第六十話 中華民国 その4
はい、前回の続きを話します。
マッカーサーが最高顧問として育成したフィリピン軍には変わった特徴があります。
フィリピン軍は陸軍だけで海軍も空軍も無いのです。
もちろん、フィリピン軍に海上部隊や航空部隊はありますが、それらはすべて陸軍の所属になっています。
マッカーサーは合衆国での陸軍・海軍の対立にうんざりしており、フィリピンのすべての軍事力を陸軍で掌握しました。
フィリピン陸軍航空部隊は、合衆国陸軍航空隊出身者に指導させましたが、問題は海上部隊でした。
当たり前ですが、合衆国陸軍には海上部隊を指導できる人員はいません。
マッカーサーは合衆国海軍からの人員派遣は拒否しました。
合衆国海軍から指導を受ければ、フィリピン軍に合衆国海軍も影響力を持つことができるようになります。
すべてを独占しようとするマッカーサーにとっては、それは論外でした。
合衆国海軍に頼れないなら、他の国の海軍に頼るしかありません。
フィリピン近隣では、対立している日本海軍は論外でしたが、シンガポールを拠点にしているイギリス海軍にも頼りたくはありませんでした。
イギリスに「借り」をつくりたくはなかったのでした。
悩んだ末にマッカーサーが頼りにしたのは、「中華民国海軍」でした。
中華民国海軍を頼りにするとは、意外に思われるでしょう。
もともとマッカーサーは海上部隊は、海上警察か沿岸警備隊程度にしか考えておらず。大規模な海上部隊を設けるつもりはありませんでした。
中華民国海軍も近代的な海軍としての基本は一応できているので、小規模な海上部隊を指導するなら充分だと考えられたのです。
教官が中華民国海軍から招かれて、フィリピン陸軍海上部隊を指導することになりました。
この教官については変わった経歴があります。
日本海軍から指導を受けて教育されたことのある人物なのです。
日本と中華民国の関係が悪化する前に、日本海軍から派遣された人員により教育されています。
マッカーサーは彼の経歴は少し気にしましたが、海上部隊の教官から解任するようなことはしませんでした。
一部から彼は「日本海軍のスパイなのでは?」と疑われましたが、現在明らかになっている資料では彼は日本海軍のスパイなどではありません。
彼は「日本海軍と合衆国国務省の二重スパイ」だったのです。
もともと彼は金銭目的で中華民国海軍の情報を日本海軍に流していましたが、それに気づいた合衆国国務省が、マッカーサーの独立王国と化しているフィリピンに送るスパイに仕立てていたのでした。
続きは次回に話します。
感想・いいね・評価をお待ちしております。




