第二十七話 日本対合衆国 その12
はい、続きを始めます。
日本海軍もアメリカ海軍も単縦陣で同航戦となり砲撃を始めました。
日本海軍の戦艦は旗艦「大和」と「長門」「陸奥」「扶桑」「山城」「伊勢」「日向」「金剛」「比叡」「霧島」「榛名」の十一隻。
アメリカ海軍の戦艦は旗艦「モンタナ」と「コロラド」「メリーランド」「ウエストバージニア」「テネシー」「カルフォルニア」「ニューメキシコ」「ミシシッピ」「アイダホ」「ペンシルベニア」「アリゾナ」の同じく十一隻。
同数のため「大和」は「モンタナ」と放火を交え、「長門」は「コロラド」と放火を交え、「陸奥」は「メリーランド」と……いうように、一隻の戦艦が相手の一隻の戦艦と一対一でヘビー級ボクサーのように殴り会うことになったのです。
この「ハワイ沖海戦」と名づけられた海戦は何度も映画になっているので、観たことがある人も多いでしょう。
戦後初めて日本で製作された映画「ハワイ沖大海戦」では、撮影には実物の戦艦「大和」が使われました。
戦艦「モンタナ」はもちろん実物が撮影には使えなかったので、実物大のセットで撮影されました。
この映画の中では、戦艦「大和」と戦艦「モンタナ」は同時に発砲し、お互いに初弾で命中弾をあたえたというシーンがあります。
しかし、現実は大きく違いました。
戦艦「大和」も戦艦「モンタナ」もなかなか命中弾を得られなかったのでした。
どちらの戦艦も就役してから間がなく、乗組員の練度は低かったのです。
それについては、山本提督もキンメル提督もお互いに開き直っていたと言われています。
二人とも戦艦「大和」と戦艦「モンタナ」が相手の砲撃を引き付けている間に、他の戦艦が命中弾を得るのを期待していました。
日本側で最初に命中弾を得たのは「陸奥」でした。
戦前は、同型艦の「長門」と交代で連合艦隊旗艦を務め、「大和」就役以前では日本海軍の最強戦艦であり、それを実戦で証明した瞬間でした。
目標としていた「メリーランド」に一発が命中、残念ながら装甲によって弾き返されました。
ほぼ同時に「メリーランド」の砲撃も一発が「陸奥」に命中、これも装甲によって弾き返されました。
戦艦「メリーランド」は長門型戦艦と同じ四十センチ砲搭載戦艦であり、戦前からライバルとされていて、ライバル同士の最初の一撃は「引き分け」だったと言えるでしょう。
砲撃戦が進むにつれて、「大和」と「モンタナ」も互いに命中弾を出しました。
しかし、お互いに致命傷を与えることはできませんでした。
戦艦同士の砲撃戦は双方とも脱落艦はなく膠着状態でした。
上空では戦闘機が飛び交い、制空権はどちらのものでもありませんでした。
この膠着状態が変化したのは南雲提督とスプルーアンス提督の行動によるものでした。
続きは次回にお話します。
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