第三十四話 南部連合国対合衆国 その3
はい、前回の続きを話します。
南部連合国陸軍の戦闘車両について話す前に合衆国陸軍について話さなければなりません。
なぜならば、軍備は仮想敵国に対抗するために整備されるものだからです。
合衆国陸軍は南部連合国の武力による再併合を最終目標としており、その軍備は「攻撃を優先した」ものでした。
装甲戦闘車両は、中戦車であるM4シャーマンを大量に配備しており、重戦車は「進攻作戦には鈍重でむしろ邪魔になる」と判断しており、合衆国陸軍では重戦車は開発も配備も進んでいませんでした。
それに対して南部連合国陸軍は、合衆国陸軍の進攻に対する本土防衛が最終目標であり、その軍備は「防衛を優先した」ものでした。
南部連合国ではドイツの三号戦車と四号戦車をライセンス生産していましたが、それらよりも優先して生産されていたのが「突撃砲」でした。
普通の戦車のように回転式砲塔ではなく、固定された戦闘室に砲を搭載したのが突撃砲です。
突撃砲は戦車より比較的大口径長砲身の砲を搭載可能でした。
突撃砲は戦車より製造コストが安いのも長所でした。
欠点は射界が狭いので車体ごと目標に砲を向けなければならないことでした。
しかし、南部連合国陸軍の「防衛」という目的には最適な戦闘車両だと考えられました。
南部連合国陸軍は自国の領土内で合衆国陸軍の進攻を迎え撃つことになります。
そのための「待ち伏せ」には、普通の戦車より車高が低いため発見されにくく、威力の高い砲を搭載する突撃砲が最適でした。
南部連合国はドイツの三号突撃砲と四号突撃砲をライセンス生産し、原産国のドイツでは突撃砲は歩兵支援用として開発されたので当初は短砲身砲を搭載していましたが、南部連合国では当初から長砲身砲を搭載していました。
ドイツでは突撃砲の管轄が機甲兵か砲兵かで揉めたりもしましたが、南部連合国では最初から機甲兵が管轄でした。
さて、南部連合国陸軍では、突撃砲を配備する際に、公式では「防衛戦車」と名づけましたが、この名称は将兵に「何だかカッコ悪い」と人気が無く、「こっちの方がカッコいい」とドイツ語の突撃砲が現場では使われ、新聞・雑誌の記事などでも突撃砲が使われ、一般市民にも「突撃砲」の名称が浸透したので、公式にも突撃砲と呼ぶようになりました。
この南部連合国陸軍の突撃砲大量配備の方針に対して、合衆国陸軍がした対応はM4シャーマン戦車の大量配備でした。
生産量に勝る合衆国は「数の力」で勝利を得ようとしていたのでした。
続きは次回に話します。
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