第三十六話 南部連合国対合衆国 その5
はい、前回の続きを話します。
以前、話したように、合衆国陸軍航空隊では少数派である戦略爆撃主義者について話します。
合衆国陸軍航空隊は急降下爆撃機を重視する派閥が最大勢力でした。
大型爆撃機は双発爆撃機で充分とされ、四発爆撃機は計画のみで予算がつかず開発はされませんでした。
その双発爆撃機の開発予算も不足しているため、民間の旅客機や輸送機として開発された機体を改造して爆撃機として採用している有り様でした。
広大な北米大陸では民間航空の需要があり、当時世界で最も発達した航空路線網があり、多数の民間の大型機が飛んでいましたが、合衆国陸軍航空隊は純粋な軍用の大型機を持っていないという奇妙な状況でした。
戦略爆撃主義者が陸軍から独立した「空軍」の建軍を目論みましたが、それを陸軍の大多数を占める地上部隊に阻止されたため、陸軍航空隊では戦略爆撃主義者は完全に日陰者でした。
日陰者だからこそ戦略爆撃主義者は自らの地位向上のために活動していました。
戦略爆撃主義者は南部連合国との戦いで功績を上げての地位向上を目論んでいました。
そのために考えられた作戦は次のような物でした。
第二次世界大戦開戦前、合衆国と南部連合国との間では民間の交流や貿易は普通にされていました。
人と物資の輸送は主に鉄道と自動車で、航空機で合衆国と南部連合国の国境を越えることは制限されていました。
なぜなら、民間機に偽装されたスパイ機で国内を航空撮影されることを合衆国も南部連合国もお互いに危惧していたからです。
両国を行き来する航空機は一日数便で、表向きは「護衛」ということになっている戦闘機が随伴して「監視」しているという状態でした。
これを戦略爆撃主義者は利用しようとしました。
合衆国陸軍航空隊の双発爆撃機を民間機に偽装し、定期便として南部連合国に侵入、重要目標を爆撃することを計画したのでした。
一機しか爆撃機は侵入できないため、重要目標に選ばれたのは南部連合国首都リッチモンドにある大統領官邸でした。
南部連合国大統領の爆殺に成功すれば、南部連合国政府は混乱し、戦況を有利に進められると考えられたのでした。
まず、陸軍航空隊内部でされたこの提案は陸軍上層部に提出されることはなく、陸軍航空隊内部の段階で却下されました。
民間機に偽装することは後から政治的に問題になる可能性が高く、南部連合国首都リッチモンドは合衆国領土内からの急降下爆撃機の行動範囲内だったので、わざわざそのような作戦をする必要性は低いとされたのでした。
しかし、戦略爆撃主義者は諦めることはなく……
あっ!時間になりました!
続きは次回に話します。
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