第四十八話 南部連合国対合衆国 その17
はい、前回の続きを話します。
南部連合国空軍は、合衆国陸軍が侵攻を開始した直後に応戦を開始しました。
南部連合空軍の保有するのはドイツ空軍の機体をライセンス生産した物でした。
メッサーシュミットBf109戦闘機、ユンカースJu87急降下爆撃機、ユンカースJu88爆撃機が戦場の空を飛びました。
ちなみに南部連合国空軍も海軍も機体は開発国の呼称をそのまま使用しており、海軍の零戦は「タイプ・ゼロ」と呼称しています。
空軍だけでは手が足りなくなり、海軍の零戦、九九艦爆、九七艦攻、一式陸攻も北米大陸の大地の空を飛びました。
海軍の一部では、合衆国海軍の沿岸部の都市への艦砲射撃に備えて、それに対するための機体を確保しておこうと主張がありました。
しかし、海軍の大部分は「合衆国が今の時点で艦砲射撃をしてくる可能性は低い」と考えていました。
合衆国海軍は日本海軍に備えて、合衆国西海岸にほとんどの稼働可能な戦艦、すべての正規空母を配備していました。
東海岸で稼働可能な戦艦は就役したばかりの「ノースカロライナ」一隻だけで、空母は商船改造の護衛空母だけでした。
この状況では、南部連合国海軍が貧弱でも危険を冒して沿岸部の都市への艦砲射撃は行なわないだろうと考えたのでした。
ある意味、この予想は当たっていて、合衆国海軍内部でも戦艦「ノースカロライナ」一隻、護衛空母一隻を主力とする作戦には反対意見が多かったのです。
反対派は「西海岸に配備した戦艦と正規空母を何隻か東海岸に回してから作戦を実施するべきだ」と主張しました。
軍事的には正しい判断でしたが、政治的な判断がそれを許しませんでした。
開戦してから合衆国海軍はハワイを喪失することになりましたが、合衆国陸軍は短期間で南部連合国首都リッチモンドを陥落しました。
合衆国一般市民の目から見ると、海軍が「大失敗」して陸軍が「大成功」しているようにしか見えません。
実際、合衆国国内で、そのように報道する新聞も多かったのです。
合衆国海軍は合衆国陸軍に対する競争意識もあり、早期に得点を挙げなければならないと考えたので、戦艦「ノースカロライナ」一隻、護衛空母一隻を主力とした南部連合国沿岸都市への艦砲射撃を強行しました。
南部連合国は諜報活動により、戦艦「ノースカロライナ」が出港している情報はつかんでいましたが、南部連合国海軍総司令部はそれを「訓練のための出港」だと判断しました。
洋上哨戒のための一式陸攻を数を減らして対地攻撃に回していたため、戦艦「ノースカロライナ」が南部連合国領土に近づいているのを発見するのはかなり遅れました。
続きは次回に話します。
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