第四十九話 南部連合国対合衆国 その18
はい、前回の続きを話します。
戦艦「ノースカロライナ」が南部連合国領土に接近していることに気づくと、南部連合国海軍は対地攻撃に出している航空隊を慌てて呼び戻そうとしました。
しかし、対地攻撃のために機体もパイロットも消耗していて、短時間で対艦攻撃に向けることは無理でした。
南部連合国海軍の沿岸防御用の水雷艇や潜水艇は、戦艦「ノースカロライナ」が艦砲射撃をしようとしていると予想される沿岸都市の付近には配備されておらず。航続距離が短いために再配備は不可能でした。
しかし、南部連合国海軍で偶然にも戦艦「ノースカロライナ」の予想針路の洋上に出ていた部隊がいました。
それは「ターゲット・タイプA」を運用する部隊で、日本海軍では「甲標的」と呼ばれている兵器でした。
日本海軍が開発した「甲標的」は乗員ニ名、魚雷二本を搭載した排水量四十六トンの小型特殊潜航艇です。
元々、日本海軍が「甲標的」を開発した理由は、艦隊決戦における補助兵器でした。
母艦で多数の甲標的を輸送し、敵艦隊の予想針路海域に潜伏させ、敵戦艦に向けて雷撃、戦艦対戦艦の決戦前に敵戦艦を少しでも漸減するのが目的でした。
しかし、日本海軍は試作を数隻しただけで開発を中止しました。
試作された甲標的は演習で雷撃はなかなか成功せず。
日本海軍自体が合衆国海軍との戦いでは待ち伏せての艦隊決戦よりもハワイへの進行作戦を志向するようになったので、甲標的のような兵器は必要ないと考えられたからです。
その話を聞いた南部連合国海軍は、日本海軍から開発を引き継ぎました。
さまざまな事情から洋上に展開できる大型戦闘艦を持たない南部連合国海軍にとって甲標的は魅力的に思えたのです。
日本海軍の甲標的開発チームが南部連合国海軍に派遣され、「ターゲット・タイプA」と名づけられました。
開発は秘匿され、ターゲット・タイプAは表向きは「対潜訓練用の標的」とされました。
合衆国海軍はこの欺瞞情報を信じていました。
さて、戦艦「ノースカロライナ」の予想針路に偶然いた南部連合国海軍の艦艇は商船改造の水上機母艦一隻でした。
水上機で敵艦隊を索敵、得られた情報によりターゲット・タイプAを海に展開する演習をする予定でした。
それがいきなりの実戦となりました。
しかし、ターゲット・タイプAの乗組員の士気は高かったのでした。
ターゲット・タイプAの乗組員は日本海軍から派遣された人員で、水上機母艦と水上機を運用するのは南部連合国海軍の人員でした。
これが日本海軍と南部連合国海軍の初の実戦での共同作戦となりました。
続きは次回に話します。
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