第八十四話 合衆国西海岸進攻作戦 その13
はい、前回の続きを話します。
犯罪グループの若者たちは警察署を襲い、留置所の仲間を助け出し、気分が高揚していました。
歩兵分隊の隊長は、最初は武器を捨てるように警告しました。
それに対する犯罪グループの若者たちの返事は、発砲でした。
その内の一弾が、コマンダー・キューポラから半身を出していた戦車長に命中し、戦車長は即死しました。
即死した戦車長を見た機銃手はパニックに襲われました。
戦車長の仇討ちと言うより、恐怖から機銃を犯罪グループに向けて発砲しました。
乱射して、歩兵分隊隊長が機銃手を機銃から引き剥がして止めた時には、犯罪グループは全員が死亡していました。
この事件が、どのように処理されたのかは、当時の記録が残っています。
「日本軍により、パナマの犯罪組織を利用したスパイ工作が行われている可能性が大きい。犯罪組織への厳重な取り締まりが必要であると考える」
「対策の一つとして、民間人が犯罪組織のスパイを当局に通報すれば賞金を出すこととする」
戦争中、パナマでは組織犯罪は激減したそうです。
犯罪組織の拠点を見つければ、戦車で潰すのが通常でした。
パナマの住民の間では、気に入らない隣人を賞金目当てに当局「スパイ」として通報し、冤罪事件も頻発しました。
パナマに潜入していたはずの日本海軍特務陸戦隊については、「日本海軍特務陸戦隊は、パナマ駐留合衆国陸海軍とパナマ警察予備隊の反撃により、任務を中止し、撤退したと思われる」というのが公式見解でした。
もちろん、日本軍は、この時、一人の兵士もパナマには派遣していません。
日本海軍特務陸戦隊の悪評は鳴り響き、戦後長らくパナマにおける民間交流も困難でした。
一兵も使うことなく、意図的な情報漏洩により、パナマを大混乱に陥れたのは、軍事作戦としては大成功だったと言えるでしょう。
さて、本命の目標である合衆国西海岸進攻作戦について話します。
日本軍は、合衆国本土で領土を獲得する意志はありませんでした。
領土を得たとしても維持は困難だと判断していたからです。
日本本土はもちろん、ハワイからも兵站線は長大でした。
合衆国市民は全員が武装しているので、占領後の治安維持も難題でした。
日本海軍が目的としたのは、太平洋における制海権であり、そのための目標にしたのが合衆国カルフォルニア州サンディエゴの合衆国海軍基地でした。
サンディエゴ海軍基地を破壊し、無力化することを計画していました。
続きは、次回に話します。
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