち負かすことを考えていました。


 航空主兵主義者は、使うのは空母と艦上機でしたが、やはり艦隊決戦を重視していました。


 手段の違いだけで、合衆国海軍の主流は「艦隊決戦思想」でした。


 その中で、通商破壊戦を主張したニミッツ提督は異端ですらありました。


 ニミッツ提督の主張は実現されませんでした。


 合衆国海軍は合衆国陸軍と常に激しい予算獲得競争をしています。


 直接国境を接している南部連合国を仮想敵国にしている陸軍に対して、太平洋で隔てられた日本を仮想敵国としている海軍は予算獲得競争で、どうしても不利になるのです。


 議員や有権者には、「南部連合国の脅威」は常識ですが、太平洋のかなたにある日本の脅威はあまり感じていない人も多いのです。


 素人に目にも分かりやすい巨大な戦艦や空母の建造については予算が認められやすいのです。


 仮に、合衆国海軍の予算内で、ニミッツ提督の潜水艦による通商破壊戦を実現しようとするならば、潜水艦の数を増やすために戦艦か空母を何隻か建造を取り止めにしなければならず。現実的に不可能でした。


 ニミッツ提督の主張は、認められませんでしたが、彼の能力は高く評価されており、開戦時には、海軍で人事を担当する海軍省航海局長を勤めていました。


 ニミッツ提督が太平洋艦隊司令長官になったのは、人物鑑定眼を評価されてのことでした。


 続きは、次回に話します。

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