第五話 ドイツ対フランス その3
はい、皆さん、お集まりいただきありがとうございます。
お集まりいただけたのが百人以上になって嬉しいです。
さて、前回の続きですが、ドイツ軍によるフランスへの進攻作戦を語る前に、第二次世界大戦開戦数年前の話をさせていただぎます。
話が脇道にそれるようですが、これを話さないとドイツ軍のフランス進攻作戦について説明できないのです。
さて、第二次世界大戦前数年間のドイツの自動車会社は活況でした。
ドイツ国内での販売だけでなく、ヨーロッパ各国にもドイツ製の乗用車・バス・トラック・農業用トラクターが輸出されていて、比較的安く性能も良いドイツ製の自動車は各国の国民に歓迎されました。
特にドイツ語で「国民車」と名づけられた大衆向け乗用車は、元々の名前の意味は「ドイツ国民が一家に一台は持てる車」でしたが、「ヨーロッパ国民が一家に一台は持つ車」となり、ヨーロッパ各国で道を走っている乗用車のほとんどは、この車となりました。
もちろん、アメリカの自動車会社もヨーロッパに輸出攻勢をしましたが、ドイツは故障車の無料修理などの日本で言うところの「かゆいところに手が届く」アフターサービスでアメリカに優越しました。
フランスでは危機感から自国の自動車会社に政府が補助金を出すなどしましたが、ドイツ製の自動車に価格でも性能でも勝てませんでした。
フランス政府・軍の上層部は「ドイツ車に我が国が侵略されている」と危機感を持ちましたが、フランス国民のほとんどは格安で性能の良い車が購入できれば、それがドイツ製かどうかは気にしていませんでした。
さて、ドイツからフランスに自動車が輸出される時は、ほとんどは鉄道が使われましたが、沿岸部にある都市や町・村には船が使われました。
当時、船で運んだ自動車を港で降ろすには、船からクレーンで吊り下げなければなりませんでした。
この方法では積み降ろしの設備が整った港でしか自動車を降ろすことはできません。
それで、ドイツの自動車会社が造船会社と協力して建造したのが、「自動車運搬船」です。
自動車運搬船は船の船首部分が前倒しになる戸板のようになっており、船は直接砂浜などに乗り上げて自動車は自走して上陸するのです。
沿岸部にある町や村が購入した自動車を購入者に直接運ぶ時に使われ、コスト的には単体では赤字でしたが、宣伝も兼ねていて好評でした。
クリスマスの日に、フランスの漁村の砂浜に自動車運搬船で自動車を届けた時、船員たちがサンタクロースの仮装をして、子供向けのプレゼントやお菓子も無料サービスしたニュース映画の映像が残っています。
この「自動車運搬船」をドイツ軍は大規模にフランス進攻作戦では使ったのです。
あっ!時間になりました。
また、次回も皆さんにお会いできることを楽しみにしております。
ご感想・評価をお待ちしております。