第五十八話 中華民国 その2
はい、前回の続きを話します。
中華民国政府は配下にある陸軍を地方軍閥への征伐に向けて、日本に対して宣戦布告をする様子もありませんでした。
当然、合衆国政府は中華民国首都南京にある大使館を通じて抗議に近い問い合わせをしました。
それに対しての中華民国政府の答えは次のようなものでした。
「地方軍閥は密かに日本から操られているものが多く、その征伐を優先している。日本の傀儡になっている地方軍閥をすべて征伐して、中華民国国内の安全を確保してから日本に宣戦を布告する」
結局、合衆国政府はこの主張を認めるしかありませんでした。
経済的に圧力をかけようにも日本との戦争になったので、太平洋を渡っての中華民国への物資提供は不可能になっていました。
軍事的に圧力をかけようにも中華民国近隣に合衆国の軍事力は皆無と言っていい状態でした。
フィリピンが合衆国の植民地のままだったら少しは話が違ったのですが、フィリピンはすでに独立国でした。
フィリピンが早期に独立したのは理由があります。
フィリピンに合衆国陸軍を退役したダグラス・マッカーサーが軍事顧問として赴任した時が変化の始まりでした。
マッカーサーは合衆国陸軍史上最年少で陸軍参謀総長に就任したエリート中のエリートでした。
マッカーサーは退役後は政界への進出を考えており、最終的な目標は合衆国大統領でした。
それに脅威を感じていたのは、マッカーサーに地位を脅かされるかもしれない一部政治家たちでした。
それに、マッカーサーは古巣である陸軍にも敵は多かったのでした。
マッカーサーは今で言うパワハラ上司だったので、旧部下たちに人間的に嫌われていたのです。
一部の政治家たちと旧部下たちは密かに手を組みマッカーサーの政界進出を阻止しようとしました。
裏から手を回して、フィリピン自治政府にフィリピン軍の軍事顧問としてマッカーサーを勧誘させました。
高額の報酬とフィリピン軍元帥の地位にひかれたマッカーサーはフィリピンへと向かいました。
フィリピンに到着した後、マッカーサーは自分が罠にはめられたのに気づきました。
首都ワシントンから長期間離れてしまったら政界進出は難しくなります。
しかし、いったん就任した以上はフィリピン軍の軍事顧問を簡単に辞めることもできません。
合衆国大統領への道を事実上断たれたマッカーサーは、新たな目標を設定しました。
それは、フィリピンの「王」となることでした。
続きは次回に話します。
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