第八十一話 合衆国西海岸進攻作戦 その10
はい、前回の続きを話します。
事件の経緯は次のようなものでした。
パナマ全土に戒厳令が発令され、民間人の夜間外出が禁止されました。
そして、事件が起きた夜、パナマ市街地をパナマ警察予備隊のM3戦車一両と歩兵分隊の部隊が市街地をパトロールしていました。
歩兵たちはゆっくりと歩き、M3戦車も歩く速度に合わせていました。
灯火管制のため市街地は真っ暗でした。
パナマ警察予備隊隊員たちは、「日本海軍特務陸戦隊がパナマに潜入した」という情報は知らされていましたが、日本海軍特務陸戦隊がどのような部隊であるかの情報は知らされませんでした。
日本海軍内部でも特務陸戦隊については詳細を知る者は一部だけの機密であり、合衆国陸海軍は当然知らず。パナマ警察予備隊には「日本海軍特務陸戦隊については詳細不明」との伝達だけでした。
当時のパナマ市民の日本人に対する認識は、合衆国映画の影響で「サムライ、ニンジャ、クノイチ」程度でした。
パナマ警察予備隊も同様でした。
「カタナやシュリケンを持った日本人たちが潜入している」
そういう認識になっていました。
日本人に関する知識がほとんどないことから、日本海軍特務陸戦隊は不気味な存在に彼らは感じていました。
歩兵の一人が突然無断で発砲しました。
隊長が問いただすと「サムライがいた!」と叫び、発砲を続けました。
他の歩兵たちもつられて発砲しました。
比較的冷静だった隊長は、暗闇の中に何も見当たらなかったので、射撃中止を何度も命令しましたが、興奮した歩兵たちの発砲はなかなか止まりませんでした。
歩兵たちの発砲が止まったのは、手持ちの弾丸がなくなったからでした。
何もないのに疑心暗鬼から発砲してしまった歩兵一人につられてしまったのに、他の歩兵たちもようやく気づきました。
歩兵たちが弾丸を撃ち尽くしてしまったので、隊長は基地に帰還することにしました。
幸い同行しているM3戦車は一発も発砲していませんでした。
戦車長が冷静だったからです。
隊長は基地に帰るまでに何かあっても戦車で対応できると安心していました。
帰還途中、他のパナマ警察予備隊の部隊が多数、彼らのところに集まって来ました。
発砲音を聞いて状況確認のために来たのでした。
隊長は正直な人物だったので「単なる誤射」だと答えようとしました。
しかし、隊長が口を開く前に、戦車長が「未確認部隊と交戦、未確認の部隊は逃亡。我々は基地への報告のために帰還中」と答えました。
続きは次回に話します。
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