第二十三話 日本対合衆国 その8
はい、早速、前回の続きを話させていただきます。
日本帝国海軍連合艦隊司令長官山本五十六提督が率いる艦隊がハワイに接近していることを事前に通信傍受等で察知していた合衆国太平洋艦隊司令長官キンメル提督は、ハワイから遠く離れた海上で日本艦隊を迎撃することにしました。
ハワイに駐留する合衆国陸軍航空隊の攻撃圏外なので、キンメル提督のこの判断については現代でも様々な議論がされています。
「キンメル提督はハワイ近海で日本艦隊を迎え撃ち、合衆国陸軍航空隊の協力も得るべきであった。そうすれば航空兵力では日本側より有利になっただろう」
「ハワイ近海で迎え撃てば、日本の空母艦載機による空襲をハワイの地上施設が受けることになり、流れ弾が民間施設に当たることもあり得るから、キンメル提督はそれを避ける判断をしたのだ」
「万が一合衆国陸軍航空隊に日本海軍の戦艦を撃沈されてしまうと、功績が陸軍のものになってしまうので、それを避けるために陸軍航空隊の協力を拒否する判断をキンメル提督はしたのだろう」
「キンメル提督は典型的な大艦巨砲主義者であり、『航空機による戦艦撃沈は不可能』と考えていたから、陸軍に『戦艦撃沈』の功績を取られるとは考えてはいなかっただろう。ハワイ近海での迎撃を選択しなかったのは、やはりハワイの民間施設への被害を避けるためだったのであろう」
などが代表的な意見です。
戦後、キンメル提督は、この時の判断理由について語らなかったので真相は不明ですが、私は個人的には次のように考えています。
合衆国陸軍航空隊は南部連合国への爆撃を重視しているため、陸軍のパイロットはほとんとが地文航法の訓練しかしていませんでした。
さすがに、ハワイやフィリピンに配属されるパイロットは洋上航法の訓練をしていましたが、合衆国海軍から見ると不十分なものでした。
戦前は、合衆国陸軍と海軍の不仲により、ほとんど共同訓練ができず。
日本との戦争の可能性が高くなってから慌てて付け焼き刃に共同訓練をしましたが、結果は酷いものでした。
合衆国陸軍航空隊のパイロットたちは洋上における艦艇識別能力が低いことが分かったのです。
陸軍航空隊のパイロットは「駆逐艦」を「戦艦」と報告したり、「給油艦」を「空母」と報告するのが当たり前でした。
キンメル提督は陸軍航空隊の攻撃圏内で行動すると、下手をすると味方に誤爆されかねないと判断したのでしょう。
このことを戦後にキンメル提督が話さなかったのは、陸軍を表立って批判するのを避けたのでしょう。
さて、次回は日本と合衆国の空母機動部隊同士の対決をお話する予定です。
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