第八十二話 合衆国西海岸進攻作戦 その11
はい、前回の続きを話します。
さて、前回の終わりに、戦車長は虚偽の報告をしました。
歩兵分隊の隊長は、訂正しようとしましたが、隊長が口を開くより先に「歩兵分隊長、弾を撃ち尽くしているだろう。私の戦車で護衛するから、いったん基地に帰ろう」と戦車長がウィンクしながら言いました。
歩兵分隊の隊長は戦車長の意図が分かりました。
自分達の失態をかばってくれているのです。
隊長は戦車長の好意に応じることにしました。
歩兵分隊と戦車は基地に無事に帰還しました。
なお、真相が明らかになったのは、数十年後、歩兵分隊の隊長が死の床で家族に告白した時でした。
真相を知らない当時、パナマ市街は大変な騒ぎになりました。
「日本軍の部隊がパナマ市街でパナマ警察予備隊と交戦、敵の規模は不明」
という知らせがパナマ駐留合衆国合同陸海軍司令部に届くと、警戒レベルを上げました。
合衆国にとって最重要施設はパナマ運河なので、パナマ運河の防衛を強化しました。
パナマ市街への対応は、パナマ警察予備隊に任せることにしました。
合衆国軍は「日本軍は潜水艦により少数の特殊部隊を潜入させた」と判断していたので、パナマ警察予備隊で対応可能だと考えていました。
灯火管制のため、灯りのない暗闇の中で、パナマ警察予備隊は、いもしない日本軍の特殊部隊を捜索しました。
一般市民には外出禁止令が出されていました。
パナマ警察予備隊は、一晩中、パナマ市街を捜索しましたが、当然、日本軍の特殊部隊は見つかりませんでした。
日が昇り、段々と明るくなっていきました。
捜索している部隊の疲れはピークに達していました。
パナマ警察予備隊司令部は、夜通し捜索していた部隊は基地に帰還させ、交代の部隊をパナマ市街に派遣することにしました。
この時に悲劇が起きました。
夜通し捜索していた部隊は市街地に広範囲にばらけており、有線電話と伝令で連絡をしていたため、「交代の部隊が派遣される」ことがうまく伝わらなかった部隊があったのです。
まだ完全に日が昇る前で薄暗く、夜通し捜索していた部隊が市街地に入ってくる交代の部隊に誤認により発砲してしまう事件が一部で起きたのでした。
お互いを「侵入した日本海軍の特殊部隊」と誤認したまま交戦してしまいました。
伝令と有線電話でパナマ警察予備隊司令部に、「日本海軍の特殊部隊を発見、現在交戦中」という報告が送られました。
パナマ警察予備隊司令部は、増援に戦車隊を送ることにしました。
それが、さらなる悲劇を引き起こしました。
続きは次回に話します。
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