第三十二話 南部連合国対合衆国 その1
はい、今回は南部連合国対合衆国の戦いについて話す前に両国の政治的状況について話しましょう。
知ってのとおり「アメリカ南部連合国」は アメリカ南北戦争が引き分けに終わった結果誕生した国家です。
合衆国にとっては南部連合国は自国から分裂した国家であり、将来的に再併合をするのが当然と考えていました。
南部連合国にとっては自分たちは合衆国から「独立」した別の国家であると考えていました。
合衆国の主導で再併合されるのはもちろん拒否していますし、南部連合国主導で南北アメリカを統一しようとも考えてはいませんでした。
なぜなら、合衆国の方が人口が多いので、多数決の民主主義では合衆国の方に主導権を握られるからです。
南部連合国政府も陸軍上層部も合衆国陸軍から「先制攻撃」を受けることを一番に警戒しており、長大な国境線には常に兵力を張り付けていました。
一方で、合衆国側も南部連合国陸軍から「先制攻撃」を受けることを一番に警戒しており、やはり長大な国境線に兵力を張り付けていました。
第二次世界大戦開戦時、南部連合国が中立を宣言したことは合衆国政府にとっては朗報でした。
先に日本とドイツを打倒してしまえば、孤立した南部連合国を戦わずして再併合できるかもしれないからです。
しかし、ハワイが日本軍によって占領されたことで状況が変わりました。
合衆国は西海岸が日本軍により上陸されることにも備えなければならなくなったのです。
合衆国陸軍は南部連合国への「先制攻撃」を強く主張することになりました。
その主張の理由は次のような物でした。
南部連合国との国境に兵力を張り付けたままで、さらに西海岸に兵力を投入するのは負担が大きい。
それなら、いっそのこと先制攻撃をして南部連合国を武力併合してしまえば、西海岸へ兵力を集中できると考えたのです。
合衆国政府はこの陸軍の主張に当初反対でした。
合衆国と南部連合国との戦いだけを考えれば、国力の差から合衆国が最終的に勝利する確率は高いと考えていました。
しかし、南部連合国との戦いが短期間で終わらずに西海岸に日本軍が上陸した場合、合衆国は本土を舞台として二正面作戦を行うことになります。
合衆国政府はそれを怖れていました。
それに対して合衆国陸軍は反論しました。
日本軍が西海岸に上陸すると同時に南部連合国が中立を破棄すれば、いずれにしても二正面作戦をすることになるので、だからこそ、南部連合国に先制攻撃をして戦況を有利にすべきだと主張したのでした。
この議論はなかなか決着しませんでした。
続きは次回にお話しします。
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