第六十五話 中華民国 その9
はい、前回の続きを話します。
フィリピンに話を戻します。
フィリピン陸軍海上部隊に潜入した「日本海軍と合衆国国務省のダブルスパイ」である「S」は、フィリピン陸軍に深く浸透しました。
Sは国籍を中華民国からフィリピンに変えて、フィリピン陸軍に正式に入隊しました。
これは合衆国国務省からの指示でした。
正式にフィリピン陸軍に所属することで機密度の高い情報に接することができると考えたからでした。
Sから情報を買っている日本海軍は彼が合衆国国務省のスパイにもなっていることに気づいていませんでした。
Sが自分の意思で国籍を変えたと日本海軍は考えており、その方がフィリピン陸軍海上部隊の情報を手に入れるには好都合なので問題ないとしていました。
合衆国国務省はSに「日本海軍に売る情報を選別」するように指示しました。
Sの日本海軍からの「信用」を失わせないために「偽の情報」を売るようなことはさせませんでした。
重要に見えて、実はあまり価値のない情報を売ることをしました。
例えば、フィリピン陸軍上層部の「極秘」とスタンプされた機密情報の書類を高額で日本海軍に売ることが何度かありました。
日本海軍は極秘情報なので高額で買い取る価値があると判断し、Sに対する評価を上げました。
しかし、その「極秘情報」には裏がありました。
例えば、一ヶ月後には機密指定が解除されて陸軍士官なら誰でも閲覧可能になるような書類だったのです。
日本海軍はこのカラクリに長年気づかず、Sは日本海軍から受け取った莫大な報酬で、フィリピンの首都マニラに広大な屋敷を買いました。
フィリピン陸軍の軍人としての給料では買えないはずのない高額な不動産なので、普通なら周囲から疑惑を持たれるのですが、Sはそれをうまく処理していました。
Sの妻は合衆国国務省が送り込んだスパイでしたので、フィリピンの社交界では政府や軍の高官の妻たちと交際していました。
妻たちのお茶会で話される世間話の中には夫の仕事の話しも含まれます。
もちろん、夫は仕事の機密に関わる内容を妻には話さないようにしています。
しかし、妻たちの「夫は最近残業が多く帰りが遅い」「休日出勤が多い」などからは夫が関わっている仕事の進捗状況が推測できます。
Sの妻はそれらの情報から値上がりする証券を購入することで利益を得ていました。
マニラの屋敷は投資の利益で購入したことになっていました。
今で言うインサイダー取引ですが、当時は規制はなく、高官の妻たちも投資に誘って儲けさせていたので問題にはなりませんでした。
続きは次回に話します。
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