第五十一話 南部連合国対合衆国その20
はい、前回の続きを話します。
引き続き、戦艦「ノースカロライナ」の乗組員の手記を引用します。
味方の駆逐艦一隻が雷撃を受けた時、我々は混乱した。
周囲に敵の水上艦は見当たらないことから敵の潜水艦による攻撃なのは明らかだったが、南部連合国海軍は航続距離の短い小型潜航艇しか保有しておらず。外洋までは出てこられないはずだったからだ。
日本海軍の潜水艦とドイツ海軍のUボートが北米大陸東海岸近くに進出しているという情報も無かった。
南部連合国海軍と日本海軍が協力して「ターゲット・タイプ・A」を運用をしている情報はつかんでいたが、「対潜攻撃訓練用の標的」という欺瞞情報を我々は信じていた。
どういう潜水艦と会敵したが分からず混乱したが、「敵の潜水艦から雷撃を受けた」のは明らかだったので、我々は対潜攻撃を始めた。
右舷側から雷撃を受けたので、右舷側に駆逐艦二隻を向かわせた。
すでに暗くなっていたので護衛空母の艦載機は使えなかった。
次は左舷側にいた駆逐艦が雷撃を受けた。
右舷にいた駆逐艦が雷撃を受けてからの経過した時間から考えて、潜水艦の水中速度では左舷側に移動するのは不可能だった。
敵は一隻ではなく「最低二隻の潜水艦」がいることが明らかになった。
敵潜水艦は二隻だけではなく、他にも複数の潜水艦が水中にひそんでいるかもしれない。
その推測を戦艦「ノースカロライナ」の司令部は指揮下にある駆逐艦部隊に通達した。
後から考えると、その通達は不味かった。
駆逐艦部隊は闇雲に爆雷を水中に投下し始めたのだ。
合衆国海軍は、太平洋艦隊は日本海軍との実戦経験があったが、大西洋艦隊は実戦経験がほとんど無かった。
ドイツ海軍との戦いはイギリス海軍を矢面に立たせて、合衆国海軍はほとんどドイツ海軍とは戦っていない。
戦力を温存するための判断だったが、この時はそれが裏目に出た。
実戦経験がほとんどない駆逐艦部隊は、「複数の潜水艦がひそんでいる」という推測に軽いパニックに陥ってしまったのだ。
闇雲に投下された爆雷により聴音機は役立たずになった。
この頃のレーダーは海面に突き出た潜望鏡を探知できるほどの性能は無く、肉眼での見張りも噂に聞く日本海軍の見張員ほどの夜間監視能力はなかった。
我々は見通しの効かない夜の海で自分で耳をふさいだような状況になってしまった。
そしてついに怖れていた事態が起きた。
旗艦である戦艦「ノースカロライナ」が雷撃を受けたのだった。
被雷したのは一発だけだったが「ノースカロライナ」の速力は大幅に低下してしまった。
続きは、次回に話します。
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