第三十話 日本対合衆国 その15
はい、続きを話します。
日本海軍の重雷装艦「北上」「大井」が発射した魚雷は多数が合衆国戦艦部隊に向かいました。
多数の魚雷が爆発して水柱を上げる光景を見た重巡洋艦「愛宕」艦橋の南雲司令部では、雷撃成功を確信して歓声を上げる幕僚もいました。
しかし、水柱が収まった後、合衆国戦艦部隊のほとんどは無傷でした。
ほとんどの魚雷は敵艦に命中する前に爆発してしまったのです。
その原因は、魚雷の信管を鋭敏に設定したことによる早爆でした。
酸素魚雷の実戦使用は初めてだったことから起きたミスでした。
しかし、一本の魚雷だけが敵艦に命中してから爆発しました。
たった一本の魚雷でしたが戦局には重要な影響をあたえました。
命中したのは合衆国太平洋艦隊司令長官キンメル提督が座乗する戦艦「モンタナ」だったのでした。
もちろん、魚雷一本で「モンタナ」が沈むようなことはありませんでした。
それどころか、「モンタナ」の艦橋ではキンメル提督も幕僚も艦長も報告があるまで被雷したことに気づかなかったほどでした。
後に別の戦場でのことですが、「大和」も魚雷一本を被雷して、すぐに気づかなかったことがあったので巨艦ならではのエピソードと言えるでしょう。
話を戻しますと、「モンタナ」被雷の報告を受けたキンメル提督は「魚雷一本ぐらいならたいした損害ではないだろう」と考えました。
戦艦「モンタナ」は魚雷数本を同時に被雷したとしても沈まないように設計されており、実際に魚雷一本を被雷しても速力は落ちず。砲撃にも何の支障もありませんでした。
戦艦「モンタナ」は戦艦「大和」と互角の砲撃戦を繰り広げていましたが、だんだんと「モンタナ」の側が不利になっていきました。
その原因は、「モンタナ」への被雷でした。
被雷したのは一本だけで当初は浸水もわずかだったので、影響はほとんどありませんでしたが、被雷によって船体に開いた穴は思ったよりも大きく徐々に浸水量は増えていきました。
浸水により「モンタナ」が傾いたため砲撃に支障が出たため、「モンタナ」艦長は浸水したのとは反対側の区間に注水して水平にしました。
速力は低下しますが、それしか方法はありませんでした。
それにより、砲撃戦は「大和」が有利になっていきました。
それに介入したのがスプルーアンス戦隊でした。
雷撃を日本戦艦部隊に向けて敢行しようとしたのでした。
南雲戦隊はそれを阻止しようとしました。
南雲提督対スプルーアンス提督の第二ラウンドの開始でした。
続きは次回にお話します。
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